標準管理規約を読むその2 中古マンション物件購入希望者が、物件を判断する際に確認できる書類

分譲マンションの中古物件のオーナーが売却を希望して、その部屋の購入希望者が見学することがことは誰しもが普通に行うことですが、マンションの建物、設備など共用部の管理がきちんとされているかを購入前にチェックしたい場合について、何を確認すべきでしょうか。

宅地建物取引業法施行規則第16条の2、第16条の4の3、マンション標準管理委託契約書の第14条の1、マンション標準管理規約第64条などを読むと、マンションの建物や設備など共用部について売りに出されている物件の購入希望者は、何を確認できるがわかります。今回は、以下の流れで、マンション物件購入希望者が、物件を判断する際の書類の流れを法律上どうなっているかを踏まえて解説します。

図1. 中古マンション購入者の購入希望物件判断のための書類入手のための法体系

中古マンション購入希望者が確認すべきマンション管理情報

中古マンションの価値は、立地、間取り、販売価格などが重要でもっとも評価すべきポイントになりますが、建物や設備など共用部の管理も大変重要です。例えば、管理費・修繕積立金に滞納があるマンションは、質の悪いオーナー(区分所有者)がマンションにいることになり望ましいことではありません。

修繕積立金がいくら貯金されており、修繕履歴を確認して、いつ大規模修繕工事が実施されて、大きな修繕工事があるのかが長期修繕計画に記載されているか、なども確認すべきです。

管理費・修繕積立金が安いことが良いとも限りません。管理費に対して修繕積立金が1/3~1/2程度と、極端に安い場合は要注意です。修繕積立金の設定の目安は、専有部の面積m2あたり、200円程度です。専有部が60m2ならば、12,000円くらいになります。将来必要となる修繕積立金が根拠を持って計画的に積み立てられていないマンションは、将来大規模修繕工事、給水排水設備の更新など必要な修繕工事が将来出来なくなる可能性があります。管理組合から数10万円などの単位で一時金を支払いを求められる可能性があります。その修繕積立金の根拠となるのが、長期修繕計画です。長期修繕計画がない分譲マンションは、修繕が場当たり的で、不具合が出てから後手になる可能性がありますので問題ありです。

さらに、マンション竣工時の完成図書がないと、そもそもどこを配管が通っているかの確認が出来ないため、修繕工事を行う際にも問題になります。建物や設備関係の完成図書の中身を閲覧する必要はないと思いますが、保管されているかは確認すべきでしょう。

竣工図がないマンションは見たことはありませんが、構造計算書がないマンションは見たことがあります。構造計算書がなくても大規模修繕工事や、設備の更新工事は出来ますが、例えば、携帯キャリアがマンションに管理組合に屋上使用料を支払って屋上に携帯電話の基地局アンテナを置きたいと要望してきたときに、あるいは屋上に太陽光パネルを設置する検討などに屋上に新規にものを置く検討を行う際にも、検討できなくなります。

図1にあるように、マンションを売りたいオーナー(区分所有者)がいるときに、専有部だけではなく共用部分の管理がどのようになっているか購入希望者が宅地建物取引業者(不動産仲介業者)を通じて、確認できるように法整備されていますので、よく確認して購入の判断材料にしましょう。

以下、マンション標準管理規約と、マンション標準管理委託契約書を詳しく見ます。

マンション標準管理規約64条の記述について

具体的な記載をマンション標準管理規約(単棟型)で見ていきます。

標準管理規約の第64条(帳票類等の作成、保管)(一部抜粋)

  • 理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。
  • 2 理事長は、第32条第三号の長期修繕計画書、同条第五号の設計図書及び同条第六号の修繕等の履歴情報を保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。

これだけだと何を意味しているのか、よくわかりません。標準管理規約の解説(コメント)を読むと、「利害関係人」とは敷地、専有部分に対する担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等法律上の利害関係がある者であることがわかります。

最もわかりやすい例としては、分譲マンションを中古で購入したい人が、マンションの共用部の管理状況を把握するために宅地建物取引業者(不動産仲介業者)を通じて理事長に依頼があった場合に閲覧させることが求められる書類が具体的に定められているということがわかります。実際には、購入希望者に理事長が対応するのは現実的でないため、管理会社に委託するようになっています。管理会社との契約は、マンション管理組合と管理会社間の管理委託契約書になります。

マンション標準管理委託契約書の第14条の1の記述について

マンション管理業者の間で協議がととのった事項を記載した管理委託契約書が、マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第 73 条に規定する「契約成立時の書面」として交付する場合の指針として国交省の標準管理委託契約書(2020年10月現在、2018年3月9日のものが最新の修正)になります。

マンション管理組合員(分譲マンションのオーナー)であれば、管理会社との管理委託契約書は、マンション管理組合通常総会で承認されており、重要事項説明書の一部として管理会社から説明をうけてコピーをもらっているはずです。

