マンション管理会社選びと大規模修繕工事、あまり関係なさそうにも見えますが、大いに関係しています。二つに分類されます。工事部門をもっていて、自らが元請けで大規模修繕工事を請け負う会社と、管理会社に徹して自らは元請けをしないで大規模修繕工事のサポートのみを行う会社です。このブログでは、それぞれの会社と付き合う際にどうすれば、適正価格で大規模修繕工事が出来るかを詳しくまとめています。是非参考にしてください。

マンション管理会社に管理委託料は、10%下げるのはかなり大変です。設備点検の回数を削減する、設備遠隔監視をやめる、管理会社の事務管理業務を下げてもらう交渉をするなど実際にやってみればわかります。

一方で、大規模修繕費は、5-6社見積もりを取ればわかりますが、価格の高い会社とリーズナブルの会社で20%以上の差が出ます。

大規模修繕工事は、通常12年に1回と言われていますが、管理組合の理事や組合員の力だけで実施することは可能ですが、かなりの労力が必要になります。管理会社に大なり小なり手伝ってもらうことが効率よく進めるうえで必須になります。
管理会社のいいなりに進めると、高い費用を払うことになりますが、うまく管理会社を使えば、管理組合の労力最小で、コストを削減して、品質も高い大規模修繕工事が出来ます。

ポイントはただ一つ

マンション管理会社や設計コンサルタントが談合、バックマージンによって高い見積もりを出してくることをを防ぐ唯一の方法です。

管理会社が工事部門を持って、大規模修繕工事の元請けとなる会社なのか、工事の元請けはせずに、設計監理方式で外部の工事会社を使う方法で実施するのか?を確認する必要があります。

※管理会社に設計してもらい、もっとも費用対効果が高い大規模修繕工事の進め方について解説しています。

このブログでは、以下の流れでマンション管理会社とうまく付き合って、大規模修繕工事で損をしない進め方についてまとめます。


大規模修繕工事の元請けをする会社、元請けをしない会社のどちらの管理会社とお付き合いする場合も組合次第でリーズナブルで良い大規模修繕工事が可能になります。是非最後までご覧になって、大規模修繕工事を成功させるヒントにしてください。

管理委託料10%と大規模修繕工事20%どちらを節約すればお得?

冒頭でも書きましたが、管理委託料を10%削減するのは、かなり大変です。一方、大規模修繕工事は、5-6社見積もりを取ればわかりますが、20%の差異は普通に発生します。

30戸、専有部面積65m2のマンション、管理費12,000円、修繕積立金13,000円(200円/m2)のマンションを例に計算してみます。
管理費の50%を管理会社に支払う管理委託料として、6,000円、30戸で180,000円/月と仮定すると、年間の管理委託料は2,160,000円となります。
大規模修繕工事は、90万円/戸として、27,000,000円となります。12年周期だとして、年あたりで見ると、2,250,000円となります。

管理委託料が10%アップして、大規模修繕工事が20%ダウンした場合と、管理委託料が10%削減して、大規模修繕工事が20%アップした場合、の比較を行います。前者は、管理委託料2,376,000円、大規模修繕工事1,800,000円で、合計4,176,000円と、後者は、管理委託料1,944,000円、大規模修繕工事2,700,000円で、4,644,000円と、後者の方が年間当たり、約47万4千円の大きな支払いになります。
大規模修繕工事の20%の方が、インパクトが大きいことがわかります。

おおよそ12年に一度の大規模修繕工事をいかにうまく進めるかは、建物の維持のためにはもちろんですが、管理費・修繕積立金の観点からも、とても重要なのです。

マンション大規模修繕工事、管理会社の協力のもとでの流れ


図1. マンション管理会社のサポートによる大規模修繕工事の流れ

大規模修繕工事の大きな流れだけ説明すると以下のようになっています。

大規模修繕工事の実施の前年度に、建物劣化診断、住民アンケートを行って、工事範囲を決めます。
管理会社によって、建物劣化診断と工事仕様書・設計明細項目は有償になる場合も、無償で作成する場合もあります。
大規模修繕工事の実施の前々年度に管理会社にヒアリングを行って、有償なら見積もりしてもらって前年度の総会で予算を確保しておきます。アンケートについては、案の作成や、配布集計、通常の管理会社は無償でやってくれるはずです。

