大規模修繕工事(塗装)見積書チェックポイント、その3

マンションは、共同住宅で区分所有者(各戸オーナー)のみなさんの財産です。限られた時間の中で、ボランティアの範囲で活動されている管理組合が最小限の努力で、大規模修繕工事を成功させるためには、設計書(工事仕様書、設計明細書)がとても重要です。

設計書(工事仕様書、設計明細書)があれば、マンション管理組合が直接、大規模修繕工事の会社に見積もりを依頼出来ます。最低2社、出来れば5-6社に声をかければ、競争の原理が働き、適正価格での提案を得ることが出来て、大規模修繕工事費を20%下げる可能性もあります。

設計明細書に単価を入れたものが見積書です。見積書のチェックポイントについて解説していきます。

その3は、塗装工事についてです。

塗装は、説明の必要はない工事かもしれません。コンクリート面の塗装と、鉄部塗装、塩ビなどの樹脂塗装などがあります。コンクリート面である外壁、階段の内壁、階段やベランダなどの下地補修・清掃後の塗装です。鉄部塗装は玄関ドア枠、パイプシャフト扉、管理人室扉、配管のラッキング、マンホールなどあらゆる鉄部、塩ビなど樹脂の塗装などです。

塗装工事の見積書のチェックポイントしては、コンクリート面など面積を単位としている場合面積が盛られていないかをチェックすること、鉄部、塩ビ塗装については項目が多いので抜けていないことをチェックすることです。

マンション計画修繕施工協会(MSK)が公開している 標準見積書建築編令和2年度4月改訂版(以後MSK標準見積書)では、以下の項目で見積もりされています。

1.仮設工事 
1-1.共通仮設
1-2.直接仮設
2.下地補修工事 
2-1.躯体補修工事
2-2.タイル補修工事
2-3.洗浄工事
3.塗装工事<=その3では、塗装工事の解説をします。
3-1.壁面関係塗装工事
3-2.鉄部関係塗装工事
4.防水工事
4-1.屋上防水工事
4-2.ベランダ防水工事
4-3.廊下防水工事
5.シーリング工事
6.諸経費

大規模修繕工事における塗装の割合について

図1.  国交省2018年5月公開のマンション大規模修繕工事に関する実態調査の工事金額内訳、塗装について

国交省が2018年5月に公開したマンションの大規模修繕工事に関する実態調査によると、平均で外壁塗装の塗装を除いた部分と外壁タイルの和が、下地補修の割合になります。図1の左の円グラフでは外壁塗装が17.3%、鉄部塗装4.9%が相当するため、外壁の下地補修を除く必要がありますので、塗装工事比率の平均は両社の和は22.2%以下と言えます。

大規模修繕工事(下地補修)で説明した通り、目視(修理箇所の特定)→下地補修→洗浄→塗装のながれになりますが、コンクリート部分の外壁の塗装は、下地補修洗浄後に、下塗り、中塗り、上塗りの3回行われます。

鉄部塗装は、ケレン(下地の付着物や汚れを削り落とす)後に、下塗り(錆止め)、中塗り、上塗りとやはり3回塗ります。

塩ビ塗装は、ケレン(下地の付着物や汚れを削り落とす)、塗料を2度塗ります。

MSKの標準見積書建築編令和2年度4月改訂版では、1)壁面関係塗装工事、2)鉄製品塗装工事と2つが下地補修となっていますので、その3ではこの項目で解説します。

壁面関係塗装工事の見積

マンション計画修繕施工協会(MSK)が公開している明細はありません。

表1の例では、エントランスがない小さな外壁タイルのマンション、4階建て、25世帯の見積の例としとしています。

表1 壁面関係塗装(外壁塗装)

項目仕様数量単位単価金額備考
1廊下、バルコニー壁面、階段側面微弾性フィラー+水性シリコン2回塗り240m21,500360,000
2廊下天井、バルコニー天井、階段天井透湿性塗材2回塗り250m21,100275,000
3階段手摺天端無機防水系塗料90m1,00090,000
4外壁ブロック塀微弾性フィラー+水性シリコン2回塗り150m21,500225,000
小計950,000

