管理会社の収益構造と日本ハウズイングの管理委託料値上げ問題について

マンション管理会社の収益構造は安定しています。大きな成長は望める業界ではありませんが、毎年の管理委託料が安定しており、修繕工事の元請けをする会社では、修繕工事の売り上げもあり、一定の売り上げがあるため安定しています。とくにシェアが上位の会社は、毎年純利益を残し、利益剰余金として、資本を積み増ししているのがわかります。マンション管理組合から管理委託料の支払いは、安定しているから当然と言えば当然で、わかりやすい話です。

今回のブログでは、一般社団法人マンション管理業協会で、各社が公表しているマンション管理部門の売り上げと組合数、管理戸数から各社の収益構造を、デベロッパー系2社と独立系2社を比較・分析します。
さらに、日本ハウズイングが2017年度,2018年度の決算説明資料で公表している管理委託料の値上げとその効果について分析して、今後管理組合がどのようなことを意識すべきかを書きたいと思います。

結論だけ少し書くと、小規模マンションは管理会社から見て、手がかかる割には利益が少ないため、これまでと比較して手厚いサービスは提供してもらえなくなる可能性が高く、辞めるべきこと、管理組合が自身でやらないといけないことを考えていく必要がでてきます。

管理会社の分類と委託先の流動性

管理会社は、デベロッパー系と独立系の2社に分類されます。
デベロッパー系は、親会社または系列会社がマンション分譲会社である管理会社です。親会社が分譲マンションを販売すると最初に管理委託を受ける会社であるため、新規案件が一定程度、親会社または系列会社から回ってくるため、デベロッパー系と呼ばれています。今回取り上げたのは、東急コミュニティ社と、大京アステージ社の2社。

独立系の会社は、親会社にはマンション分譲会社がなく、分譲のマンション管理業務が本業となっている会社です。新規案件は親会社から回ってくるわけではないので、新規案件の大部分がReplaceと言って、他社が管理している物件の管理委託を奪って新規案件を増やしている会社です。今回取り上げたのは、日本ハウズイングと合人社計画研究所です。

分譲マンション管理組合の委託先は、流動的かというと、実はあまり流動的ではありません。2018年度の国交省のマンション総合調査アンケートによればn=1,436で73%が分譲業者が指定した管理業者に委託していることがわかります。

図1.委託先の管理会社

しかし日本ハウズイングや合人社のような独立系管理会社の管理委託物件数も増加しています。また、東急コミュニティや大京アステージのような会社も、ホームページでは、管理会社の変更を考えている管理組合向けのアピールをしています。今後、新規分譲マンションの数は人口減少に伴い減少傾向にあるため、既存のパイの奪い合いの傾向はますます高まっていき、2千社近くあると言われている管理会社も合併や統合による淘汰の傾向は強まっていきます。

図2.マンション販売戸数 2011年から2020年

管理会社大手4社の分析

マンション管理業協会の公表している管理戸数で言うと、1位 日本ハウズイング、2位 大京アステージ、4位 東急コミュニティ、7位合人社となっています。大京と東急がデベロッパー系、日本ハウズイングと合人社が独立系です。

表1 2020年3月末時、マンション管理業協会で公表されている管理会社情報

2020年3月末時東急コミュニティ大京アステージ日本ハウズイング
合人社計画研究所
デべロッパ系デべロッパ系独立系独立系
マンション管理部門売上
(千円)
57,612,00058,494,65040,582,00015,579,391
マンション管理部門社員数
(準社員含む)
5,7816,8705,7045,385
管理業主任者数1,9681,2891,011970
管理組合数5,1987,6268,4664,164
戸数341,041429,576459,551217,075
戸数/管理組合数66565452
売上(千円)/社員数9,9668,5157,1152,893
売上(千円)/管理組合数11,0837,6704,7943,741
売上(千円)/戸数1691368872

ここでいう管理部門売上は、一般社団法人 マンション管理業協会が公表している2020年3月のマンション管理部門の売上で、大部分がマンション管理組合からの管理委託料です。


なお表1には修繕工事売上に関しては、含まれていいません。上場している日本ハウズイング社の405億円は、2019年度の日本ハウズイング社の決算短信の連結のマンション管理業の売上の514億円より低い数字となっておりますが、この数字には、営繕工事業というマンション修繕の売上が含まれていないことから明らかです。一般社団法人 マンション管理業協会が公表しているマンション管理業の売上、つまり、月額管理委託料の合計と火災保険、数年に1回実施の設備点検などマンションの管理費から管理会社に支払われる売上の合計が表1のマンション管理部門売上です。

表1の社員数には、管理員や清掃員などフルタイムではない準社員も含まれています。大京アステージや、日本ハウズイングは、正社員の数をホームページで公表しておりそれぞれ、1,406人、1,999人であること(2021年3月時)がわかっています。

東急コミュニティと、大京アステージは、576億円、584億円とほぼ同じレベルで、管理物件数の1位の日本ハウズイングの405億円を大きく凌駕しています。

1組合当たりの戸数が、東急は66戸、日本ハウズイングは54戸と少ないです。管理会社にとってもは大きなマンションほど人件費に対する売り上げは多くなりますが、東急の方が社員一人当たりの売り上げが996万円/年・社員と、日本ハウズイングの711万円/年と比べて効率よいことがわかります。