建物劣化診断調査の結果、例えば屋上防水の状態が良ければ、ウレタン塗膜防水をやめてトップコートのみを行うなど、コストダウンする案が考えられます。屋上防水は、足場がなくても出来るので、大規模修繕工事のタイミングで必ずしも防水工事をしなくても工事は出来ます。


住民アンケートの結果、サッシ・窓の動きが悪いようでしたら、全戸のサッシ・窓の戸車調整などを仕様に含めたりすることなどを仕様に入れることなとが考えられます。地震対策でドアの耐震化要望が多ければ、全戸を耐震丁番にするなども考えられます。

(鍵と内側の塗装を除く)ドア・窓・サッシは共用部なので、マンションの全戸一斉に行う工事であれば修繕積立金をつかうことは問題ありません。
逆に、希望する組合員が少ない場合は、個人負担として実施すべきです。そもなくば総会でもめることになります。
このように工事の範囲をどうするかについて、組合員の意見を聞きながら、管理会社ともよく協議して工事範囲を決めます。

工事範囲が決まったら、工事仕様書・設計明細項目を管理会社に作成してもらいます。工事仕様書とは、施工に使用する材料、工事方法、提出文書、項目別保証内容、保証期間、などをまとめたものです。設計明細項目は、内訳明細書と呼ばれたり工事内訳明細書と呼ばれたりするものです。

大規模修繕工事を進めるうえで、とても大事な工事仕様書・設計明細項目を準備する必要があります。普通の人はどんなものか想像しがたいです。以下のブログでどのようなものか説明しているので参考にしてください。

マンション大規模修繕工事、設計書作成とチェックポイント、その2

見積書の金額を抜いたものです。通常は、共通仮設、直接仮設、外壁下地補修、シーリング、外壁塗装、鉄部塗装、防水工事、その他などの大項目別に見積もりすべき小項目の数量と単位が入っているもので、エクセルで作られます。単価を入れることで見積書となります。

管理会社が元請けを実施する会社でも、実施しない会社でも、依頼すれば有償、または無償でつくってもらえます。管理会社によっては、外部の設計コンサルタントに工事仕様書・設計明細項目をつくってもらうことをすすめる会社もあるかもしれません。その場合は、紹介された外部の設計コンサルタントに依頼すれば良いです。

次に見積もりの工事会社選定基準を決めて、管理会社経由と、管理組合から直接の両方のルートで、大規模修繕工事会社に見積もりを取ります。
見積もり比較や、最終選考で候補の工事会社にヒアリング会を行って一社に絞り込みます。

いよいよマンション管理組合の通常総会(または臨時総会)で、決議するのですが、大規模修繕工事の発注額は、1戸当たりの負担が100万円前後となる工事ですので、金額が大きいこともあって、総会で組合員から反対されることがあります。

なお、国交省の標準管理規約がベースになっている通常のマンション管理規約の場合は、議決権行使書・委任状を含む総会出席者の組合員の過半数の議決で決議できます。マンションによって異なる場合もあるので、ご自身のマンションの管理規約をご覧ください。

管理組合の総会の場で、発注する工事会社、発注方式(責任施行方式か、設計監理方式など)、工事日程、工事範囲、費用、支払い条件、項目別保証期間、アフター点検、予備費などすべてを決議します。あいまいにしてはいけません。すべて決まっていることが大事です。

総会で賛成してもらうためには、住民アンケート結果まとめの共有や、工事範囲の決定の過程や、理事会での選考過程の見積もり比較表などの資料を理事会議事録や、別途広報資料として文書化して残して、組合員に配布して周知しておくことが大事です。また見積もり取得時には、工事会社を推薦したい組合員がいる場合は、その会社からも見積もりをとることなども重要です。さらに、あれこれ言いたい組合員には、理事長が訪問して、事前に説明をすることも効果的です。

総会で思わぬ反対意見や検討不足が指摘されて決議が出来ない雰囲気になったり、否決されると大規模修繕工事は遅れてしまいます。
大規模修繕工事は12年に1度程度行うものとなので、実施が半年遅れてもどうということはないですが、臨時総会を開かなくてはいけなくなるのと、何よりやり直しすることで、理事会のモチベーションが下がるのが問題です。

総会の承認が得られたら、契約書をつくって大規模修繕工事会社と契約、工事開始、数か月にわたる工事が終了して検収して無事に大規模修繕工事は終わります。工事が終わったら、1年後、2年後、5年後、10年後などのアフター点検が残るということになります。もし保証期間内で、トラブルがあれば、補償内容に基づいて大規模修繕工事会社に修理をさせます。アフター点検の頻度は項目別の工事保証期間と契約内容によります。