マンション標準管理委託契約書の第14条の1に記載があります。

(管理規約の提供等)
第14条 乙【マンション管理会社】は、宅地建物取引業者が、甲【マンション管理組合】の組合員から、当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受け、その媒介等の業務のために、理由を付した書面又は電磁的方法により管理規約の提供及び別表第5に掲げる事項の開示を求めてきたときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約の写しを提供し、及び別表第5に掲げる事項について書面をもって、又は電磁的方法により開示するものとする。甲の組合員が、当該組合員が所有する専有部分の売却等を目的とする情報収集のためにこれらの提供等を求めてきたときも、同様とする。

具体的には別表第5として提出される文書は、マンション標準管理委託契約書の30ページから33ページにあります。

項目だけ整理すると以下のような文書になります。

  1. マンション名称(物件名、総戸数、所在地など)
  2. 管理体制関係(役員数、総会開催時期、管理規約、使用細則、損害保険など)
  3. 共用部分関係(竣工年次、専用使用の定め、自転車置き場区画数、など)
  4. 管理費関係(管理費、修繕積立金、その他専有部使用料、駐車場・駐輪場使用料、管理費の支払い方法手続きなど)
  5. 管理組合収支関係(管理費、修繕積立金の収支、資産・負債総額、管理費・修繕積立金の滞納があれば滞納額などの最新年度の会計収支、)
  6. 専有部分使用規制関係(ペットの飼育制限、楽器の使用制限など、通常は管理規約/使用細則に記載されている)
  7. 大規模修繕関係(長期修繕計画の有無、共用部の修繕実施状況(工事概要と時期)、大規模修繕工事予定の有無)
  8. アスベスト使用調査の内容
  9. 耐震診断の内容(主に、1981年5月31日に建築確認申請した旧耐震の建物が対象)
  10. 管理形態(管理会社の情報)
  11. 管理事務所関係(管理員勤務日、勤務時間、電話番号、事業所名)
  12. 備考(ゴミ出し日、設計図書保管場所)

きちんと管理会社が仕事をしていれば、管理組合との管理委託契約書を変更して、別表5について、宅地建物取引業者の求めに応じて開示することができるはずです。

さらに、宅地建物取引業者(不動産仲介業者)の宅地建物取引業法施行規則の第16条の2、第16条の4の3を見ると、購入希望者が要求することができる書類のの記載がありますが、管理会社に要求する文書内容は同じような内容になっています。

なお、マンション標準管理規約は、2016年3月の改訂で、長期修繕計画書、修繕等の履歴情報の提出などが追加されています。管理会社がこれらの変更に合わせて、管理規約の変更の提案をして、総会で承認されているマンションは、管理会社も管理組合も良い仕事をしているということになります。

中古マンションの価値について

今回は、標準管理規約、標準管理委託契約書、宅地建物取引業法の記述に基づき、中古マンションを購入する際に、購入希望者が確認したい書類が何であるか確認して、どのような法体系、運用になっているかについて解説しました。

これらの改定は、中古マンション物件購入希望者が売買の際に、「聞いてなかった」などのトラブルがなく、不動産仲介業者、マンション管理会社を通じて、中古マンション物件の共用部の必要な情報を提供して、購入希望者が判断して購入することを促すことが目的になります。

日本では都市計画区域や用途地域や、建築基準法などの規制を守れば、新築マンションはいくらでも建てられるような状況が続いています。日本はすでに人口減少、高齢化社会が始まっており本来なら住宅の過剰供給は規制すべきなのですが、景気対策的な要素や、業界からの要望があり、新築住宅、新築マンションの規制は市場の原理に委ねられています。しかし、いずれはマンション新築数は総量規制されていく時代がきます。規制しないとと空き家問題が深刻化して、マンションのスラム化の問題などが現実化してしまいます。

今より中古マンションの売買が活発になっていきます。その際、長期修繕計画や修繕履歴がない、適正な修繕積立金が計画的に積み立てられていない、マンションは価値が低いということをマンション購入希望者が購入時に判断する材料になっていきます。中古マンションの価値は、今回紹介した法律や規約の整備することで「立地、築年数だけではなく、共用部の管理も問われます」ということを国交省が啓蒙していると言えます。

マンション管理組合をサポートする管理会社の選択はもちろん重要ですが、管理組合そのものが意識高く自分たちのマンションの共用部を管理しているかということが問われる時代になってきています。マンションに住んでいる方は、お住いのマンション管理規約、マンション管理委託契約書の条項を確認してみてくださると良いでしょう。

まとめ

  • 宅地建物取引業法、マンション標準管理規約、マンション標準管理委託契約書には、マンションの区分所有者が物件を販売したい場合に、管理会社、宅地建物取引業者(不動産仲介業者)を通じて、共有部の管理情報や管理履歴を、物件購入希望者に提供するように整備されています。
  • 管理費、修繕積立金などはもちろん確認すると思いますが、修繕積立金の総額と、長期修繕計画の有無や、修繕履歴などがきちんと保存されているかを確認しましょう。
  • 人口減少・高齢化社会に向かっている日本では、新築マンションは総量規制されて、中古マンションの売買が活発になります。マンションの価値は、立地や築年数はもちろんですが、今後は建物や設備など共有部分の管理状況も重要になっていきます。

以上

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