分譲マンションの管理費妥当性について

分譲マンションの管理費にはスタンダードのようなものはありません。
物件や管理会社によってかなり差異があります。管理費は分譲時、分譲会社が設定した価格で始まり、以後は管理組合総会で適切な金額に変更できますが、変更なしで高い管理費を疑いもなくは払い続けている管理組合も多いです。同じく分譲会社が設定する修繕積立金は、適正価格の1/3くらいに設定されて段階的に値上げされていくのに対して、管理費の多くは管理委託料として、分譲会社の子会社である管理会社に支払いその利益になるため、高めに設定されています。


今回は、国交省の平成30年度マンション総合調査結果(平成31年4月26日公表)  2.管理組合向け調査の結果(PDF)の管理費に関するアンケートを分析して、管理費の妥当性について考えてみます。

分譲マンションの管理費とは何か?

分譲マンションの管理費は、多くのオーナーは賃貸の家賃くらいの感覚で払っています。そして、管理費と修繕積立金それぞれが何を意味しているかよくわからず、両方の和を管理費と呼んでいる人もいます。

管理費は、国交省の標準管理規約にも説明がありますが、マンション管理会社と分譲マンション管理組合とで締結する管理委託契約書のひな型である標準管理委託契約書から紐解くとわかりやすいです。一言で言えば、マンションの維持修繕のために日常的に発生する費用が、管理費から支払われます。

多くのマンションでは、管理委託料として、管理費のうち50%から70%が支払われます。

国交省の標準管理委託契約書の第3条と、その内訳の別表1,2,3,4,5をまとめると表1のように整理できます。

表1 標準管理委託契約書記載の管理委託業務の内訳

1.事務管理業務
 1.1 基幹事務(1)管理組合の合計の収入および支出の調定収支予算の素案の作成
収支決算書の素案の作成
収支状況の報告
(2)出納管理費、修繕積立金、専用使用料の徴収
同滞納者に対する督促
通帳等の保管
マンションの経費(共用電気、水道代、組合が直接発注した工事費など)の支払い
マンションの帳簿管理
(3)マンションの維持、修繕に関する企画または実施の調整
1.2 基幹事務以外の事務管理業務(1)理事会支援業務組合員名簿の整備
理事会の開催、運営支援
管理組合の契約事務の処理(火災保険契約、マンション内の駐車場の使用契約などの事務)
(2)総会支援業務
(3)その他各種点検、検査等に基づく助言
各種検査等の報告、届出の補助
図書の保管(マンションの事務所で設計図書、標準規約、総会議案・議事録など)
2.管理員業務マンション規模によって週3回3時間から、週7日まで
3.清掃業務(1)日常清掃小マンションは管理員と兼任、規模によって
具体的に清掃方法、頻度を仕様書として定めて実施
(2)特別清掃高圧洗浄、ワックス仕上げなど年数回の清掃、別途方法、頻度を定めて実施
4.建物・設備管理業務(1)建物点検外観目視
建築基準法第12条1項 特定建築物点検調査
建築基準法第12条3項 特定建築物の建築設備等定期検査
(2)エレベータ設備
(3)給水設備定期清掃、水質検査
(4)浄化槽、排水設備
(5)電気設備
(6)消防用設備等消火設備、警報設備、避難設備、消防用水、消防活動上必要な施設
(7)機械式駐車場設備外観目視・定期保守
5.宅地建物取引業者等の求めに応じて開示する事項専有部の売却希望者がいる場合、媒介を依頼した宅地建物取引業者に購入希望者が問い合わせした場合に文書を提供する

上記ですべてが、網羅されているかと言うと明示されていないものもあります。専有部の排水管清掃、植栽のメンテナンス、共用部の機器の遠隔監視ステム(警備会社の駆けつけ一次対応含む)、共用部の24時間電話対応などの業務も多くが管理会社の委託契約書にはあります。言うまでもありませんが設備がない場合は、対象から外れます。