大規模修繕工事の契約書について、2020年4月民法改正を、民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款の改正を踏まえた注意点は以下のブログを参照ください。

2020年4月改正民法による大規模修繕工事の工事請負契約書への影響

以上がざっくりとした大規模修繕工事の流れです。

大規模修繕工事の元請けをする管理会社との付き合い方、談合、中抜き対策

図2.管理会社が元請けをする場合の大規模修繕工事の流れ

管理会社が元請けをしたい会社の場合は、建物劣化診断、工事仕様書・設計明細項目も積極的につくってくれます。場合によっては、無償で準備してくれます。
もし有償になる場合は、大規模修繕工事を実施する前々年度の総会で、建物劣化診断と工事仕様書・設計明細項目作成費を管理会社から見積もりを取って予算化しておきましょう。
管理会社が「複数の会社から見積もりをとるから、管理組合さんの手で見積もりを取る必要はない」という説明して拒む場合があります。しかし騙されてはいけません。管理会社が主導で、大規模修繕工事会社の各社と談合して、あたかも複数の工事会社に競争させて十分にコストダウンした見積もりのような説明をしてくるかもしれません。

管理会社が元請けをする会社の場合は、管理会社を工事会社に選ぶのと同じことです。詳しくはこちらを

大規模修繕工事、元請けをする管理会社、元請けしない管理会社、どちらが良いの?

工事仕様書・設計明細項目を提供しないという管理会社には、「有償でお金を支払うので開示してほしい。透明性を確保したいので管理会社以外の大規模修繕工事専門会社にも見積もり依頼をしたい」と言えば、管理会社は本来なら断れないはずです。
それでも拒否したり、あるいは、工事仕様書、設計明細項目の項目を粗くして、見積もりがとれないようなものを提出してくる会社がいたとしたら、そのような管理会社とは、お付き合いしない方が良いでしょう。管理会社を変更することを検討すべきです。

ここ10数年で、どの業界でも情報公開、透明性が担保されていることがその会社の評価の対象になってきています。管理組合が大規模修繕工事会社から見積もりが取れないような進め方をするのは、悪い意味での顧客囲い込みで、完全に時代遅れの発想です。

外部の大規模修繕工事の設計コンサルタントに相談して、有償で建物劣化診断、工事仕様書、設計明細項目をつくってもらうから、管理会社も、工事仕様書、設計明細項目に基づいて見積もりするように依頼したら、管理会社も折れるかもしれません。

工事仕様書・設計明細項目と言われてもどんなものかイメージできないという方は、こちらを参照ください。内容を深く理解する必要はありません。どんなことが書かれているものかを理解して、大規模修繕工事会社に見積もり依頼しましょう。素人でも絶対に出来ます。

マンション大規模修繕工事、設計書作成とチェックポイント、その2

管理会社と大規模修繕工事の進め方の交渉を大規模修繕工事実施年の前々年の総会で決めて、予算化しておく必要があるので、早めに管理会社と協議しましょう。

工事仕様書、設計明細項目を管理組合の側に確保して、最低2社、出来れば5社くらいに大規模修繕工事専門会社に工事仕様書、設計明細書で、見積もり依頼をすると良いでしょう。
見積もり依頼をかける前に、業者選定基準を決めて文書化しましょう。資本金、売上、従業員数、過去3年の元請け、下請け実績表の提出、責任施行方式での受注、事務所所在地、希望工事期間(通常総会で決議する予定なら予算期内で終わらせるのが理想)、工事期間中の現場代理人の常駐、最終選考に残った場合は、過去3年の財務資料の提出、などを条件として設定します。大規模修繕工事専門会社のホームページを見ると資本金や、売り上げ、従業員数、工事実績などが書かれていますので、検索すれば条件にあう業者を見つけることができます。このとき、ホームページで工事実績を写真付きで具体的に紹介している会社で、しかも、戸数や階数が自分のマンションと近いものがいくつかある会社を選ぶとミスマッチのない工事会社に出会えます。工事実績を紹介するためには、工事を発注した管理組合の許可が必要で、トラブルなく工事が終わったことを意味しています。また、専門誌や専門サイトによる公募などもありえますが、掲載までに時間がかかってしまうのでおすすめしません。この時代、ネット検索で十分条件にあう会社を見つけられます。直接連絡した方が時間短縮が出来ます。

