マンション修繕のお悩みを聞いていますと、根本には管理会社との関係がうまくいっていないことや、一部の組合員が管理会社と対立しているという話もききます。また管理会社との付き合いには良い点、悪い点あるものの関係は悪くしたくないというご意見を持っている管理組合は多いです。

管理会社を変更したいと思っても、良い会社はあるのか?変更した管理会社の評判が悪いと、自分の責任になってしまう、変更したくても検討する時間がとれないなど、課題も多いです。

変更するために管理会社にヒアリングしたら、世帯数が少ないことを理由にご提案をして頂くことが出来ないなどの場合もあります。

さらに、小さな築古マンションで収益性が悪いという理由や、強烈なクレーマ組合員がいる管理組合では、管理人、フロントがつぶれてしまうなどの理由で、管理会社側から手を引くケースも増えてきています。その場合は、管理委託料の値上げを求めてゆるやかに契約解除を提案してくる場合もあります。

人口減少・高齢化時代に入り、最低賃金も上昇して管理人さんの募集も大変です。マンション管理会社も収益性を考えて管理組合を選ぶ時代になっています。

自主管理でやっていく覚悟があるなるのであれば別ですが、管理会社とはうまくやっていかないと行けないのです。まず、現在契約している管理会社に何を委託契約しているのかを把握して、関係がわるくなっている原因が何なのか、どう改善すればよいのかを、マンション管理組合の目線で説明したいと思います。

管理組合と管理会社、国交省のアンケートより

図1.委託先の管理会社(N=1,436 2018年国交省アンケート)

通常のマンション管理組合の運営を図1にまとめます。

管理会社を変更している管理組合は、2018年国交省アンケートによれば、わずか21%です。73%の管理組合は分譲会社が新築分譲時に指定した管理会社とつきあっていることになります。

管理会社に満足していると考えるべきか、変更のための敷居が高いと考えるべきなのか、管理会社の変更は多くはありません。

管理会社を変更したい理由は?

  • 管理委託料が高い。
  • 修繕工事の見積が高い。
  • 長期修繕計画が10年後に赤字なのに、管理会社の売上目的のような不要と思われる工事提案をしてくる。
  • 検討をお願いしても、なかなか提案をしてくれない。
  • 専有部の出窓からの雨漏りが発生しているのに対応が遅かった。
  • 明らかに規約違反している組合員がいるのに注意してくれない。
  • 急ぎの対応が必要と思えない工事を、総会決議していない緊急の工事として理事長を説得して実施してしまった。

いずれも最近聞いた話です。

どのケースもあり得るのですが、管理会社が万能に解決してくれるわけではありません。

まずは管理会社に依頼できることが何なのかを標準管理委託契約書をベースに整理して、対応を考えたいと思います。

マンション標準管理委託契約書の管理会社の業務範囲

図2.標準管理委託契約書上で、管理組合が依頼できること

マンション管理業は国交省の許認可業務ですので、国交省のマンション標準管理委託契約書(図2)を準備しており、このフォーマットをベースにマンション管理組合は管理会社と管理委託契約をしています。リンクは、マンション管理業協会からダウンロードできます。

表1.  国交省のマンション標準管理委託契約書に基づく管理会社業務内容 

分類項目内容
1.       事務管理業務
(別表1)
管理組合の収入支出の調定収支予算の作成、決算書の作成、収支状況月次報告
出納管理費、修繕積立金、専用使用料の徴収
管理費、修繕積立金滞納者に対する督促
管理会社以外のマンション経費支払い
管理費・修繕積立金の帳簿管理、通帳保管
マンション維持・修繕に関する企画または、実施の調整長期修繕計画の作成、見直し(別個の契約とする)
マンションの維持・修繕を管理会社以外に発注する場合は、発注補助、実施の確認(外注業務の検収立ち合い)
1.2基幹事務以外の事務管理業務(1)理事会支援業務組合員名簿の整備
理事会の開催、運営支援
管理組合の契約事務の処理(火災保険契約、マンション内の駐車場の使用契約、駐輪場などの事務)
(2)総会支援業務
(3)その他各種点検、助言、消防計画、消防設備点検、建築設備点検の報告、届出の補助、図書の保管
2.管理員業務
(別表2)
マンション規模によって週3回から3時間から週7日まで契約による
3.清掃業務
(別表3)
(1)日常清掃小マンションは管理員と兼任、規模によって具体的に清掃方法、頻度を仕様書に定めて実施
(2)特別清掃高圧洗浄、ワックス仕上げなど年数回の清掃、別途方法、頻度を定めて実施
4.建物・設備管理業務(別表4)(1)建物点検外観目視、建築基準法第12条1項 特定建築物点検調査、建築基準法第12条3項 特定建築物の建築設備等定期検査
(2)エレベータ設備
(3)給水設備
(4)浄化槽、排水設備
(5)電気設備
(6)消防用設備消火設備、警報設備、避難設備、消防用水、消防活動上必要な施設
(7)機械式駐車場設備外観目視・定期保守
5.宅建業者の求めに応じて開示する事項
(別表5、管理委託契約書14条)
専有部の売却希望者がいる場合、媒介を依頼した宅地建物取引業者に購入希望者が問い合わせした場合に文書を提供する
管理委託契約書
(第8条)
緊急時の業務・地震、台風、突風、集中豪雨、落雷、雪、噴火、ひょう、あられ
・火災、漏水、破裂、爆発、物の飛来若しくは落下又は衝突、犯罪等による共用部への被害の緊急対応
管理委託契約書
(第11条)
有害行為の中止要求区分所有者・占有者への管理規約違反者、迷惑行為への注意

