マンション管理会社は、日本に2,000社ほどあると言われています。分譲マンションは、国交省の分譲マンションストック数によれば、2019年3月末で655.5万戸あるそうです。

このブログでは、国交省の平成30年度マンション総合調査結果からマンション管理組合の管理会社選択の統計を説明して、国交省の標準管理委託契約書(2020年10月現在、2018年3月9日のものが最新の修正)を元に管理委託内容を元に、良い管理会社の条件についてまとめたいと思います。

国交省の標準管理委託契約書は、マンション管理会社とマンション管理組合の契約内容の標準的なフォーマットとなっています。通常、管理会社にマンション管理を委託する場合、マンション管理会社は通常この標準管理委託契約書を、各マンション管理組合の実情に合わせて書き換えて管理委託契約書としてつかっています。

マンション管理会社の変更の現状

国交省が全国のマンション管理組合に実施した平成30年度マンション総合調査結果アンケート(N=1,688)によれば(324ページ)によると、74.1%が全部を管理会社に委託、基幹事務の一部を管理会社に委託が11.1%、管理組合が管理業務全部を管理(自主管理)6.8%、または管理組合が基幹業務のすべてを実施が2.2%となっております。管理会社に全部または一部委託しているマンションだけで、85.2%を占めています。

委託先の管理会社についてのアンケートによると委託している管理会社の決定方法についての同じ国交省のアンケート(N=1,436)のP326にあります。以下の通りです。分譲マンション販売会社(デベロッパー)が決定したマンション管理会社に委託をしている管理組合が73%です。つまり、ほとんどの分譲マンションが、新築分譲時のデベロッパーの系列管理会社に委託しています。管理会社変更を実施した管理組合の割合は21%、こちらの管理会社の多くは、いわゆる独立系に委託している場合が多いです。

図2.マンション管理会社の委託先の決定方法

一般的には、独立系管理会社に管理を委託している管理組合の管理費の方がが安くなっています。管理会社を変える際に、管理委託費を安くするように、管理組合が交渉しているからです。価格もシビアに比較している可能性が高いです。

しかし管理会社を変えた場合、これまで当たり前のようにやってくれていた業務を引き受けてもらえないなどのデメリットもありえます。管理会社を変える場合は、管理委託契約書の記載内容をよく確認して、何が含まれているのか業務内容をよく確認しましょう。

管理組合の目線で良いマンション管理会社は、リーズナブルな価格で、基幹事務、管理員業務、清掃業務、建物・設備維持業務などのサービスを提供してくれて、マンション管理組合の立ち場にたって良い提案してくれる会社です。

国交省の標準管理委託契約書をもとに、業務内容別に良い管理会社を見分ける方法をまとめます。

マンション管理業務の分類

標準管理委託契約書には、第3条に、管理会社の業務内容が記載されています。

  • 事務管理業務(別表1)
  • 管理員業務費(別表2)
  • 清掃業務費(小型のマンションだと管理員業務費と一体になる場合が多い)(別表3)
  • 建物・設備管理業務費(別表4)

この4つが管理会社に支払う管理委託費の項目になります。一部委託の場合は、管理員業務や清掃業務の項目はない可能性があります。

事務管理業務から見る良い管理会社

事務管理業務についての標準管理委託契約書は、別表1に詳細があります。基幹業務として、各部屋のオーナー(区分所有者)から管理費・修繕積立金などを毎月徴収して、支払う必要がある共用部の電気代、水道代、清掃用具などへの支払いをして、管理員業務・清掃業務、建物設備管理業務を行い支払いをして、収支を会計報告としてまとめる業務です。基幹業務以外として、各部屋のオーナー(区分所有者)の名簿の整備、理事会の開催、運営、総会の開催のための準備、支援業務などがあります。

事務管理費の部分は、団地型のやタワーマンションなどを数百人の大規模なマンションを除けば、小さなマンションも大きなマンションも、理事会や総会を実施する回数は変わりません。管理費・修繕積立金の収納についても銀行振込なので30戸規模でも100戸規模でも大きな差はありません。しかし、管理会社の規模によって人件費や販管費が異なるためか、管理会社によって価格が下がる部分です。

事務管理の中で、管理会社の手腕が問われる業務として管理費・修繕積立金の未収金の回収能力があります。標準管理委託契約書の基幹業務(2)出納では、以下のようにさらっとした対応しか記載されていません。

  • 毎月、甲の組合員の管理費等の滞納状況を、甲に報告する。
  • 甲の組合員が管理費等を滞納したときは、最初の支払期限から起算して○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。
  • 督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその業務を終了する。