マンション大規模修繕工事会社の工事会社の選定基準についてはこちらのブログに詳しくまとめています。

中小マンションの大規模修繕工事会社の業者選定条件について

見積もり依頼は、現地調査に来てもらうなど手間が発生します。談合をふせぐために1社ずつ別々に来てもらうことが理想ですが、日時をあわせてもらって合同で現地調査会を行ってもよいでしょう。管理会社が元請け候補の1社であると説明すると、管理会社に勝てない見積もりでは、話にならないわけで談合する意味があまりないわけです。

この時、「管理会社に発注することが決まっているわけではない。当て馬ではなく、良い提案であれば発注する」という管理組合の本気度を見せることです。さもなくば良い見積もりは出てきません。

仕様書・設計明細項目の範囲に加えてオプション提案してくれる場合は、管理会社の仕様より良い仕様となる場合もあるので、積極的にオプション提案してもらいましょう。また、質問があり答えられない場合は、仕様書・設計明細項目をつくった管理会社に確認して、回答すれば良いです。
よくあるのが仕様書が間違っていたり矛盾したりする場合です。仕様書・設計明細項目を修正した場合や各社の質疑とその回答は、見積依頼した各社に同じように連絡しましょう。1社が理解できなかった部分は、他社も理解できない可能性があるので、全社に通知した方が良いです。

いよいよ業者選定ですが、基本的なルールとして、管理会社が元請けをする工事会社候補の場合には管理組合が独自でとった見積書を管理会社に開示してはいけません。大規模修繕工事会社からとった見積もりと、管理会社からも提出された見積もりは、同じ工事仕様書、設計明細項目を元に作成されたものです。見積り範囲は同じになります。管理会社からの提案と、管理会社以外の工事会社の提案の比較表をつくりましょう。外部の見積依頼した会社からオプションの提案があった場合は、比較する対象から分けて比較できるように工夫しましょう。管理会社は、この場合は工事会社でもあるので、他の大規模修繕工事会社から見ると競合にあたるわけで、他の会社の見積もりを開示するのはルール違反です。

次に、理事会での協議によって業者の選定ですが管理会社は、大規模修繕工事は、数千万円の大きな売り上げになりますから管理会社は自分たちを採用するようプッシュしてきます。金額が安ければ、管理会社の見積もりは妥当なわけで、管理会社にお願いすることで良いでしょう。

もし、他の大規模修繕工事専門会社の見積もりのほうが大幅に安い場合は、迷わずその会社に依頼した方が良いです。
業者選定基準を満たした工事会社への見積もり依頼したので、発注しない理由はありません。工事仕様書には、工事項目別保証内容や、アフター点検頻度が記載されています。検収後にトラブルがあれば、保証内容に従って発注した会社に依頼すれば良いのです。管理会社に調査を依頼するのと、なんら変わることはありません。アフター点検もしかりで、管理会社に依頼するか、発注した工事会社に依頼するかの問題です。大規模修繕工事会社もさらに12年後も仕事を受注したいので、アフター点検も営業機会と考えて良い対応をしてくれます。

それでも、なんらかの形で管理会社に工事に関与してもらいたいと考える場合は、管理会社に、監理を受けてもらえるか依頼しましょう。
監理とは、工事仕様書、設計明細項目の通りに工事が実施されているかのチェック業務です。
監理業務は、工事仕様書に記載の材料をつかって、仕様書記載の工法で工事しているかの確認業務で、設計書(工事仕様書、設計明細項目)をつくった会社にしか引き受けません。しかし、管理会社が保証はしません。あるいは保証を求めると、高額な費用を要求される可能性があります。保証は工事会社に求めるので、管理会社に保証をもとめることに固執する必要はありません。

なお、工事金額が2000万円前後の規模の小さな工事の場合は、相対的に監理費が高くつきます。


せっかく苦労して、良い大規模修繕工事会社を見つけたのに、監理の費用が高くつくと、管理会社にお任せで工事を進めたほうが安くなることになったりします。工事が心配な場合は、理事や希望する組合員が工程をチェックする日を設定してもらい、工事をチェックさせてもうらう機会を取れば良いでしょう。現場代理人が親切に説明してくれます。素人ではわからないという不安があるかもしれませんが、工事会社にお任せではないという姿勢を工事会社に示せばそれだけでも十分に効果はあります。