小修繕費といって、マンション内の共用部分のちょっとした修繕も管理費から割り当てられます。

これらの大部分は、マンション管理会社に委託しているマンションがほとんどですが、古い小規模マンションでは自主管理でがんばっていたり、部分委託で一部の業務は管理組合で実施しているマンションもあります。

最近のタワマンなどの高級マンションにあるフィットネス施設や店舗の維持費、郊外型大型マンションの駅までの定期バスなどの運航費なども支出も管理費からの支出になります。定常的な支出はすべて管理費から充当されると理解して良いです。

国交省管理組合向けアンケートの管理費

標準管理規約の第10条の共有持分に記載がありますが、共用部は区分所有者の持分割合は、専有部の床面積の割合によることとするとされています。
つまり、専有部の床面積m2当たりの面積に対して、一定の管理費が課せられており、占有部の面積によって異なる金額を支払います。

国交省が2018年に実施した平成30年度マンション総合調査結果(平成31年4月26日公表)の2.管理組合向け調査の結果から186ページの専有部m2あたりの管理費金額を国交省をグラフにまとめました。

図1.マンション戸数別 管理費収入(円)/月・専有部m2あたり

こちら、30世帯以下は、170円/m2以上と比較的高いですが、31世帯以上で安くなっていきます。30世帯以下のマンションでは、管理員費と清掃費の占める割合が高く人件費が大きな比率を占めます。
週3日3時間でも、税込み月額7万円前後、週4日3時間前後だと月額9万円程度になります。これらを、25世帯で割ると、2,800円、3,600円となりますが、35世帯で割ると、2571円、2000円と、世帯ごとで1200円~1600程度の差が出ますので、専有部が60m2であれば、20-27円の差になります。
さらにエレベータがあるかないか、メーカー系、独立系にもよりますが小規模でエレベータ付きでフルメンテナンス契約で委託していると、月額50,000円支払っているとすると、25世帯では、2,000円、35世帯では1,428円になりますが、専有部が60m2であれば、10円程度の差がでます。20-30戸と、21-30戸で30円程度の差が出るのは理解できます。
規模が大きくなっても、管理費が下がらないのは、消防設備など点検する設備が増えていくのと、規模が大きくなると清掃が、管理人ではカバーできない範囲となり、管理員と清掃員が別になり、さらに管理員の出勤日も週5日、6日、7日と増やしコンシュルジュがつくなどのサービスが提案されます。新築当初からそのようなサービスを受けていれば管理組合が強い意志を持っていなければ、削減していく話にはならないものなのだと思います。

図2.単棟型マンション階数別 管理費収入(円)/月・専有部m2あたり

次に、階数別の管理費を見てみます。
3階建て以下が安いのは、エレベータがなくエレベータの保守費がないことが大きいと思いますが、40円の差が出ているのは少し大きい差が大きいように思います。4-5階と比べて6-10階になると住民の数が増えるため管理費が下がると予想されます。

図3.マンション管理費 地域別 管理費収入(円)/月・専有部m2あたり

地域別の管理費を見ています。関東が、174円/月で一番高いです。最低賃金が高いので、一番高くなるのは理解できます。
最低賃金が900円台と安くない、大阪や愛知を含む、近畿や中部が九州や東北より安いのは、お金に厳しい風土が影響しているでしょうか?

都内地域別マンション管理費

さらに都内マンション管理費格差があるかどうかを、世田谷区、小平市、青梅市の世帯数20-30世帯に、築20年以上のマンションに絞って見てみました。土地の価格は世田谷は路線価で27-30万円/m2、小平市は15-20万円/m2、青梅市が10-15万円/m2くらいと差があるので、マンションの価格もだいぶ異なります。管理費や修繕積立金はマンションマーケットで調べました。

表2 都内エリア別管理費、修繕積立金 (世帯数20-30、築20年以上)