さらに戸数あたりの売上を見ると、東急は169,000円/年・戸、14,083円/月・戸、日本ハウズイング88,000円/年・戸と7,333円/月・戸と半額くらいの水準です。これはマンションの管理費ではなく、管理費から管理会社に支払われる月額管理委託料の平均です。管理費は、通常はこの数字を0.5~0.7で割ったくらいの金額設定になっています。

修繕積立金と異なり管理委託料には国交省が示しているような相場のようなものはありません。マンションによって管理しなければいけないものは違うため、規模、設備等を一つ一つ見ないとなんとも言えませんが、デベロッパー系管理会社に、分譲時から管理委託している管理組合は、多めに支払っているという認識は持った方が良いでしょう。

同じ傾向は、大京アステージ、合人社ににも言えます。なお、合人社は72,000円/年・戸と、日本ハウズイングより戸数当たりの売上は小さいですが、合人社が独自にホームページで公開している決算書によると、営業利益も10%以上残しており、かなり販管費及び一般管理費を低く抑えている事がわかります。

デベロッパー系の管理会社に依頼している管理組合が、独立系に同じ仕様で管理委託の見積り依頼をしたら、確実に管理委託料は下がることを裏付けています。

これまで一度も管理会社を変更していない管理組合さんは、一度独立系管理会社に提案をしてもらうと良いでしょう。必ずしも管理会社を変更しなくても、別の会社の見積をとった上で管理会社と交渉すると価格が下げてもらえる可能性もあります

東急コミュニティや大京アステージなどのようなデベロッパー系もホームページ上で、Replaceに対する窓口を用意しており価格以外の価値を訴求しているようです。
実際に、管理会社を変える際に、日本ハウズイングと東急コミュニティのコンペとなり、管理委託料が高かったがサービスを重視して東急コミュニティを選択したという話も聞いています。独立系が必ずしも良いと判断されるとは限りません。

私のマンションでも管理会社をデベロッパー系から独立系に変えていますが、確かに価格はさがり、管理費を1戸あたり5,000円値下げしました。その後2回の消費税アップで管理費を値上げすることなく管理費維持を続けています。独立系では、日本ハウズイングにお願いをしていた時期もありますが、サービスが悪いという認識はありませんでした。理事会では毎回議案を整理してくれて積極的な提案も多く、理事会議事録案の作成も丁寧で良かったです。管理会社のサービスレベルも、大きな差はありませんでした。一番ばらつきがあるのは清掃ですが、管理会社によって差があるというより、管理人の担当の差のように感じました。

日本ハウズイングの管理委託料の値上げについて

図3.2017年度 日本ハウズイング社 決算説明資料

日本ハウズイングは、2017年度、2018年度の決算説明資料にも明記している通り、管理委託料の値上げに踏み切りました。決算資料から分析します。

ここでいうマンション管理部門の売り上げは、日本ハウズイング社が決算資料で公表している子会社を含む連結決算のマンション管理部門の数字です。表1の数字とは異なりますのでご注意下さい。新規受注を増やして、マンション管理部門の売上も伸ばしてきましたが、2015年度まで営業利益率は、10%程度の水準を確保してきましたが、2016年度から、マンション管理部門の営業利益が落ち込みはじめました。
マンション管理戸数でNo.1になるために、新規獲得のため受注を増やすため無理して受注を増やしたため売上は伸びたものの営業利益が減少傾向にあったため、トップダウンでの値上げ要請があったとみています。

表2 日本ハウズイング社のマンション管理・営繕の売上、営業利益推移(同社2015年度~2019年度の決算説明資料より)

単位(百万円)2015年度2016年度2017年度2018年度2019年度
マンション管理売上44,20845,62948,17851,80051,430
マンション管理営業利益4,7303,8543,6194,0004,298
マンション管理利益率10.7%8.4%7.5%7.7%8.1%
マンション営繕売上30,92736,77840,30747,20049,274
マンション営繕営業利益2,2712,7293,1533,4603,998
マンション営繕利益率7.3%7.4%7.8%7.3%8.1%
管理組合数7,8818,1578,1938,3328,466
棟数9,1419,4839,3979,5559,750
戸数425,026440,156441,621448,774459,551
図4.日本ハウズイング マンション管理部門、営繕部門の売上/営業利益
図5.日本ハウズイング マンション管理戸数(棒グラフ)、管理組合数・管理棟数

当時、私のマンションでも日本ハウズイングにお願いしていたため、値上げの要請が来ました。支店長名の正式文書によれば、最低賃金改定と社会保険の料率改定と適用範囲拡大の影響で、事務管理費を維持できなくなったためと説明されました。

その時の日本ハウズイングの説明によると、マンションの規模によらずに組合に対して一律に一定額値上げを依頼していると説明していました。そうなると小規模マンションでは、各戸の負担が増えるために厳しくなります。

