大規模修繕工事(シーリング)見積書チェックポイント、その5

マンションは、共同住宅で区分所有者(各戸オーナー)のみなさんの財産です。限られた時間の中で、ボランティアの範囲で活動されている管理組合が最小限の努力で、大規模修繕工事を成功させるためには、設計書(工事仕様書、設計明細書)がとても重要です。

設計書(工事仕様書、設計明細書)があれば、マンション管理組合が直接、大規模修繕工事の会社に見積もりを依頼出来ます。最低2社、出来れば5-6社に声をかければ、競争の原理が働き、適正価格での提案を得ることが出来て、大規模修繕工事費を20%下げる可能性もあります。

設計明細書に単価を入れたものが見積書です。見積書のチェックポイントについて解説していきます。

その5は、シーリング工事についてです。

大規模修繕工事におけるシーリング工事は、ドア・窓などの開口部シール、建目地/打ち継ぎ目地と呼ばれる建物の階と階の間のシーリング、鉄庇の継ぎ目、鉄部のガラリ、専有部のエアコン廻り、など、異なる物質がつながっている部分がシーリングの対象になります。

建物の材質が異なるものが接する部分について充填して目的は防水ですが、気密性があり弾性もあるので、振動の吸収などの役割もあります。防水性能に直結する重要な工事になります。防水性能にも直結しますので、仕様作成段階からぬけがないように工事範囲を確認すべきです。

設計段階では、シーリングする場所は図面だけでは把握しきれない部分もあります。新築時はシーリングしていなくても建物の劣化状況からシーリングすべき箇所もあります。正確な見積もりは建物を見て実施で、さらに言うと、足場を組んで工事が始まってから、シーリングすべき箇所が見つかることもしばしばあります。この分は、実物を見て判断して、予備費で実施しましょう。

マンション計画修繕施工協会(MSK)が公開している 標準見積書建築編令和2年度4月改訂版(以後MSK標準見積書)では、以下の項目で見積もりされています。

1.仮設工事 
1-1.共通仮設
1-2.直接仮設
2.下地補修工事 
2-1.躯体補修工事
2-2.タイル補修工事
2-3.洗浄工事
3.塗装工事
3-1.壁面関係塗装工事
3-2.鉄部関係塗装工事
4.防水工事 
4-1.屋上防水工事
4-2.ベランダ防水工事
4-3.廊下防水工事
5.シーリング工事 <=その5では、シーリング工事の解説をします。
6.諸経費

大規模修繕工事におけるシーリング工事の割合について

国交省が2018年5月に公開したマンションの大規模修繕工事に関する実態調査には、シーリング工事は含まれていません。おそらく外壁塗装や外壁タイルやその他に分類していると思われます。
通常はシーリングは全体の10%程度かそれ以下になります。

シーリング工事、手順

工事は、シール材を入れる幅と奥行きで見積もられます。15mm x 10mm などです。種類はたくさんありますが、変性シリコン系と、ウレタン系が良く使われるものです。ホームセンターで販売しているシリコンは、1成分で開封して長い時間が経過すると固まってしまいます。大規模修繕工事の開口部など防水性が求められるところは、二成分を混ぜて硬化させるものが利用されます。

古いシールをはがす
下の動画では12年前のシールですがしっかりついています
プライマー塗布
プライマー塗布後、1時間以上あけてからシーリング材を打ちます
シーリング
マスキングテープして下の動画ではシーリング材は、変性シリコン(二成分)
ヘラ抑え
この作業が熟練の技が必要

シーリング工事見積もり例

MSKの標準見積書建築編令和2年度4月改訂版では、外壁目地シーリング打ち替え、サッシ廻りシーリング打ち替え、化粧壁廻りシーリング打ち替え、EXPシーリング打ち替えとありますが、見積もり例では、化粧壁や、EXPジョイントカバーを使用していないため、外壁目地と開口部(サッシ、ドア廻り)中心に例を作成しました。

見積は、シーリング材を充填する幅と深さと長さ、材料で決まります。
この例では、タイル周りは、変性シリコン、モルタル吹付塗装ではウレタン系で見積もっています。

表1 シーリング工事見積例(外壁目地)(4階建て、25世帯想定マンション)

