2020年4月改正民法による大規模修繕工事の工事請負契約書への影響

2020年4月改正の民法によって、民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款にも反映されており、大規模修繕工事の項目ごとに、保証期間を定めても契約上、有効ではなくなる可能性があります。

例えば、工事会社から屋上バルコニー防水10年、シーリング工事5年などの保証期間をつけてもらっても、工事請負契約約款では、「引き渡しを受けた日から2年以内でなければ、契約不適合に対して履行の追完を求めることが出来ない」という矛盾する内容が書かれており、保証が受けられなくなる可能性があります。

今回のブログでは、2020年4月の民法改正を踏まえて、民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款を使って、大規模修繕工事の契約書を作る際の注意事項をまとめます。

2020年4月から民法が改正されました。2020年4月の民放改正で、瑕疵担保(かしたんぽ)責任という文言が、契約不適合責任という文言に代わりました。また、これまで第638条 建物等土地工作物の瑕疵担保責任の存続期間について「建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後五年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、十年とする。」という文言は削除となりました。

それに伴って、民間(七会)連合協定 工事請負契約約款も修正されています。工事請負契約約款のマンションの大規模修繕工事バージョンが、民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款というものであり、これらは、マンション管理組合が大規模修繕工事会社に発注する際の契約のベースになります。

大規模修繕工事の工事請負契約書上で、民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款を添付して準拠としている場合は、「民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款の契約不適合期間は、「引渡しを受けた日から2年以内」は、当該保証期間(上記の表のようなもの)の保証内容と読み替えるものとする」文言を加えるべきです。以下、詳しく説明します。

民法改正、瑕疵担保責任から契約不適合責任へ変更、保証期間も不明確に

国交省が作成したの住宅業界に関連する民法改正のポイントに説明があります。

改正民法で、「隠れた瑕疵」は「目的物の種類、 品質または数量に関して契約の内容に適合しない」(契約不適合)に改められ、これまでの損害賠償に加え、修補や代替物の引き渡し(追完請求)、代金の減額などを求められるようになりました。

大規模修繕工事を発注するマンション管理組合側からすると瑕疵に対する大規模修繕工事業者への依頼のオプションが増えた解釈できます。

但し、責任を追及する期間は、わかりづらくなっています。

改正前民法 
637条(請負人の担保責任の存続期間)
1.前三条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から一年以内にしなければならない。
2.仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。
638条 (建物等土地工作物の瑕疵担保責任の存続期間について)
建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後五年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、十年とする。

2020年4月 改正民法 
637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
1.前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
2.前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。 
638条 削除

第166条 (債権等の消滅時効)
1.債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

改正民法では発注者であるマンション管理組合は、契約不適合を知った時から1年以内に、大規模修繕工事会社に通知しないと、(契約不適合を修正させる)追完請求、報酬の減額、損害賠償、契約の解除は出来ません。この点は、瑕疵を見つけてから1年以内の連絡は普通にできる話ですので問題ありませんが、存続期間が問題です。

旧民法638条(建物等土地工作物の瑕疵担保責任の存続期間について)は削除されてしまいました。代わって第166条の債権等の消滅時効としてあつかわれています。

住宅業界に関連する民法改正の解説によれば、改正前の民法で定められていた職業別の消滅時効や商法に規定されていた商事消滅時効が廃止されて、従来の「権利を行使することができる時から10年」に加え、「権利行使することができること(契約不適合)を知ってから5年」という新しい時効が追加され、いずれか早い方の経過によって時効が完成することとされましたと説明されており、10年は大規模修繕工事の契約不適合について追及できるかのように読めます。

しかし、職業別の消滅時効がなくなったため、工作物又は地盤の瑕疵は5年、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物は10年が消えてしまい、発注者である管理組合側からすると、わかりづらく不利になっています。