金額は参考程度に見てください。まずは、見積もりというか仕様明細作成段階でのチェックポイントですが、廊下、バルコニー壁面、階段側面、廊下天井、バルコニー天井、階段天井が、下地補修の洗浄工程で説明したコンクリート面洗浄の面積と合っているか?について確認します。さらに、実測や竣工図面でそれぞれの面積を計算できればなおよいですが、そこまでやる管理組合は立派です。

管理会社または設計事務所にて、通常一級建築士が作成しますが、意図的に金額を膨らませることが出来るポイントですので、見積もりの面積の項目をつかって水増しをしていないかを確認するべきです。談合、バックマージン、価格交渉の際のバッファとして、設計者はなるべく見積もりに余裕を持っておきたいと考えるものです。

仕様に関しては、外壁では微弾性フィラー+水性シリコン2回塗りなどが、塗料の種類が豊富なので、かなり仕上げの種類によって異なりますが、むしろどのメーカーの塗料を使用するか工事仕様書の記載の内容を確認すると詳しくわかります。メーカーは、日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研など各メーカーが仕様を公開しています。

外壁・内壁塗装変色・白地と下地補修(漏水)については、5年、天井は3年(期間は案件によって異なる)などの保証がつきますが、大規模修繕工事会社、実際に工事を実施する協力会社、塗料メーカーの3社で捺印した保証書が出されます。メーカーは指定の工法で実施しないと保証されないので、メーカーの指定する仕様・工法が工事仕様書に記載されることになります。工事仕様書のチェックはメーカーの仕様をチェックすると良いでしょう。

図1の廊下、バルコニー壁面、階段側面の外壁塗料については、メーカーはエスケー化研で、下塗りは水性ソフトサーブSG、中塗り・上塗りは水性セラミシリコンを使用しましたが、インターネットで公開されているカタログを見ると、所要量が0.25~0.35kg/m2、刷毛ローラーで塗装する、単価が1,900円/m2、期待耐用年数が12~15年などがわかります。廊下、バルコニーの天井塗装については、エスケー化研ののノキフレッシュが使用されていますが、2度塗り、0.5~0.8kg/m2、ウールローラー、単価は、2,100円/m2などがわかります。これらの見積と比較すれば見積もりのチェックが出来ます。

なお積算資料ポケット版マンション修繕編(一般社団法人 経済調査会)2019/2020では、外壁の水性シリコン系2回塗りは、2,000円前後、天井は1,100円前後となっています。

図1. 壁面関係塗装(外壁塗装)

鉄製品塗装工事の見積

表2 鉄製品(鉄部)塗装工事

項目仕様数量単位単価金額備考
屋上、玄関、階段周り
1BS/CSアンテナTV台座ケレン・錆止め・アルミニウムペイント1箇所1,4001,400
2屋上階庇鉄板天井面ケレン・錆止め・ウレタン2回塗り30m21,50045,000
3階段各階排水ドレンフィルタータールエポキシ2回塗り8箇所7005,600
4各戸玄関扉枠(枠のみ)ケレン・錆止め・ウレタン2回塗り25箇所4,000100,000
5メータボックス扉(両面)と枠ケレン・錆止め・ウレタン2回塗り25箇所5,000125,000
6照明器具枠ケレン・錆止め・ウレタン2回塗り7箇所1,0007,000
284,000
1階外溝周り
1エントランスアーチケレン・錆止め・ウレタン2回塗り3箇所15,00045,000
2管理人室扉(両面)、ドア枠 900×2000同上1箇所5,6005,600
3地下出入り口扉(両面)、ドア枠 1200×2000同上1箇所9,0009,000
4地下室換気ガラリ 800 x 700同上2箇所2,5005,000
5散水栓蓋(230×330)タールエポキシ2回塗り1箇所1,5001,500
6水道メーター蓋(230x480)同上1箇所1,8001,800
7仕切弁蓋(160φ)同上1箇所1,5001,500
8雑排水マンホール(600φ)同上7箇所2,00014,000
9水道管保護ラッキングケレン・錆止め・ウレタン2回塗り42箇所60025,200
10雨どい塩ビ管ケレン・ウレタン2回塗り90m55049,500
158,100
地下室
1変電設備室扉 1600 x 2000ケレン・錆止め・ウレタン2回塗り1箇所9,0009,000
2分電盤 1500x1800同上1箇所7,0007,000
3制御盤 900x1100同上1箇所5,6005,600
4排気ダクトボックス 600×400ほか同上2箇所2,0004,000
5排気ダクト 300φ同上22m80017,600
6電気配線保護管パイプ80φ同上32m60019,200
7蛍光灯枠同上3箇所2,0006,000
68,400
バルコニー
1パーティションボードケレン・錆止め・ウレタン2回塗り11箇所3,80041,800
2排水ドレンフィルタータールエポキシ16箇所70011,200
3雨どい塩ビ管ケレン・ウレタン2回塗り45m55024,750
77,750
小計588,250