世田谷管理会社築年数戸数階数EL管理費
/m2月
修繕積立金/m2月
A1デべ系1981233なし217311
A2デべ系2002235あり182252
A3デべ系1986243なし204256
A4デべ系1983287あり290270
A5デべ系2000304あり171256
平均213269
小平市
B1独立系1983214なし173200
B2独立系2003235あり171321
B3デべ系1991263なし219332
B4独立系1997284あり185213
B5独立系1987285あり256248
平均200263
青梅市
C1地場系2001234あり14186
C2デべ系1988255あり203166
C3独立系2008268あり212235
C4デべ系1996297あり285240
C5建設系1990306あり275218
平均223189

都内の管理費にも格差があり、区部は高いのかと調査を始めましたが、結果はそうでもなかったです。世帯数を21-30世帯、築年数20年以上で中古物件を探して比較してみました。サンプルが5つなので、なんとも母数が少ないですが、国交省の全国アンケートの関東平均の174円よりも高く世田谷、小平市、青梅市で213円、200円、223円でした。これは、20-30世帯という管理費が高くなる小規模マンションに絞って調査したことが原因の一つです。むしろ青梅市が一番管理費が高くて意外でした。なお、修繕積立金は、世田谷、小平市、青梅市で269円、263円、189円でした。都内であれば、地域差はあまりなく、地域的な差よりもマンションごとに初期に定めた管理費の基準がまちまちであるため差異が大きくと思われます。さらに管理組合がどれほど努力しているかどうかにもよります。

適正なマンション管理費の算出方法

適切な管理費の算出方法を簡単にまとめてみます。

表3 管理費例(エレベータあり、機械式駐車場なし、30世帯、平均65m4、5階建て、直結増圧給水、週4日3時間管理員兼清掃員として)

標準管理規約
契約書項目
支出項目戸数・規模に
比例要素
支出金額(月額)税抜き
1と5事務管理業務(1戸あたり、30世帯規模だと月額1,500円として)45,000円
2と32と3(※).清掃員業務(3時間/回・週4回・月4.2週、1,500円/時間として)75,600円
特別清掃(年3回定期清掃、高圧洗浄 1回50,000円として) 12,500円
4(1)外観目視点検(年1回)0円
建設設備点検費5,000円
特定建築物定期調査費5,000円
4(2)エレベータ点検(月額、フルメンテナンス)50,000円
4(3)給水設備点検(増圧ポンプ点検 年1回、48,000円として)4,000円
4(6)消防設備点検費(月額)12,500円
その他排水管清掃(1戸 6,000円、年1回として)15,000円
遠隔監視システム(警備会社の駆けつけ一次対応含む)9,000円
共用部24時間コールセンター(30世帯規模だと100円/月・人)3,000円
合計(税別→税込み)236,600円 → 260,260円(税込み)
※)小規模マンションで、管理員業務と清掃員業務が1名、週4回で実施する契約

表3が管理会社への月額管理委託料の例になります。金額は参考程度に見てください。

管理委託料が管理費の50%から70%程度として、管理費収入を計算すると、371,800円 ~ 520,520円/月なります。30世帯で割ると、12,393円~17,350円/戸・月となります。65m2だとすると、190円~266/m2・月と月額管理料が決まっていきます。管理委託料以外の費用で、共用部の電気代・水道代、火災保険料、植栽メンテナンス、小修繕費、共用部火災保険料などは、管理会社には支払い業務はお願いするのですが管理委託料とは別予算として30%~50%で予算を確保する必要があります。共用部の電気代・水道代、火災保険料、植栽メンテナンス、共用部火災保険料がすべてわかっているならば、管理料収入と比較して小修繕費がいくら確保できるかを考慮して決定するのが良いでしょう。小修繕費として、年50万円は小マンションでも確保したいところです。

戸数・規模に比例要素に〇または△がついているのが、戸数・規模が増えると比例して大きくなる要素がある項目です。それ以外の項目も戸数・規模が増えれば、対応する工数が増えるので見積額は増えるとは思いますが、大きな上昇にはならないはずです。