管理会社によって対応の差が大きい業務

管理会社の業務範囲で、管理会社によって対応の差が大きい仕事、管理組合に知られてていない、専有部購入希望の人への宅建業者を通じての情報提供の業務などについて説明します。

管理費、修繕積立金滞納者に対する督促業務

管理費、修繕積立金滞納者に対する督促は、管理会社によって差が出ます。本人、会社への電話、内容証明郵便、訴訟まで行って給料の差し押さえ等まで対応してもらえば資力のある滞納者であれば回収できます。管理会社によって対応期間が6か月までの場合と、管理委託契約期間中は継続して対応してもらえる場合など差があります。迅速な対応が必要になります。

弁護士の費用など発生しても理事会、総会決議を行って管理組合は毅然とした態度で回収を進めるべきです。うやむやな対応をとると、同じ問題を起こしても逃げ切れる甘い管理組合と考える組合員が出てくる可能性があります。

理事会支援業務

理事会の開催、運営支援は管理会社、フロント担当者の能力によって大きく差が出ます。どこまで管理組合の依頼事項を検討して準備してくるか、大きく異なります。

さらに、理事会の議事録案作成、理事会による確認、及び組合員の配布、これは管理組合の姿勢の問題でもありますが、実施している管理組合、議事録作成していない管理組合もあります。議事録作成配布については、管理組合の情報共有、総会における合意形成のためにするべきです。

管理組合からうるさく言わなければやらなくなってしまうこともありますので管理組合の姿勢も重要です。

長期修繕計画の作成・見直し

長期修繕計画の作成・見直しは業務に入っていますが、別個の契約すると記載があります。無償で作成してくれるものではないと認識したほうが良いでしょう。作成する年の通常総会で予算化して発注しましょう。50世帯以下のマンションでスト30-40万円程度です。公益財団法人 マンション管理センターでは、税込み31,000円で作成してくれますが、各単価がお役所価格で高めになっていますので注意しましょう。

長期修繕計画は総会議決事項なので、理事会でも内容を十分に内容を確認して総会で組合員にきちんと説明できるようにしましょう。

10年後、20年後、赤字になっている計画を管理会社は提出してきます。むしろ赤字の計画の方が多いように思います、数字が緩いこと、国交省のフォーマットに併せると交換の周期が短めであること、不要な工事を入れていること、などが理由にあります。工事は、長期修繕計画の数字以下で実施することは、必須だと考えましょう。実際にその金額以下で実施できます。

修繕履歴の管理

修繕の履歴が不明。竣工図や、大規模修繕工事の完成図書がどこにあるかわからという組合はありませんが、その他の修繕の履歴を残していないと、後でわからなくなるので、小修繕を含めて工事履歴を残すように依頼すると良いでしょう。宅建業者の求めに応じて開示する事項(別表5)にも、共用部分の修繕実施状況というのがあります。毎年1回、総会前に小修繕も含めて、どの業者に、どこの修理を、いくらでいつ発注したのかを残しておくように管理会社に依頼すると良いでしょう。

緊急時の業務

緊急時の対応は、地震、台風、突風、集中豪雨、落雷、雪、噴火、ひょう、あられや、火災、漏水、破裂、爆発、物の飛来若しくは落下又は衝突、犯罪等で、共有部が破損したときの対応になります。

地震の場合は、管理会社の対応の差はありますが、そもそも鉄筋コンクリートの建物に影響が出るほどの地震となると、その場合は恐らく管理会社もあちこちに呼ばれてしまい、対応を求めることは難しいため、管理会社の差は出にくいと予想します。マンション内の自主防災組織をつくって対応を防災グッズの準備や、震災時の対応をマニュアル化しておくことがポイントになります。