金額は参考程度に見てください。鉄製品(鉄部)塗装は、ひとつひとつの項目の塗装面積が小さいため単価も安く全体の金額は大きくはありません。鉄製品(鉄部)塗装の見積のチェックポイントは、塗装の対象が抜けていないかをチェックすることです。塗装できそうな鉄はすべて塗装します。項目が抜けていると、塗装がされずに工事が始まってから依頼すると追加項目として別料金をとられます。

塩ビ製品については、雨どいなどがありますが、やはり紫外線で劣化しますので塗装します。

鉄部塗装は、ケレン、錆止め塗り、ウレタン塗料2回塗りで、塩ビ塗装は、ケレン、ウレタン塗料の2度塗りです。m2あたりの塗装の単価は、2,000円前後ですが、見積もりではm2あたりの単価で算出しません。ドア枠、配管、ガラリ、水道メーター蓋など、いずれも面積は小さいですが、平面ではなく凹凸がある難しい形をしており、塗り方には技術が求めれられます。通常は1箇所あたりの価格ということでの見積になります。会社によってさまざまであり変動幅が大きい工事です。個々の単価はあまりチェックしても意味はないかもしれません。複数の会社に見積もり比較の際は、鉄製品塗装(鉄部塗装)合計の価格を比較するべきでしょう。

図2. 鉄製品(鉄部)塗装(屋上、玄関、階段周り)

図3. 鉄製品(鉄部)塗装(1階外溝周り)

図4. 鉄製品(鉄部)塗装(地下、専有部バルコニー)

繰り返しになりますが、見積もりを確認するときは、マンション管理組合でマンション共用部全体を歩き回り、鉄部、塩ビで塗装するべき箇所がもれていないかを見ることが大事です。抜けている箇所がみつかったら、発注前に再見積もりを依頼して予算に入れておきましょう。管理組合総会の決議及び発注後に追加工事が発生しないように注意しましょう。

まとめ

  • 国交省が2017年度に実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では大規模修繕工事に占める割合は平均で、外壁塗装17.3%の塗装工事と、鉄部塗装4.9%が塗装工事にあたります。外壁塗装は、下地補修後のコンクリート面の塗装、鉄製品(鉄部)塗装は、マンション内の鉄製品の塗装工事です。塗装工事比率の平均は両社の和は22.2%以下と言えます。
  • 見積例の表1、2で壁面関係塗装(外壁塗装)950,000円、鉄製品(鉄部)塗装工事588,250円で、塗装工事合計で1,538,250円となっています。
  • 外壁塗装は面積が下地補修の洗浄工程で説明したコンクリート面洗浄の面積と合っているかをチェックします。さらには、廊下、バルコニー壁面、階段側面、廊下天井、バルコニー天井、階段天井などコンクリート面の面積が確認できると良いでしょう。
  • 鉄製品(鉄部)塗装・塩ビ塗装は、項目が多いため見積もり漏れがないように確認する必要があります。

以上

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