マンション管理組合目線で思うことは、この業界はDXが遅れていることです。DXの第一歩としてデジタル化・クラウド化を進めて頂きたいと思います。
地場産業的に小さな管理会社からマンション管理部門だけで年商500億円規模の大手まで2千数社ほど管理会社はありますが、古い体質で変化を嫌う保守的な業界と感じています。
マンション管理業はマンション管理適正化法による規制があり、国交省への登録が必要で、指示処分、業務停止処分、登録取消処分もあります。顧客の大事な管理費や修繕積立金を預かる業務ですから規制する必要もありますし、実際に指示処分は2020年度も1年間で8件ありました。
どの業界はDX進めていくべきで、ユーザー目線でデジタル化・クラウド化はすすめるべきだと考えます。
マンション管理会社の大手4社のデジタル化・クラウド化による管理組合向けの取り組みをホームページに公開されている情報を整理します。
表1 管理会社4社のデジタル化・クラウド化による管理組合向けサービス
東急コミュニティ | 大京アステージ | 日本ハウズイング | 合人社 | |
分類 | デべ系 | デべ系 | 独立系 | 独立系 |
(紙の支払い伺書に理事長の捺印に代わって)スマート決済 | - | - | 〇 | ー |
電子契約、保管サービス | 〇※2 | |||
(毎月理事長に送られてくる)月次報告書の電子提供とクラウド保存・組合共有 | ー | 〇 | - | 〇 |
(管理人室などに共用部に紙で保管されているを)管理規約、総会・理事会の議案、議事録のクラウド保存・組合共有 | - | 〇 | - | 〇 |
その他 | ※3) |
※3)顔認証やワンタイムキーによる入館管理システムの試験運用を開始
大京アステージは、2020年6月にグループ会社である管理会社の穴吹コミュニティとともに、DXによる "次世代型マンション管理サービス"の開発に着手と発表後に、管理契約電子化サービスや、顔認証、ワンタイムキーによる入館システムなどの発表をしています。もっとも先行していると言えるかもしれません。
また大京アステージさん、支払い伺いの電子化やっているようでしたら、教えてください。ホームページからは見つかりませんでした。
東急コミュニティ社はサービスが見つからなかったですが、クラウド共有は持っていてしかるべきだと思いますが、本当に持っていないでしょうか?ご存じの方がいたら教えてください。
あなぶきハウズイングサービス社さんのブログに詳しく書かれていますが、これらが2021年度にデジタル化が加速すると、かかれているのでやはりどこの会社も似たようなものだと思われます。
以下、小規模マンションの一理事として、マンション修繕コスト削減士として、感じているマンション管理会社DXの遅れについて書きたいと思います。
目次
支払い伺書の紙が回ってくる
マンション管理会社経由で、工事会社に支払いなどを依頼するときに以下の流れになります。
- (工事会社などの)請求書を管理会社に原紙を渡す
- 支払い伺書が理事長に届けられる。理事長が捺印して管理会社に送り返す
- 期日に請求書に従い支払われる
やりとりが工事会社などへの支払いが遅れるとまずいのと、何より紙のやり取りが面倒なのでデジタル化進めて頂きたいと思います。
とくに小さな工事会社への支払いでは、検収後2週間などを求めてくることあるので、遅れると迷惑をかけることにもなりますので、スマート支払いサービスは急いだほうが良いでしょう。
収支報告書、事務管理報告書などが毎月、紙で送られてくる。
理事長になると困るのが、組合員の管理費等の支払・未払いの報告、設備点検報告書の実施状況を事務管理報告書として毎月理事長におくってくるのですが、紙がたまっていきます。まじめな理事長は理事に回覧しているか理事会で回覧などをするかもしれません。大規模マンションだと何十人も理事がいて、それも難しいのではないかと思います。
通常総会などで管理事務報告書は、法的にも実務的にも残しておかなければ行けないもなので1年に1回、紙が配布され管理人室等で紙で保管するのは必要ですが、電子データでも残しておくと、あとでどういう経緯で決定したかなどがすぐに確認できるように電子保存すべきです。
毎月の月次報告は、やがては捨てるしかない紙なので、これは電子化提供・保存だけで十分だと考えています。
人件費と郵送費などが削減するので、クラウド利用料やシステム利用料はペイするのではと思います。
理事会に資料のコピーをたくさん持ってくる
以前、契約していた管理会社は毎回大量のコピーを持ってきました。次回その議題が繰り越された場合はまた改めてコピーを持ってきて管理が大変でした。
理事会でしか配布されない比較検討資料や配管の劣化診断調査報告書、建物外観点検報告書などは、理事が交替した後も過去調査した結果を残しておくのに、電子化していないと引継ぎが難しく、次の理事が状況を理解しないまま判断をしなくてはいけないことになります。