この部分は管理会社によって対応が異なります。〇月の部分は、管理会社によって6か月で打ち切るという会社もあれば、期限の記載がない会社もあります。内容証明郵便による督促、簡易裁判所への申したてによる支払い督促、さらに訴訟による強制執行までの対応を明記する会社もあります。なお、弁護士の費用や訴訟に必要な費用は管理組合負担になります。どこまで管理会社がサポートしてくれるか、管理会社を変更する場合は、よくヒアリングして、管理委託契約書に対応する業務をきちんと記載すべきです。

なお、標準管理委託契約書には、理事会の議事にかかわる資料の作成と(議案作成)と議事録案の作成が含まれていますが、管理会社によって差が出ます。管理会社に見積もり依頼する際は、理事会の議案と、議事録案の作成を実施してくれるかは必ず確認しましょう。これまでの管理会社が議事録案を作成していたからと言って、新しい管理会社も当たり前のようにはやってくれるわけでありません。管理委託料が下がっても管理組合の理事の仕事が増えるデメリットがあるのではなんのための変更かわかりません。

管理員業務、清掃業務から見る良い管理会社

管理員業務・清掃業務費については、基本的には人件費であり、多くの管理会社は管理員、清掃業務員を、最低低賃金+αの時給で雇っており、管理員、清掃業務員の作業時間を変えないと、金額という意味では差が出にくいです。そして、中小マンションでは管理員・清掃員業務が管理委託業務の中でもっとも大きなコストを占める場合が多いです。

日本は高齢化、労働人口不足が加速するため、人件費高騰は避けられない業務で、どの管理会社に依頼しても、値上がりは避けられません。清掃業務については、管理会社というよりは、割り当てられた担当者によって大きな差が出ます。そして、マンション管理で住民から、一番不満が出やすい項目の一つです。

標準管理規約では、管理員業務が別表2、清掃業務が別表3にあります。

図1.標準管理委託契約書 別表3 管理員業務

 

図2.標準管理委託契約書 別表3 清掃業務(日常清掃と定期清掃)

管理員業務はさほど量が多くないため差は出にくいです。清掃業務は業務量が多く差が出ます。小マンションは、週3回、3時間派遣で管理員業務と清掃業務を兼務している場合が多いです。マンション規模が大きくなると、週4日、5日、時間も9-5時、8時-22時など長くなっていきます。

清掃業務に不備があれば、まずは別表3の清掃仕様を追加したり修正して、その仕様書通りに清掃員に、清掃指導を行うことが出来ることが出来る会社は良い管理会社と言えます。具体的には、共用部のエントランス、廊下、駐輪場、駐車場が、ごみ拾いだけなのか、掃(は)き掃除も含まれるのか、拭き(モップかけなど)も含まれるのか、などです。また、ごみ置き場に違反ゴミ、外部から投棄された違反ゴミがあった場合の対応について、行政のごみ収集車の担当が貼ったシールに従って処理するのか、しばらく放置してから処理するのか、などもきちんと仕様化できればなお良いです。時間内にできない過剰な仕様では清掃員は対応できませんが、現実的な範囲での見直しをおこなって、清掃員を変更しても清掃レベルを維持できることが望ましいです。このあたりを積極的に改善提案してくれる管理会社は良い会社です。

どんな管理会社でも、質の低い管理員や清掃員が派遣されて仕様通りに清掃が実施されていない、あるいは露骨な手抜きがあることはしばしばあります。その場合は、管理会社に具体的に依頼をして、改善させるしかありません。管理員や清掃員の質については、管理会社がレベルを保つために、定期的に清掃のチェックをする清掃指導員が来る会社もありますが、管理員・清掃業務の担当者により、当たりはずれがあることは避けられないです。厳しい管理会社は、作業終業後の写真による報告を求めて管理することもあります。管理組合が毎回チェックするのは無理がありますが、住民から指摘があったときに、汚れがいつからあるのかなど検証できるように清掃履歴を写真により報告してもらえると、管理組合にとっては助かります。

管理人業務・清掃業務についてコストを下げる方法としては、週に実施する清掃回数を削減する提案や、清掃回数は変えずに時間を決めずに実施する巡回清掃でコストを下げることもありえます。但し、ごみ出し業務がある場合は、時間を合わせる必要もあり、いつ来ても良いという事にはならないのが難しいところです。また、図2の右側にありますが、日常清掃の頻度を下げる代わりに、定期清掃を3か月に1回、または半年に1回など入れることなども考えられます。管理費を上げずに、やりくりする方法を提案してくれる管理会社は良い会社です。

