大規模修繕工事、元請けをする管理会社、元請けしない管理会社、どちらが良いの?

大規模修繕工事の工事会社選定業務を、管理会社に任せることは出来ますか?

工事部門を持っていて元請けをする管理会社に、工事会社選定を依頼することは、民法108条でで無効とされている自己契約に近い行為を管理会社に依頼することになります。工事の元請けをする管理会社には依頼をしてはいけないということになります。

管理組合が大規模修繕工事をする際でも工事会社を選定する際の意思は、「安くて品質の高い会社」に依頼したいに集約されます。

しかし管理会社が元請けをする会社だとすると、本来、管理組合のため安くて品質の高い会社を選びたいという意思を尊重して支援しなければいけない立場なのですが、管理会社は「工事を受注して利益を出したい」と意思を持っているため、管理組合の希望と矛盾します。そのため管理会社のフロントマンは管理組合の希望にあう提案することは出来ないのです。

管理組合が自ら見積もりをとり工事会社選定をして意思表示をしなければ、管理会社以外の会社に大規模修繕工事を依頼して、「安くて品質の高い会社」を選択することは出来ません。

手間はかかります。

もう一つの選択は、工事を請け負わないポリシーをもった管理会社と管理委託契約して、その管理会社に通常は有償で業務をお願いするという選択があります。

今回のブログでは、大規模修繕工事での工事会社選定について、元請けをする管理会社と元請けをしない管理会社どちらが望ましいのか、民法の利益相反行為の解説を加えながら、考えていきます。

最後に管理会社別の「工事の元請けをする管理会社」「工事の元請けをしない管理会社」の一覧をつくっています。

民法の代理行為、自己契約・双方代理は?

代理行為の要件及び効果)第99条 
1 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

代理とは、本人以外の人(代理人)が、本人に代わって意思表示(法律行為)をし、あるいは意思表示を受領して、その効果が本人に帰属するという法的な仕組みのことを、代理といいます。(引用:弁護士 雨のち晴れブログ

具体的には本人に代わって契約書に署名捺印するような行為が民法上の「代理」行為です。

管理組合の立場でアドバイスする管理会社は「代理」ではないですが、管理会社がおぜん立てして、管理組合が管理会社の提案にしたがって、そのまま契約書に捺印する場合は、管理会社の役割は民法でいう「代理」に近いです。

ところで民法では、108条1項で、同一の法律行為について本人と相手方の両方の代理人をすることは無効という扱いになります。やってはいけない行為ということです。

(自己契約及び双方代理等)第108条
1 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
2 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

管理組合が工事会社を選定する際の意思は、「安くて品質の高い会社」で、管理会社の工事部門は、「工事を受注して利益を増やしたい」と考えています。管理組合を担当している管理会社の窓口は利益の相反する二者を「代理」する立場になります。

管理組合の代理人のような立場である管理会社が、自社の工事部門の価格を妥当なものとして、管理組合に提案することは自己契約に近いのです。

しかし108条の1項の、「本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない」とありますので、本人(管理組合)が、工事会社の選定を、管理会社(代理人)に依頼(許諾)してしまえば、自己契約にあたらなくなります。

元請けをする管理会社に、大規模修繕工事の管理会社の選定を全面的に依頼したら、管理組合にとって「安くて品質の高い会社」を選択することは出来ません。どのような対策が考えられるでしょうか?

元請けをする工事部門を持つ管理会社の利益相反行為

図2.元請けをする管理会社に工事会社選定を依頼すると、管理会社が選択される

大規模修繕工事を安くするためには、適切な仕様に基づいて設計するべきですが、入札で競争の原理を働かせることがポイントです。
ところが、管理組合が、複数の会社に見積もりを依頼してくださいと頼んでも、管理会社で見積書が集約されるので、工事会社に対して、どのような交渉も出来てしまうのです。

例えば図2では、一番良い2,000万円の見積もりを出してきたA社を管理会社の下請けにしてしまい、A社の2,000万円の見積は提出せずに、自社の見積(A社の見積に20%、400万円の利益を載せた)2,400万円として、工事会社B社、工事会社C社と比較して提出します。管理会社の見積が最も安いと説明されれば、管理会社の見積が安く見えるため、管理組合には、管理会社が一番努力してくれたというように見えます。