管理会社が共有サービスを用意して、必要な資料を置いて、理事にメールやLineで通知できる仕組みなどを用意してくれるともっと運用は楽になりゴミや重複がなくなります。表1にある大京アステージや合人社のシステムはある程度出来ているのかもしれません。
管理会社は変更することもありますが、その時は、全ドキュメントをダウンロードできる仕組みを準備して頂く必要はあるでしょう。
管理会社内の情報が共有について
これまでお付き合いしてきた管理会社はいずれも修繕工事の元請けをする会社でした。工事を提案してくれるのはありがたいのですが管理組合が知りたいのは、他の管理組合での事例や判断の基準です。ところが、大きな会社であっても、ノウハウが全社的に共用されておらず、その人の経験値や支店レベルでの共有された情報で対応していると感じたことがありました。
また2年前に管理会社をReplaceしたときに、複数の管理会社の提案を聞きましたが、ある中堅の会社は工事の元請けをしない会社は「マンション情報、会計情報、督促情報、工事・修繕情報、及び管理組合の運営上必要な情報をデータベース化していますから、担当者不在でも対応できます」とアピールしていて、はっとしました。これって当たり前のことではないか?と思った次第です。
確かに管理会社に電話すると「フロントが戻りましたら連絡します。担当に折り返しさせます」と言われます。管理組合の状況を把握しているのはフロントだけかもしれません。またそれで成り立ってしまいます。
数10億~最大500億円の売り上げがあるマンション管理業でも、社内の情報共有のためのシステム投資もまともに出来ていない会社も多いのだと感じました。
顧客のマンション管理状況の情報や、工事案件別の共有情報などはデータベース、クラウド化して社内共有してほしいと思った次第です。
管理組合側のリテラシーの問題も
私たちのマンションでは、大規模修繕、設備更新、小修繕、など修繕履歴だけは、日時・工事概要・発注先・支払金額をエクセルで管理しています。歴代の管理会社に通常総会の後に入力してもらい次の理事会に引き継いでいます。この履歴と、大規模修繕工事のような大きな工事だけ完成図書を紙で残せば、引き継ぐことは可能です。
総会・理事会は資料、議事録はすべて電子化して保存していますが、共有はしていません。サイズが大きな資料は、必要に応じてGoogleCloudの共有サービスを利用しています。但し、十分とはいえず、仕様が決定する経緯の理事会議事録や、工事会社の選定の判断の比較表なども修繕履歴と紐づいて管理されていると、俗人的にならずに理事の引継ぎはしやすくなると気づきました。
自分のマンションを考えると管理組合側からデジタル化・クラウド化を要求がないため、マンション管理業のDXは遅れていることに気づきました。管理組合のリテラシーの低さと要求がないことも、管理会社のDXが進まない理由なのだと思いました。
管理組合側は、HPを持ち情報公開を持つことかがDXの第一歩と考えます。古くなればなるほど、そのマンションとして選ばれづらくなります。大きなマンションで管理組合が立派な活動をされているイニシア千住曙町は管理規約や細則を公開されていました。
標準管理委託契約書14条の1の別表5、宅地建物取引業法施行規則の第16条の2、第16条の4の3に記載されている通り、マンションに中古売却希望者のオーナーがいて、不動産屋さんに売却の依頼(媒介)を出していると、管理会社経由で、管理規約、管理費、修繕積立金、その他使用量、修繕積立金の残額、管理費等の滞納額、長期修繕計画の有無、修繕実施状況、最新年度の会計収支、など、提出することになっています。これらの情報は法律上、購入希望者が不動産屋さんに要求して、管理組合が情報をもっていれば管理会社を通じて開示される情報です。
中古物件購入希望者は、どこまで情報をとれるか?についてまとめたブログ
標準管理規約を読むその2 中古マンション物件購入希望者が、物件を判断する際に確認できる書類
どこまで開示すべきかは難しいですが、これからは情報公開している分譲マンションは購入希望者が判断する材料が多いため、選ばれやすくなると考えます。
全員が使えないと導入出来ない面もありますが、高齢者もスマフォを使いこなす時代です。また理事全員が使いこなす必要もなく、一部の理事だけが利用するとして、使えない人にのみ紙の配布を行うという段階がデジタル化・クラウド化の移行期にはあるのかと思います。
管理会社の選ばれる理由に、デジタル化・クラウド化が指標の一つになる日は、近いでしょうか?また中古マンションの選ばれる理由にホームページなどの情報公開が重要になるでしょうか?
新型コロナウイルスの脅威で、オンライン+リアルの総会、理事会が普及してDXは進んでいくと思いますが、まずはその第一歩として、支払い、契約、文書のデジタル化・クラウド化をすすめるべきでしょう。
以上
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