中小マンションでは、大規模修繕工事の予算規模は小さいため、設計管理方式にすると高くつきます。マンション管理会社仕様書作成、大規模修繕工事専門会社への発注がもっともお得になります。マンション大規模修繕工事に関する実態調査のアンケート結果から、設計管理方式にかかる費用を算出してまとめています。詳しくは下記のブログを参照下さい。

中小マンションの大規模修繕工事 設計監理方式を採用すべきでない理由

工事会社をスパッと選考できない見積金額が拮抗している場合は、最終2社でヒアリング会を実施するのが良いでしょう。理事会だけでなく組合員も参加できる形でヒアリング会を実施するのが良いでしょう。効率良く価格交渉する方法として、最終選考で御社か、もう1社のどちらかに決めるから、出来る限り下げた見積もりを出すように依頼することは有効です。2社まで絞って依頼すれば、50%の確率で受注できることになるので、工事会社候補から、本気の本気の最終見積もりがもらえます。

ヒアリング会が終わった後に、組合員の意見徴収して、そのまま理事会を開催して、総会に上程する1社を絞り込んで決めてしまうのが良いです。

大規模修繕工事の元請けをする管理会社と、大規模修繕工事をする会社との進め方はこんなところです。

元請けをする管理会社への確認ポイント

  • 工事仕様書、設計明細項目を提供してもらえるかどうか?を、大規模修繕工事実施年の前々年の総会の前までに確認。設計明細項目についてはエクセルで提供してもらえるように確認しておきましょう。有償の場合は、大規模修繕工事の前々年の総会の議案で予算化しましょう。
  • 大規模修繕工事を管理会社以外に管理組合が発注する場合は、監理を受けてもらえるかを確認しましょう。大規模修繕工事会社の選考の過程で、管理会社以外の会社に発注する場合で、管理会社による監理を依頼が必要と判断したら、提案してもらって、大規模修繕工事の予算の一部として、総会で決議しましょう。

大規模修繕工事の元請けをしない管理会社との付き合い方、バックマージン対策

図3.管理会社が元請けをしない場合の大規模修繕工事の流れ

 

元請けをしない管理会社でも、大規模修繕工事の大きな流れは変わりません。
注意しないといけないのは、管理会社が工事をしないので利益は工事でとれませんので、通常は大規模修繕工事の業務で発生する工数はすべて有償になるということです。

1)建物劣化診断、2)工事仕様書・設計明細項目、3)業者見積もり作業・選定比較・アドバイス、4)工事監理業務について、大規模修繕工事実施の前々年の総会の前に管理会社に見積もり依頼しておくことです。
価格の相場としては、1)の建物劣化診断は50世帯以下のマンションであれば、40万円前後です。2)、3)、4)の業務については、いわゆる設計・監理方式の業務という事になりますが、大規模修繕工事総額の5%程度がひとつの目安となります。国交省が2017年度に実施した設計コンサルタントへのアンケートが参考になります。中小マンションの大規模修繕工事 設計監理方式を採用すべきでない理由を参照ください。

大規模修繕工事の元請けをしない管理会社の場合でも、見積もりをとる大規模修繕工事会社の候補を管理会社に伝えて、管理会社に依頼してはいけません。というのは、管理会社が主導権をとってしまって紹介した大規模修繕工事会社にバックマージンを載せた見積もりを出すように指示する可能性があるからです。管理会社が見積もりをとる工事会社名を聞いて、それ以外の会社に管理組合から直接見積もり依頼しましょう。

「良い提案をしてくれれば、発注する、管理会社の提案に対する当て馬ではない」ことをしっかり伝えることが大事です。

大規模修繕工事会社選考の過程で、管理組合が見積もりをした会社よりも高いにもかかわらず、管理会社が自社経由で見積もりをとった会社を推奨してくる場合は、バックマージンをもらっている可能性があります。管理会社が付き合いのない会社では、監理が出来ないとかごねてくる可能性もあります。

その場合は、管理組合が見積もりをした会社に責任施行方式(管理会社の監理はなしで行う)で依頼しましょう。
上述したとおり、大規模修繕工事の工程を何度か組合員がチェックする日を設定してもらい、工事を確認させてもうらう機会を取れば良いでしょう。

管理会社が、管理会社が工事を監理する安心感をアピールしてくるかもしれませんが、前項で説明した通り、工事項目別保証内容や、アフター点検は工事会社が行うので問題ありません。