当時、日本ハウズイングの管理業務はとくに問題があったわけでなく担当者もしっかりしていましたが、私のマンションでは、日本ハウズイングの値上げ後の管理委託契約更新をすることなく、管理会社を変更しました。消費税アップも控えており、管理費における管理委託料の比率が高くなりすぎて小修繕費を確保するのが難しくしまったため管理費値上げか管理会社交換かの選択を迫られて管理会社を変更する方向で組合で意思決定しました。

おそらく同じような議論が行われて管理会社変更をした管理組合は多いでしょう。やはり痛手が大きい小規模マンションではその傾向が強いでしょう。2017年度には管理戸数は、440,156から441,621へと+1,456管理戸数を増やしていますが、管理棟数は86棟減少させているため、一定数の管理組合が契約更新しなかったとものの、戸数が大きい物件を受注して戸数は増やしたと思われます。

なお、管理部門の売上の伸び以上に、営繕(修繕)の売上及び営業利益が伸びています。日本ハウズイング社が修繕工事の売上にも力を入れていたことがわかります。この数字だけ見ると、管理委託料の値上げがなくても、営繕で営業利益は確保できたのではないかと思われますが、それは結果論でしょうか。とにかく顧客である管理組合に負担を強いてでも営業利益を増やすという経営判断をしたということです。

しかし、この日本ハウズイングの値上げ要請は私のマンションを含めて管理組合側の意識を変えたある意味象徴的な出来事でした。契約と言うのは顧客である管理組合と管理会社の合意の上で成り立つという当たり前のことを再認識しました。おそらくぬるま湯にひたってうとうとしていた多くの管理組合が、私たち同様、眼をさますきっかけになったことでしょう。

私もマンション修繕コスト削減士として目覚めていき、管理会社変更、直結給水工事、保険の見直しに踏み切りコスト削減を積み上げて行くことになりました。

今後のマンション管理業について

マンション管理業のビジネスモデルが、フロントマンにしろ、管理人、清掃員、設備点検員、いずれも人手がかかる労働集約型のビジネスモデルであるため労働人口が減少が始まっている日本での人件費高騰、社会保険料も上昇の影響を避けることは出来ません。

人口減少に伴い、新築マンションは減少していき、手のかかる築古マンションが増えていくことも分かっています。

図6.国交省、マンションに関する統計データ等、築後30、40、50年超の分譲マンション数

マンションの延命、廃棄に伴う新しい業務が増えていきます。建替は都心の駅近などでニーズが高い場所のマンションに限定されて容積率の緩和される立地のマンションではあるかもしれませんが多くはないでしょう。

今後予定されているマンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)のマンション管理計画認定制度などの後押して、マンション管理組合が個人情報を除いて、積極的に、管理規約や修繕履歴、管理費・修繕費の未納情報、駐車場空き情報などをインターネット等で公開していく”情報公開”の流れが始まり、情報公開力が、中古購入者に選ばれる条件となると見ています。

業界全体としては遅れているIT化、クラウド化がすすみ、管理会社、管理組合間の業務改善も進んて行くことと思われます。さらにマンション管理において人件費削減が考えられる技術革新としては、以下のようなものが考えられます。新型コロナウイルスによるリモートワーク化に関連する流れも列挙しました。

  • 管理組合の理事会・総会のオンライン開催
  • 管理組合の理事会・総会資料のペーパーレス化
  • 理事会・総会の自動議事録作成技術
  • 支払処理伝票の廃止と、オンライン決済化 
  • 清掃ロボットによる自動化

人件費削減に大きく寄与する技術は、清掃ロボットなどがありますが、10年以内で実現できるでしょうか?

是非とも期待したいところですが、現実には管理会社による管理組合の選別は進んでいくと予想します。

とくに、売上寄与、営業利益の寄与が小さい、小規模のマンションほど、そのあおりを受けることになります。管理会社も手がかかるような提案はしないようになると予想されます。「日常管理と理事会出席だけして放置」の状態です。またクレーマー組合員・理事がいるマンションなども管理会社から手を引くような動きも増えるでしょう。組合員のモラルも問われるようになります。

これからの管理組合は、マンション管理会社に依頼すべきことと、自助努力で検討すべきことは分けていく必要があり、これまでお金をかけていたことを辞めるなど判断していくことが求められていくでしょう。

マンション管理会社を変更しないと、もう削るところがないという管理組合さんはこちらをご覧ください。

小規模、築古でも断られないマンション管理会社の探し方

まとめ

  • 国交省のアンケートによると管理会社の変更をしていない管理組合が、7割以上と高いです。
  • デベロッパー系管理会社の方が、管理物件の規模も大きく組合数あたりの売上が大きい傾向があります。
  • 日本ハウズイングは、2017年度、2018年度で管理委託料を値上げして、営業利益を改善させました。管理料値上げは、不採算マンションを選別する効果があったと思われます。
  • 今後も、労働集約型のビジネスモデルであるマンション管理業は、労働人口不足から人件費が高騰していくことから、管理会によるの選別の傾向は高まると思われます。
  • マンション管理組合側での自助努力も必要になるでしょう。

以上