管理会社の差が出る可能性があるのは、共用部である屋上や、外壁、出窓のシール部などからの漏水があった場合の対応です。共用部である外壁からの専有部の漏水に対しては、管理組合、管理会社が対応すべき事項ですが、管理委託契約書では第8条に緊急時の業務として記載があります。

被害が専有部に及ぶので対応が遅いと管理組合の理事長、管理会社の仕事が問われます。

管理委託契約書では第8条に緊急時の業務に、管理組合の承認を受ける時間的余裕がない場合は、管理組合の承認なしで実施することも可能とされています。 もし、専有部の漏水か、共用部の漏水か区別がつかない場合は、区分所有法9条には以下の条項があります。法律上、不明の場合は共用部の事故として管理組合・管理会社に調査を要求できることになっています。

(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
第9条 建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。

通常はマンション火災保険のオプションで、水濡れ原因調査費用補償特約というのに入っているので、保険の範囲で必要な対応をしてもらうことができますが、管理会社が、迅速に動いてくれるか差が大きくでます。現地に来て写真をとり保険会社に送る、修理費用の見積もりをとり、保険申請するという作業が遅いと理事長は仕事をしないと、事故がおこった組合員に恨まれます。迅速に対応してくれない会社は普段の対応が良くても、付き合いたくない会社になります。詳しくはこちらのブログ、マンション火災保険は管理会社経由が良いのか?を参照ください。

有害行為への中止要求

有害行為への中止要求は、依頼する管理組合側もよく注意して対応する必要があります。規約違反の証拠を見極めて、有害行為の区分所有者に言いづらいことを丁寧に伝えて、有害行為、違反行為をやめさせるのは、難しい仕事です。とくに、区分所有者間のペットや騒音の問題など、仲たがいが背景にある場合は話がこじれる場合があります。管理組合側も気を遣って管理会社に依頼しないと、管理会社との関係が悪くなりますので、管理組合理事長を経由したほうが良いです。区分所有者から直接依頼すると、言いやすい管理会社が相手ですと強く言いすぎてしまう事があります。

図3.有害行為への対応を区分所有者から直接管理会社に依頼すると話がこじれる
図4. 有害行為への対応を区分所有者への対応は、理事長が間に入って何が起こっているか整理して対応依頼する

清掃業務

その他の大きく差がでるのは、シンプルな仕事ですが清掃です。担当者にもよりますが、管理会社が巡回指導する体制がしっかりある場合は清掃もよくなります。対応が悪い場合は、通常総会までに管理委託契約書の別表3の仕様書でやるべきことを細かく書いて指導すると対応は良くなります。それでも担当者に問題があり、やってもらえない場合は、担当者の交替を要求しましょう。

大規模修繕工事見積が高い

管理会社によっては大規模修繕工事などの計画修繕工事の元請けを行う会社があり、高い工事を提案をされてしまい、理事会も判断できずに困っている場合があります。

管理委託料は10%削減するのは、かなり大変です。管理会社を変更しないと無理かもしれません。しかし大規模修繕工事は、管理会社の提案から20%削減することは普通に実現可能です。金額が大きい大規模修繕工事のコスト削減インパクトは大きいです。

多くの管理会社が元請けをする工事会社でもあり、時期が来ると劣化診断調査をして、組合員向けアンケートを実施して、工事範囲を決めて、複数社から見積もりを取りました、こちらでいかがでしょうか?と提案をしてきます。

これらの作業は、本来、管理委託契約書には含まれておりません。管理会社元請けをする工事会社でもある場合は、これらの作業を無料でやってくれる場合もあります。何故かと言えば大規模修繕工事で大きく売上・利益を出すことが出来るから、多少費用がかかっても工事を受注するほうがメリットが大きいと、と考えているからです。

図5.管理会社が工事の元請けをする場合の業務
図6.管理会社が工事の元請けをしない場合の業務

標準管理委託契約書の事務管理業務の基幹業務のマンション維持・修繕に関する企画または、実施の調整についての国交省のコメントを読む限り、管理会社が工事を実施することを想定しておらず、設計・監理をするのが管理会社の仕事であると想定しています。そして、設計・管理業務は、別個の契約が望ましいとしています。

大規模修繕工事の1年前の通常総会で、設計書(工事仕様書、設計明細)を、管理会社に有償で作成依頼して総会で予算化して発注して設計書(工事仕様書、設計明細)を準備しましょう。設計書(工事仕様書、設計明細)があれば、工事の詳細がわからなくても外部の工事会社から見積もりを取ることが出来ます。管理会社以外の大規模修繕工事の見積もりを見ると適正価格が見えてきます。