なお、大規模修繕工事の元請けをする管理会社と比較して、元請けをしない会社の方が、1)、2)、3)、4)がすべて有償になるので、全体的には高くなる傾向です。2000万円前後以下の工事だと、大規模修繕工事の価格が高くなるかもしません。規模が大きな大規模修繕工事の場合は、設計・監理費の割合が小さくなるため、大きなコスト要因にはならないでしょう。

大規模修繕工事の元請けをしない管理会社のメリットとしては、管理会社に依頼できることが増えて、管理組合の作業負担を減らすことが出来る点です。
業者選定基準の作成や、管理組合がとった見積もりの比較表をつくる作業などを管理会社に依頼しても問題ありません。というのは管理会社が元請けをしないので、提案してくれた大規模修繕工事会社の競合ではなく、管理組合と同じ立場、サポートする立場だからです。もともと3)についても業務依頼していますので、作業は遠慮なくやってもらいましょう。

もう一つ元請けをしない会社のメリットは、不要な工事、過度な提案が少なくなる可能性が高いという事です。本来管理会社の立場は、管理組合の立場と同じでなければなりません。ところが、工事会社の立場では、売り上げ欲しさに少しでも多くの工事をさせたいと考える管理会社もあります。そのような管理会社のつくる工事仕様書・設計明細項目がオーバースペックになりやすいのです。

管理会社の基幹業務として、管理組合の会計を把握していますので、修繕積立金がいくら残っているかを知っています。管理会社が大規模修繕工事の提案をすると、この修繕積立金をすべて使うような提案をすることも可能なのです。つまりマンションの共有部の管理を委託されている管理組合の立場の管理会社と、大規模修繕工事を提案する立場の管理会社では、利益は相反するのです。
日本では、利益相反行為について緩い文化なので、本来は健全ではなくて、管理会社は本来は大規模修繕工事の元請けしてはいけないのです。

元請けをしない管理会社への確認ポイント

  • 1)建物劣化診断、2)工事仕様書・明細書、3)業者見積もり作業・選定比較・アドバイス、4)工事監理業務の費用になるか?大規模修繕工事の前々年の総会の前に確認して予算化しましょう。
  • 基本的な進め方として、管理組合が独自に見積もりを取り、先行した会社の監理を管理会社が引き受けてもらえるのか?についても、大規模修繕工事の前々年の総会の前に確認しておきましょう。

なお、大規模修繕工事の元請けすることも、元請けをせずに設計監理業務でも実施するという管理会社もあります。
管理戸数上位の会社では三菱地所コミュニティなどは、ホームページで、そのようにアピールしています。まずは、その場合はどちらがおすすめか管理会社にヒアリングしましょう。


そのような管理会社の場合は、大規模修繕工事の前々年の総会までに、1)建物劣化診断、2)工事仕様書・明細書、3)業者見積もり作業・選定比較・アドバイスの費用を見積もりをもらって総会決議して、前年に1)と2)を発注して、管理会社にも工事の見積もりを依頼するのが良いです。そのまま工事まで依頼する場合は、4)に費用は必要なくなります。外部の大規模修繕工事会社に発注する場合は、4)の見積もりをを依頼して、選考の過程で決めて必要であれば大規模修繕工事の予算に入れて総会決議すれば良いでしょう。

まとめ

  • マンション管理会社の大規模修繕工事に対する管理組合に対するサポートは、大別すると2種類あります。管理会社が工事部門を持っており、大規模修繕工事の元請けをする会社と、工事部門がなく元請けはせずに設計・監理のみを行う会社の2種類になります。
  • どちらの管理会社と付き合う際も、建物劣化診断と、工事仕様書・設計明細項目の作成を、管理会社に有償または無償で依頼します。工事仕様書・設計明細項目と業者選定基準を元に、管理会社以外の複数の会社からも見積もりをとって、管理会社の見積もりと比較して、業者選定を行うと良い提案が得られて、リーズナブルに工事が出来ます。
  • マンション管理委託費がリーズナブルだとしも、大規模修繕工事が割高になると長い目で見ると、管理組合は損をします。管理会社を選定する際は、大規模修繕工事の進め方のヒアリングを十分に行う必要があります。
  • 管理会社が、工事部門をもって元請けとなり大規模修繕工事を実施する会社の場合は、工事仕様書・設計明細項目を管理組合が見積もりを取れる形で公開してもらえるかを確認しましょう。
  • 公開しない会社は、透明性が低く悪い意味での顧客囲い込みをする時代遅れの会社です。たとえマンション管理委託費がもっとも安くてもお付き合いしない方が良いでしょう。

以上

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