工事会社選定に管理会社に発生する必要な工数を載せることは問題ありませんが、現実には、管理会社が工事会社Aに丸投げで、差額分を自社の利益にすることが出来ます。

管理会社は適正な利益を載せて提案していると説明しますが、透明性はありません。

競合相手の入札価格を知っている管理会社が工事会社の選定行為を行うという事は、管理会社に対してどのような説明も出来てしまうのです。

利益相反取引に厳格さを求めていない日本の民法が、引き起こす問題と言えます。

図3.元請けをする管理会社以外に大規模修繕工事専門会社から直接見積もりをとれば「価格を抑えて品質の高い工事会社」を選定可能

管理組合が価格を抑えて品質の高い工事会社を選定するためには、設計書(工事仕様書・設計明細書)を管理会社から有償・無償で提供してもらって、自ら工事会社から見積もりをとるほか方法以外はありません。その労力も割けない場合は、第三者専門家に見積もり取得の手伝いをしてもらうことを検討しても良いでしょう。

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元請けをする工事部門を持たない管理会社には工事会社選定は依頼できるか?

図4. 管理会社が元請けしない場合は、管理会社に工事会社選定の依頼可能

工事部門を持たない会社は管理組合と工事会社の間で、利益相反にならないという意味で、「ぼったくり見積もり」になる可能性は低いです。このような管理会社への依頼は、設計費(工事仕様書、設計明細書)作成、業者選定補助、工事監理などの業務費が別途発生します。

何に費用が発生したのかの透明性が高いことは管理組合にとってメリットと言えます。

但し、管理会社に全面的に依存してしまうのは管理会社が工事会社からバックマージンをとって価格を釣り上げる可能性を否定できません。管理会社が作成した設計書(工事仕様書・設計明細書)を使って、管理組合が工事会社から直接見積もりを取れば、管理会社による工事会社に対するバックマージ要求など不正行為を抑制することが出来ます。
管理組合が直接とった見積もりは、管理会社の見積が出そろった時点で、管理会社の比較表に追加を依頼すればやってもらえます。管理会社に業者選定補助費用を負担していますので、作業依頼して全く問題ありません。

設計費(工事仕様書、設計明細書)、業者選定補助、工事監理などの費用負担はありますが、工事部門を持たない管理会社の方が透明性が高い工事会社選定ができることになります。なお、工事監理に関しては、必ずしも管理会社に依頼する必要はありませんので、交渉して外せるのならば、外して大規模修繕工事専門会社に責任施工で依頼する進め方もあります。

中小マンションでは、工事監理の費用の割合が大きいため設計監理方式では全体の費用が上がってしまいます。管理会社設計・大規模修繕工事専門会社責任施工方式がコストを削減できる方法です。

中小マンションの大規模修繕工事 設計監理方式を採用すべきでない理由

元請けをする管理会社、元請けをしない管理会社どちらが良いの?

表1 工事会社選定を管理会社に依頼する場合の比較(元請けをする会社と元請けをしない会社)

工事会社選定を依頼すると元請けをする管理会社元請けをしない管理会社
利益相反×該当する〇該当しない
設計費(工事仕様書・設計明細書)、工事会社選定補助、工事監理)〇有償・無償で設計書を入手(交渉必要)×通常は有償で別途発生
工事金額× コスト高くなる可能性高い〇 コスト抑えられる可能性高い
透明性× 不透明〇 透明性高い可能性高い
対策管理組合で見積もりをとる管理組合で見積もりをとる

管理組合が見積もり取得や、工事会社選定業務をやる経験があり余力があるならば、元請けをする管理会社から、設計書(工事仕様書、設計明細書)だけ入手して、管理組合で見積もりをとって管理会社の提案と比較して工事をすすめるのが透明性をあげてコストを削減できる方法です。
管理組合が見積もり取得や、工事会社選定業務の経験や動く余力がなく、労力最小ですすめたいならば、工事部門を持たず、設計監理方式でサポートする管理会社に依頼するほうが、設計費(工事仕様書、設計明細書作成)、業者選定補助、工事監理が発生しますが透明性が高い工事会社選定ができます。

管理会社別の大規模修繕工事への対応

マンション管理会社のうち、マンション管理業協会の会員で、管理戸数が上位の管理会社の大規模修繕工事の対応状況について整理しました。管理戸数が多い順にまとめています。

表3 マンション管理会社、大規模修繕工事の元請け可否(2021年2月調査)