修繕工事を実施する年は、修繕委員会をつくってメンバーをつくり、負担を分散させるのも良いでしょう。

設計書(工事仕様書、設計明細)をつくって、工事会社から見積もりをとる方法を、詳しく解説をしているので参照ください。

マンション管理会社とうまくつき合い大規模修繕工事を適正価格で実施する

管理会社不満と、管理会社との関係改善へのアクション

管理組合不満管理組合やるべきこと管理会社への依頼
1.依頼事項を対応してくれない。管理委託契約書で業務範囲かどうか確認して、業務範囲内に課題を整理して依頼しましょう。管理委託契約書の●条 or 別表●に従って、対応をお願いします。それでも対応しない場合は、上司にエスカレーションして上司にも冷静にお願いしてみましょう。
2.管理費等の滞納6か月で対応を打ち切る管理会社もあるので、早めに判断してアクションを依頼する。電話、内容証明郵便、訴訟、差し押さえまで迅速にすすめるように判断を早く行い、依頼する。
3.理事会で議事録を書いてくれない。管理委託契約書に議事録作成を確認議事録作成業務が契約書になければ、通常総会までに議事録作成業務を契約書に追加するように依頼して総会で決議する。
4.理事会で議題を作成してこない管理委託契約書別表1の理事会支援業務として依頼する理事会3週間前に理事長あてにメール等で議案送付確認してもらうように依頼して、2週間前までに理事に議案を配布するように依頼する。
5.長期修繕計画を作成・更新してくれない標準管理委託契約書に含まれない業務なので、通常総会前に、管理会社に作成の見積依頼をして、総会で予算化して発注する発注すれば納期通りに対応してくれるはず。長期修繕計画は総会議決事項なので、理事会でも内容を十分に確認して不明点をなくすこと
6.修繕工事の履歴の整理が出来ていない標準管理委託契約書には明示的に業務として含まれていませんが、依頼すればやってくれるレベルの業務です。会計月を締めたら、その年の小修繕、計画修繕をエクセルで履歴に追加してもらい管理組合に共有してもらう。
7.共用部の漏水事故の対応が遅い管理委託契約書(第8条)緊急時の対応として依頼しましょう。火災保険で水濡れ原因調査費用補償特約が入っているかも確認して管理会社に調査依頼、修理見積を依頼して保険申請も併せて依頼する専有部の生活に支障をきたす場合は、迅速に対応を依頼する必要があります。
対応が遅いと理事長、理事会が批判されます。
8.規約違反、有害行為への対応管理委託契約書(第11条)有害行為の中止要求として依頼しましょう。区分所有者、住民間のトラブルが背景にある場合は理事長が慎重に状況を確認してから、管理会社をうまく使って依頼するようにしましょう。
9.清掃業務の質が低い仕様書で業務内容を確認する。仕様書に業務内容が含まれていない場合は、仕様書に追加してもらう。それでもやってもらえない場合は担当者を変えてもらう。
10.大規模修繕工事の見積が高い、妥当がどうかわからない。そもそも大規模修繕工事は監理委託契約書外の業務です。
設計書(工事仕様書・見積明細)をもとに管理組合から工事会社に直接見積もり依頼すると妥当な工事金額がわかります。修繕委員会をつくって協力者を増やすのも良いでしょう。
工事実施の1年前の総会総会で、管理会社に設計書(工事仕様書・見積明細)の有償作成業務を予算化して、設計書をつくってもらい管理組合として管理会社を経由せずに工事会社から見積もりをとりましょう。

このように管理会社の対応が悪い場合は、管理組合側も実施すべきことを整理して対応を考えて、管理会社にも改善依頼していきます。

管理会社への依頼はなるべく理事長経由で、それでもフロントの対応が悪い場合は、その上司や支店長に冷静にエスカレーションする必要があります。

それでも改善できないようなら管理会社の変更を検討も併せて実施しましょう。

まとめ

  • 管理会社を変更している管理組合は、2018年国交省アンケートによれば、わずか21%です。73%の管理組合は同じ管理会社とつきあっていることになります。
  • 国交省のマンション標準管理委託契約書に基づく管理会社業務内容を表1にまとめました。契約書に含まれる内容であれば管理会社はやる義務があり、契約書に含まれていなければ対応する義務はありません。
  • 契約書に含まれていない内容で管理会社に依頼したいことがあれば、次回の通常総会までに、契約書の変更を依頼して契約書の範囲に入れて依頼して少しずつ管理会社との関係を良くしていきましょう。
  • 大規模修繕工事など大きな工事に関する業務は設計も工事も管理委託契約書に含まれていません。工事実施年の1年前の通常総会で設計書(工事仕様書・設計明細)作成を有償で依頼して、見積もりを取ると良いでしょう。

以上

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