民法の契約不適合責任は、任意規定なので他に契約がなければ民法が適用されるため、工事完了から引き渡しから10年(民法の消滅時効)までに、契約不適合を知ってから1年以内に通知すれば、追完請求をもとめて、契約不適合の修正を工事会社に求めることはできます。しかし、工事請負契約約款が別途ある場合は、工事請負契約約款の文言が優先されます。

民間(七会)連合協定 工事請負契約約款の改定、保証期間最大10年から2年へ

民間(七会)連合協定 工事請負契約約款 新旧対照表として公開されています。

改正前 民間(七会)連合協定 工事請負約款
第27条 瑕疵の担保
(1)この契約の目的物に施工上の瑕疵があるときは、発注者は、受注者に対して、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を求め、又は修補に代えもしくは修補とともに損害の賠償を求めることができる。ただし、瑕疵が重要でなく、かつ、その修補に過分の費用を要するときは、発注者は、修補を求めることができない。
(2)本条(1)による瑕疵担保期間は、第25条又は第26条の引渡しの日から、木造の建物については1年間、石造、金属造、コンクリート造及びこれらに類する建物、その他土地の工作物もしくは地盤については2年間とする。ただし、その瑕疵が受注者の故意又は重大な過失によって生じたものであるときは1年を5年とし、2年を10年とする。
(3)建築設備の機器、室内装飾、家具などの瑕疵については、引渡しの時、発注者又は監理者が検査してただちにその修補又は取替えを求めなければ、受注者は、その責任を負わない。ただし、かくれた瑕疵については、引渡しの日から1年間担保の責任を負う。

改正 民間(七会)連合協定 工事請負約款
第27条の2 契約不適合責任期間等
(1)発注者は、引き渡されたこの契約の目的物に関し、第25条又は第26条の引渡しを受けた日から2年以内でなければ、契約不適合を理由とした第27条に定める履行の追完の請求、代金の減額の請求、第30条(1)に定める損害賠償の請求又は第31条の2(1)もしくは第31条の3(1)に定める契約の解除(以下「請求等」という。)をすることができない。
(2)本条(1)の規定にかかわらず、建築設備の機器本体、室内の仕上げ・装飾、家具、植栽等の契約不適合については、引渡しの時、発注者が検査して直ちにその履行の追完を請求しなければ、受注者は、その責めを負わない。ただし、当該検査において一般的な注意の下で発見できなかった契約不適合については、引渡しを受けた日から1年を経過する日まで請求等をすることができる。
(3)、(4)は省略
(5)発注者は、本条(1)又は(2)に規定する請求等を行ったときは、当該請求等の根拠となる契約不適合に関し、民法の消滅時効の範囲で、当該請求等以外の請求等をすることができる。
(6)本条(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の規定は、契約不適合が受注者の故意又は重過失により生じたものであるときには適用せず、契約不適合の責任については、民法の定めるところによる。
(7)民法第637条第1項の規定は、契約不適合責任期間については適用しない。

改正前の民間(七会)連合協定 工事請負約款 

改正前工事請負約款では、第27条で「(2)石造、金属造、コンクリート造及びこれらに類する建物、その他土地の工作物もしくは地盤については2年間として、(3)で建築設備については1年間としています。(2)でその瑕疵が受注者の故意又は重大な過失によって生じたものについては、10年間」とされています。例えば、屋上防水などは、通常、雨漏りにつながる重大な過失として大規模修繕工事会社は10年保証期間してくれます。

2020年4月の改正後の民間(七会)連合協定 工事請負約款

改正後工事請負約款では、第27条の2 契約不適合責任期間等の(1)で、「引渡しを受けた日から2年以内でなければ、契約不適合を理由に、追完の請求、代金の減額、損害賠償請求、契約の解除は要求することはできない」としています。契約不適合が受注者の故意又は重過失により生じたものであるときには、改正民法の定めるところによりとありますが、故意又は重過失にについては、民法166条の消滅時効の範囲で、請求できるはずです。しかし通常は、大規模修繕工事の防水工事などで、故意又は、重過失で間違いは起こりません。