日本の労働人口減少が背景にあり人件費は高騰していくので管理員業務・清掃業務費については、今後間違いなく上昇していきます。今後は、住民に業務委託して清掃してもらって、これまで管理委託していた業務よりは低い作業費を住民に支払うなどという運用も考えられるでしょう。

建物設備管理業務から見る良い管理会社

標準管理委託契約書ですと、別表4に記載されています。自分のマンションにどの設備があり、どの設備が管理委託されているかを把握することが大切です。なお、この標準管理委託契約書の別表4に記載がなくて、マンションが委託している内容として、給水ポンプなど設備異常の24時間対応設備異常の緊急通報システム、共用部の異常の24時間対応コールセンター業務などがあります。

建物・設備管理業務費も仕様を変えなければ費用の差は出にくいです。建物・設備管理費は、給水設備のメンテナンス費や、配水管清掃、エレベータのメンテナンスなどの費用などですが、管理会社から専門の業者に再委託します。管理組合理事は一度は設備点検業務に立ち会って、支払っている金額に見合う業務をしているのかを確認してみましょう。

エレベータのあるマンションでは、メンテナンス費用が高額です。エレベータのメンテナンスでは、フルメンテナンス契約と、P.O.G(パーツ、オイル、グリス)契約があります。またメンテナンス会社も、メーカーの直系子会社と独立系の会社でも差があります。管理組合にそれぞれのメリット・デメリットを説明して、設備管理業務費の見直しの提案ができる会社は良い会社です。エレベータのメンテナンスはコストインパクトが大きいです。まずは、見直しを検討すべきでしょう。

給水設備に関しては、貯水槽方式の場合は、増圧ポンプによる直結給水方式にすることで貯水槽を撤去してしまい貯水槽清掃費を削減することなど、4階、5階建てくらいのマンションであれば、ポンプなしの直結給水での給水にしてしまうと増圧ポンプも削除できるため設備点検費を削減できます。設備を減らすと、割り切った運用とすれば設備異常の緊急通報システムを削除することも出来ます。このような提案ができる管理会社は良い会社です。

頻度や方式を変えることで価格を下げることも出来ますので、そのような提案ができる管理会社は良いと言えるでしょう。消防用設備など点検、報告頻度が6か月に1回、1年に1回と決められているものは頻度は変えられませんが、3年に1度の報告で良いものが、6か月に1度点検されているなどのこともありえます。法的な根拠と、頻度の提案を管理会社に求めて、頻度を減らすことが出来る設備点検もあります。

管理会社を変更する場合は、現状維持の見積もりとは別に、建物・設備管理業務の改善を提案してもらって、コスト削減を提案を求めると良いでしょう。

最後に、共用部の火災保険を、マンションドクター火災保険などリーズナブルな保険を提案してくる会社も良い会社と言えるでしょう。マンションドクター火災保険は、日新火災の商品で、管理組合の管理状況をヒアリングして、管理状態が良いと半額近くになる火災保険です。管理会社が保険の代理店になっている場合が多いのですが、マンションドクター火災保険の代理店をしている管理会社はあまり聞きません。このような利幅が少ないマンションドクター保険の提案をする管理会社は良い会社です。

修繕積立金の設定から見る良い管理会社

修繕積立金は、新築マンションでは、管理費の1/2から1/3くらいに設定される場合が多いです。これは、分譲会社がマンションを販売しやすくするためにマンション分譲会社が、修繕積立金安く設定しているからです。しかも管理費はしっかり確保して分譲会社の子会社のマンション管理会社の利益を確保しようと高めに設定しているため、管理費が修繕積立金の3倍程度になっている場合もあります。

このような修繕積立金は段階的に値上げする前提になっていますが、マンション管理組合総会で修繕積立金の値上げを決議できない場合、新築から10年経過しても管理費の1/3程度というマンションもあります。しかし12年から18年経過して、修繕積立金が管理費の1/3程度だとすると、大規模修繕工事の時期がきても、修繕積立金が足りずに数十万円の一時金を組合員から集めるか、借金をしないと大規模修繕工事が実施できない場合があります。借金をしても、修繕積立金を値上げしないと返済できないので値上げは必須です。

一日も早く修繕積立金を定額方式に変更して、値上げする必要があります。具体的には、専有部の面積m2あたり200円が一つの目安になりますが、長期修繕計画を作成してそれに基づいて適正な修繕積立金を設定するべきです。段階増額方式よりも定額方式の方が、住んでいた時期によってマンションのオーナーにとっても価値も変わらないため平等です。総会での決議も1回で済むので見直しをするなら、定額方式にすべきです。