大規模修繕工事元請け補足
日本ハウズイング(株)する
(株)大京アステージする
(株)長谷工コミュニティする
(株)東急コミュニティする
三菱地所コミュニティ(株)する元請け、設計・監理、設計監理+保証の3パターンの選択可能
大和ライフネクスト(株)しない設計・監理方式のみ対応
三井不動産レジデンシャルサービス(株)不明
(株)合人社計画研究所する
住友不動産建物サービス(株)不明親会社物件のマンション管理中心
野村不動産パートナーズ(株)不明Re:Premiumという大規模修繕周期を18年に1回に実施する提案しているので、自社で元請けするものと思われる
日本総合住生活(株)しない設計・監理方式
コミュニティワン(株)する
(株)穴吹ハウジングサービス不明グループ会社のあなぶき建設工業が大規模修繕工事実施するとしている。
(株)穴吹コミュニティしないコンサルタント+設計・監理方式で支援
伊藤忠アーバンコミュニティ(株)する自身が元請けとなること推奨しつつ、設計・監理方式にも対応
グローバルコミュニティ株式会社しないコンサルタント+設計・監理方式で支援
(株)東京建物アメニティサポートする元請け、設計・監理、総合請負(設計監理+保証)の3パターン提案
近鉄住宅管理(株)する元請け、設計・監理、総合請負(設計監理+保証)の3パターン提案
ナイスコミュニティー(株)するコンサルタント+設計・監理方式でも支援可能
大成有楽不動産(株)する
(株)レーベンコミュニティ推奨しない設計・監理方式を推奨
日本管財住宅管理しない設計・監理方式
(株)日鉄コミュニティ不明
(株)ライフポート西洋しない設計・監理方式
日本住宅管理(株)しない設計・監理方式
関電コミュニティ(株)不明
明和管理(株)しない設計・監理方式
ホームライフ管理(株)する
エムエムエスマンションマネージメントサービス(株)しない設計・監理方式
住商建物(株)しない設計・監理方式
(株)阪急阪神ハウジングサポートしない
三井不動産レジデンシャルサービス関西(株)しない設計・監理方式
日神管財(株)不明
伏見管理サービス(株)しない設計・監理方式
互光建物管理(株)しない設計・監理方式
ユニオン・シティサービス(株)する
双日総合管理しない設計・監理方式
エスリード建物管理(株)しない設計・監理方式
マリモコミュニティ(株)不明

改めて整理すると、大規模修繕工事の元請けをする会社は、管理戸数の多い規模が大きい会社が多いです。表3の情報は2021年2月現在の調査状況ですが、管理会社変更を考えている方は、直接管理会社に確認してご自身ご判断ください。

大規模修繕工事を管理会社経由で依頼する必要性は全くありません。大規模修繕工事専門会社に直接依頼することで、工事費を下げて、耐久性の優れた材料を使って保証期間やアフター点検を長くすることを考えたほうがメリットが大きいです。

マンション管理会社とうまくつき合い大規模修繕工事を適正価格で実施する

設計・監理方式と責任施工方式(プロポーザル方式と言う人もいる)って何だろう?という方はこちらをご覧ください。

中小マンションの大規模修繕工事 設計監理方式を採用すべきでない理由

まとめ

  • 大規模修繕工事の元請けをする管理会社に工事会社選定を依頼することは、民法で無効とされる自己契約に近い行為となり、管理会社の提案を受け入れる選択をすることになり、コストが高くなる可能性が高いです。
  • 大規模修繕工事の元請けをする管理会社の場合は、コストを下げたいのならば、管理会社から設計書(工事仕様書・設計明細)を有償・無償で入手して管理組合から外部の工事会社からも見積もりを取って、管理会社の見積と比較して進めましょう。
  • 大規模修繕工事の元請けをしない管理会社の場合は、管理組合の立場で工事会社選定を実施してくれますが、設計、工事会社選定補助、工事監理などの費用が発生します。
  • 管理組合が、自ら外部の大規模修繕工事会社から見積もりをとる余力があれば、設計書(工事仕様書・設計明細)を管理会社から入手して大規模修繕工事の元請けをする管理会社の方が安く工事を進めることが出来ます管理組合に余力がない場合は、大規模修繕工事の元請けをしない管理会社に設計、工事会社選定補助、工事監理を有償で依頼して、透明性の高い工事会社選定することが有効です。
  • マンション管理業協会の会員で、管理戸数が上位の管理会社の大規模修繕工事の対応状況を整理しています。管理戸数が多い管理会社は大規模修繕工事元請けをする会社が多いです。

マンション管理会社サーチ

※マンション管理会社を探している方向けののマンション管理会社を検索ツールです。
お住いのマンションの管理費、修繕積立金、戸数を入力するだけで、ご提案してくれそうな管理会社を検索してくれます。現在は首都圏に住んでいる方が対象です。