項目仕様 (幅㎜x深さ㎜)数量単位単価金額備考
11-2F外壁目地 20 x 10135m850114,750
22F-3F外壁目地 20 x 10135m850114,750
33F-4F外壁目地 20 x 10110m85093,500
44F-屋上外壁目地 20 x 1090m85076,500
外壁目地合計470m小計399,500
5玄関ドア5.8m @25世帯 10 x 10145m800116,000
6MBox廻り5m @25世帯 10 x 10125m800100,000
地下扉6.2m 15 x 106.2m8205,084
8共用トイレ5.2m 10 x 105.2m8004,160
9管理人室5.8m 10 x 105.8m8004,640
10西サッシ1.7×1.8 7m@25世帯 15×10175m820143,500
11東サッシ1.6×1.8 6.8m@25世帯 15×10170m820139,400
121.6×0.9 5m@3世帯 15×10 15m82012,300
13東窓11.4×0.9 4.6m@20部屋 15×1092m82075,440
14東窓21.2×0.8 4m@15部屋 15×1060m82049,200
15カスタム窓1.5×0.9 4.8m@7部屋 15×1033.682027,552
16西出窓1.8 x 1.2 6m@25部屋 15×10150m820123,000
17小窓0.6 x 0.6 2.4m@2か所 15×104.8m8203,936
18排気ガラリ0.7 x 0.6 2.6m@2か所 15×10 5.2m8204,264
19埋込灯0.3 x 0.3 0.6m@32カ所 10×2019.2m80015,360
開口部1,012小計823,936

価格は参考程度に見てください。

積算資料ポケット版マンション修繕編(一般社団法人 経済調査会)2019/2020では、変性シリコン2成分系の10×10の価格は、1,000円/mでした。表1より高めですね。

見積り項目を確認する際の注意点としては、項目が抜けていないか確認することです。見積もりによっては、外壁目地一式470mや、開口部1式で、1,012mのような明細項目の場合もあります。設計者が意図的に管理組合にわからなくしていて、本当は20%ほど少ない場合もあるかもしれません。見積にはマージンをとっておきたいと考えるからです。

では、表1のように細かく設定するのと見えるかできるので、工事漏れはなくなりますが、項目が抜けていた場合は、工事発注後に追加工事を求められます。大きな項目が抜けていなければ、多少の追加工事は予備費で対応できるので問題はありません。透明性、フェアという意味では、細かく明細項目を入れている見積書の方が良いです。

 

表2 シーリング工事見積例(タイルと吹付塗装の接続部の笠木シーリング)

項目仕様 (幅㎜x深さ㎜)数量単位単価金額備考
1屋上天端笠木外周 108m  15 x 10108m82088,560
2Rバルコニー笠木外周 26m @2部屋 15 x 1052m82042,640
3バルコニー笠木外周 9m @5部屋 15 x 1045m82093,500
4バルコニー笠木外周 7m @18部屋 15 x 10126m82076,500
5階段笠木手摺 21m@3か所、17m@1か所 15 x 1080m820 65,600
笠木防水411小計366,800

屋上、バルコニー、階段のモルタル仕上げの笠木部分と、外壁タイル部分の防水の目的のシーリング工事です。

見積り項目を確認する際は、表2のようにその内訳がわかるようになっていることです。どこの工事を指しているのか、一つ一つがどの部分の工事をさしているのか理解していて、距離があっているかの確認することが大事です。

 

表3 その他のシーリング工事

項目仕様 (幅㎜x深さ㎜)数量単位単価金額備考
1階段鋼板屋根接合部 32m@4か所  15 x 1096m82078,720
2階段鋼板ゲート接合部 10m @4か所 15 x 1052m82042,640
3掲示板外周 3m @4か所 10 x 1012m8009,600
4郵便ポスト外周 5m @4か所 10 x 1020m80016,000
5非難ハッチ外周 3.2m@12か所 10 x 1038.4m800 30,720
6専有部室外口25か所25箇所60015,000
7排気口カバー75か所75箇所50037,500
その他シーリング小計230,180

鋼板製の屋根も接続部にはシーリングされているので注意が必要です。

その他のシーリングは、あらゆるところで使われており、見積もり時に見逃さないことが大事です。設計段階で漏れてしまった工事は、ゼロにすることは出来ないので、実際には工事会社が見積もり外の工事を発見した場合は、建物の防水性能の関わる部分は追加工事として対応した方が良いでしょう。

まとめ

  • 大規模修繕工事におけるシーリング工事は、打ち継ぎ目地、開口部など、建物の防水性能に直結する重要工事です。
  • シーリング材を充填する幅、奥行きと長さで見積もりされます。
  • 項目が多く、見逃しやすいですが、設計時にしっかり項目を確認する必要があります。

以上