事務管理手数料は、管理会社のフロントマンの人件費ほか管理会社の利益になる部分です。管理会社によって差が出ます。値段だけで管理会社を選ぶと理事会での議案の準備が不十分だったり、標準管理規約に合わせた修正すべき提案がされなかったり、必要な修繕に適切なアドバイスが出来なかったり、理事会の議事録が丁寧に書かれていないなど、不備が発生して管理組合の理事の仕事が増える可能性があります。

管理会社を変更する際は、表1の標準管理委託契約書を見ながらどのようなサービスが含まれているかよくヒアリングする必要があります。事務管理費の範囲で大規模修繕工事など工事の際の仕様案まで提案してくれる会社もあったりする場合もあります。管理会社を変更する際は、大規模修繕工事の仕様書作りについて、有料なのか、無料なのか確認した方がよいです。工事の元請けをしない管理会社の多くは、工事関係の提案は仕様作成から別料金になる場合が多いです。

大規模修繕工事の見積もりをとるため管理委託契約書には含まれていませんが、無償でつくってくれる会社もあります。有償でつくってくれる会社もあります。

マンション管理会社とうまくつき合い大規模修繕工事を適正価格で実施する

住民間の騒音トラブル、ペットのトラブル対応など管理委託契約書に含まれていないことまで住民が管理会社依頼すると、管理会社に負担がかかり、将来的には値上げを要求されう場合もあり得ます。またクレーマ組合員、クレーマ理事がいる場合も、契約継続を断られる場合もあります。

管理員費は、1,500円/時間で計算しても、社会保険などもあるため、実際には本人に支払う報酬は東京都の最低賃金1,013円(2021年3月現在)+α程度になります。

マンション規模が大きくなると清掃員と管理員は別の人になります。規模が大きくなると増えていきます。清掃員は金額が大きい場合は、清掃専門会社に管理組合から直接発注することで価格を下げることも考えられます。管理員業務は、出勤日数や時間を短くすることで価格を下げることも、長くしてサービスをあげることで価格をあげることも可能です。表3では年3回の定期清掃も入れましたが、小規模マンションでは予算の関係で実施しないマンションもあります。

表3の例だと遠隔監視システムなども入れていますが、ほとんど通報されることもなく警備員が来ることのメリットもないため外してしまっている例もあります。

なお今後も、管理人費、清掃費、事務管理費などは労働人口が減少していく中で、最低賃金、社会保険料の上昇に伴い、値上がりする前提で管理費を考えておく必要があるでしょう。

小規模マンションで、管理会社の値上げに応じられない場合の解決方法は、管理員業務、清掃業務を住民が行うことで解決する方法が現実解になります。誰もが出来ることではないので報酬額を決めてやっていただく住民にお支払いして清掃するのが良いでしょう。戸建てなら庭の清掃を住民がするのが普通なので何も珍しいことではないと思いますが、いかがですか?

労働人口減少、超高齢化社会の日本のしわ寄せは、こんな形で分譲マンションの管理にも来る日が近づいています。

まとめ

  • 管理費について、標準管理委託契約書をもとに何に使われているのかを的ました。
  • 国交省の2018年度実施のマンションアンケート調査から使用料を除く管理費は専有部の面積あたり148円/m2程度であることがわかりました。管理費は20世帯以下のマンションでは少し高めになり、エレベータがつくが戸数が少なめの4,5階のマンションは少し高めでした。エリア別には関東の管理費がもっとも高い。
  • 都内のマンションの管理費について、母数は5とすくないがデータを集めて比較すると地域間格差はあまりなく、むしろ郊外の方が高い傾向があった。地域的な差よりもマンションごとに初期に定めた管理費の基準がまちまちであるため差異が大きい。
  • マンション管理費の算出例を紹介しました。管理会社を変える場合、標準管理委託契約書をまとめた表1の形で、見積もりをチェックすると意味がわかりやすいです。規模・戸数に比例して大きくなる要素が何かを考えてその金額の妥当性を考えると良いでしょう。

以上

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