つまり、工事請負約款があるということは、引き渡しから2年以降は、契約上は契約不適合を理由に、追完の請求、代金の減額、損害賠償請求、契約の解除は要求することはできないとうことになります。

なお大規模修繕工事ではなくて、新築物件の場合は、民法以外に、公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律(以後、品確法)との整合性があり、改正後の民間(七会)連合協定工事請負契約約款は、第27条の2 契約不適合責任期間等の(9)には「住宅新築請負契約である場合には、工事目的物のうち住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令(平成12年政令第64号)第5条に定める部分の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。)について請求等を行うことのできる期間は、10年とする」としており、構造と雨漏りに対しては、10年間請求できるようになっています。

大規模修繕工事会社の工事請負契約書の文言へ追記すべき内容

大規模修繕工事会社との、工事請負契約書には、仕様書、明細書、工程表、保証期間、アフター点検などが明記されているはずです。使う材料と、大規模修繕工事会社の考え方によってか異なる場合もありますが、一般的な例としては、以下のような保証期間がつきます。あくまでも例としてご覧ください。

表、大規模修繕工事の保証内容(例)

保証内容保証年数
屋上、ルーフバルコニー防水(専有部の雨漏りにつながる防水、材料によっては3-5年に一度のトップコートが条件とされる場合もある)10年
階段、バルコニー防水(漏水)5年
シーリング工事 (漏水)5年
下地補修工事 (漏水)5年
タイル補修工事 (浮きの再発生)5年
外壁・内壁塗装工事 (著しい変色、剥離)5年
天井塗装工事 (著しい変色、剥離)3年
鉄部塗装工事(著しい変色、発錆、剥離)2年

アフター点検としては、引き渡しから、1年後、2年後、3年後、5年後、10年後まで明記する会社もあれば、1年後、2年後、5年後まで対応とする会社もあります。

これらの保証項目が契約書上も明確になっている必要がありますので、工事請負契約書が、民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款に準拠としている場合は、

  • 契約不適合期間は、「引渡しを受けた日から2年以内」は、当該保証期間(上記の表のようなもの)の保証内容と読み替えるものとする

というような文言を工事請負契約書に追記して、保証期間、内容を明確にして、万一、専有部に雨漏り等が発生した場合に対応を求める際に、大規模修繕工事会社との交渉がスムーズになります。大規模修繕工事を選定した後でも、見積もり時に、大規模修繕工事の保証内容(例)を提示させていれば、問題なく対応してもらえます。

大規模修繕工事の進め方、リーズナブルな価格で進めたいときは、以下をご覧ください。

マンション管理会社とうまくつき合い大規模修繕工事を適正価格で実施する

大規模修繕工事のタイミングでマンション管理組合の理事、理事長をつとめる人は、気を付けましょう。

まとめ

  • 2020年4月に民法が改正されて、瑕疵担保が、契約不適合という文言に代わりました。638条の建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後五年間その担保の責任、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、十年とするという文言が削除されて、保証期間が不明確になりました。第166条の消滅時効の契約不適合を知った時から5年、引き渡しから10年となっています。民法の契約不適合は任意規定なので、契約書に工事請負約款が添付されている場合は約款に準拠になります。
  • 2020年4月に民法が改正に伴って、民間(七会)連合協定 工事請負約款も変更となり、重大な瑕疵については最大10年の補修要求を求めることができる記述がありましたが、2020年4月に改正された民間(七会)連合協定 工事請負約款では、引き渡しを受けた日から2年以内に請求しないと補修要求を求められない契約内容になっています。
  • 大規模修繕工事会社からは、屋上バルコニー防水10年、シーリング工事5年などの保証期間を提案されていると思いますが、工事請負契約書が、民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款を添付して使用している場合は、契約不適合期間は、「引渡しを受けた日から2年以内」は、当該保証期間(上記の表のようなもの)の保証内容を読み替えるものとすると一言追加してもらうと、保証内容と契約書に矛盾がなくなります。

以上