長期修繕計画の作成は、標準管理委託契約書には、第3条の1項の事務管理業務の一部となっており、別表1の基幹業務「(3)本マンションの維持または修繕に関する企画又は実施の調整」として、通常は業務内に入っております。長期修繕計画の見直し業務は別途契約つまり、別途有料という意味ですが少なくても、修繕工事の内容や実施予定時期、工事の概算費用等を改善の必要がある場合は、書面をもって助言するという業務内容があるので、修繕積立金の設定が低すぎるにも関わらず放置している管理会社は問題です。

マンション分譲会社が販売しやすくするため、修繕積立金を段階増額方式にして新築販売時に、低い設定で販売してしまうことが問題で、それこそ国交省は訂正をもとめるべきです。

長期修繕計画を見直しして適正な価格に修繕積立金を定額方式として値上げする提案ができるのであれば、良い管理会社です。組合員に値上げを納得させるのは難しいですが、長期修繕計画を準備して根拠を、組合員にきちんと説明して適正価格に値上げできないようでは良い管理会社とは言えません。また管理費を下げる余地があれば、管理費を下げて修繕費を値上げしてバランスとる提案ができる管理会社はさらにの実力がある会社です。

なお、修繕積立金は主に、大規模修繕工事や、エレベータ、給排水設備の更新工事などで使われますが、ここでも管理会社によって大きく差が出ます。管理会社が工事部門をもっていて大規模修繕工事の元請けをする管理会社と、工事の元請けをしない管理会社によって提案は変わってきます。どちらのタイプの管理会社ともうまく付き合うことで、コストを削減して良い大規模修繕工事をすることは出来ます。具体的には、以下のブログで、まとめていますので、参考にして下さい。

マンション管理会社を大規模修繕工事の元請けをするか、しないかで分類してどのように付き合うと大規模修繕工事を成功に導けるかをまとめています。

マンション管理会社とうまくつき合い大規模修繕工事を適正価格で実施する

まとめ

最後に、管理委託費が高めで、良い提案ができる会社と、管理委託費は安めで提案がない会社として、表1にまとめました。

表1.管理委託費が高めの会社でも具体的な提案ができる会社と、管理委託費は低いけど提案がない会社の特徴

  管理委託費は高めでも、管理業務に関する提案が出来る会社 管理委託費は安いが、管理業務に関する提案がない会社

事務管理業務

会社の規模で人件費が異なり差が出やすい。但し、事務管理業務の費用だけで決めないほうが良い。価格が安いと安かろう悪かろうになる可能性もある。理事会の議案作成と議事録の作成などの業務が含まれているか確認しましょう。管理費・修繕積立金の未収金の回収業務は、管理会社により対応が異なります。どこまで対応してくれるのかよくヒアリングしましょう。

管理員業務費・清掃業務費

最低賃金+α程度の人件費で対応しているため、あまり差が出にくいです。但し、仕様を明確にすることで品質にばらつきをなくすことができます。管理会社とよく協議して、無理のない範囲で清掃仕様を修正してもらえる管理会社は良い管理会社です。しかし、どんな管理会社に委託しても、質の悪い管理員、清掃員の場合が割り当てられたら、具体的に改善を申し入れしましょう。

建物・設備管理業務費

〇現行の委託業務からコストを下げる設備に変更する提案をしたり、頻度を下げる提案ができる管理会社は良い会社です。 管理委託料が安く受けても、現状維持だけで、現行の委託業務からコストを下げる提案が出来ない会社は、顧客意識が低く、良い会社とは言えません。
修繕積立金

〇長期修繕計画を見直しして、適正な修繕積立金に値上げすることが出来る会社が良い管理会社です。

〇管理費と修繕積立金のバランスを見て、管理費を下げて、修繕積立金をあげる提案が出来る会社は良い会社です。

総合評価

管理組合側が不慣れな場合は、管理委託料が高くても、しっかり提案をしてくれる会社が良いです。

管理組合が慣れている場合は、管理会社の動きがわるい部分をカバーすることもできるので管理委託費削減を優先する選択もあります。

 

現在契約している管理会社の事務管理業務費が高いと感じたら、別の管理会社に見積もりを取って確認してみましょう。最新の管理委託契約書と重要事項説明書及び、最後に実施した通常総会の収支報告の部分のコピーを渡して、複数の管理会社に見積もり依頼してみることで見積もりを取ることが出来ます。

表1にまとめた通り、管理委託費だけでは決めないことです。ヒアリングのポイントを整理して現在の会社と管理会社変更メリット、デメリットを比較してみましょう。他の管理会社の見積もりをとったことを告げると管理会社も対応を変える、あるいは管理委託費の値下げを提案するかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。皆様のマンション管理の改善に役立てば幸いです。

以上

マンション管理会社サーチ

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