オンライン総会についてのマンション標準管理規約の改定

昨年の新型コロナウイルスによる緊急事態宣言以降、マンション管理組合の総会が開催できずに必要な工事の議決が出来ないという事態に直面した管理組合が多数ありました。現在の区分所有法、標準管理規約では、オンラインで総会が進められる想定がされていません。しかし禁止しているわけではありません。

密集を避けるため集会が開催できない状態で、マンション標準管理規約にある48条の総会議決事項である収支決算及び事業報告、収支予算及び事業計画、必要な修繕の修繕積立金の仕様と残額の確認などが実施出来ないため必要な修繕が延期になった管理組合も多かったでしょう。

今回のブログでは、国交省が行っている「マンション管理の新制度の施行に関する検討会」の検討状況(2021年1月29日)から、IT総会(オンライン総会)がどのような形で正式に認められるかについてまとめます。

現在の区分所有法及び標準管理規約でも、オンライン総会は開催可能で、議論にも参加して議決権行使をすることも可能です。

しかし、標準管理規約は改定される予定で、オンライン総会の記述がないため本文及び、コメント(国交省の解説)で明示的に補足説明をされる予定で議論が進められています。

改定時期は未定ですが、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)のマンション管理計画認定制度への申請と、マンションの建替え等の円滑化に関する法律についての除却の必要性にかかる認定の申請と同じタイミングで変更となる見込みです。

一般社団法人マンション管理業協会のHPでは、マンション管理計画認定制度の改定が、2022年4月予定とされていますので、標準管理規約も2022年4月に改訂されると可能性があります。

本年度のマンション管理組合総会では、集会室があるマンションでは、WiFi、インターネット回線の準備をすること、公民館や地域センターなど公共施設を使用する場合は、WiFi、インターネット回線があるかどうかの確認の実施、必要ならばWiFiルーターなどの費用負担や、その管理方法、使用ルール、理事会でのテストなどを検討すべきでしょう。
なお、オンライン総会については、もっとも普及しているZoomを使う場合は、議決権数が100人以下のマンションでは、2021年2月現在、20,100円/年のプランが必要で、100人以上300名以上のマンションでは、26,900円/年のプランが必要になります。

国交省のオンライン総会についての見解

図1.公益財団法人 マンション管理センターのトップページ

公益財団法人 マンション管理センターは、国土交通大臣指定のマンション管理適正化推進センターであり、国交省のマンション管理に関する外郭団体です。ここから出ている通知は、国交省の見解と言って良いでしょう。

こちらにQ&Aがあります。2020/3/272020/5/20のQAがあります。以下5/20のQ&Aの関係部分を要約してます。

Q1区分所有法における集会 の開催について 、 IT を活用することはできますか。
A1)(1)集会(総会)に出席せずに電子メールの送信やWEBサイトへの書き込み等の電磁的方法で議決権を行使することが出来る。本人確認について留意することが望ましい。
(2)WEB 会議システム等を用いた 集会の傍聴
集会(総会)が行われる会場をWEB 会議システム等を用いて中継し、区分所有者が中継動画を傍聴することは可能と考えられます。
この場合には、議決権行使の意思のある区分所有者は、書面や電磁的方法による事前の議決権行使や、委任状等で代理権を授与する代理人による議決権行使を行うことが必要であり、その旨をあらかじめ 招集通知等で区分所有者に周知することが望ましいと考えられます。
なお、区分所有者が、単に傍聴をするのではなく、 WEB会議システム等を用いて集会に出席し、議決権を行使することを認めることについては 、第三者が区分所有者になりすました場合やサイバー攻撃や大規模障害等による通信手段の不具合が発生した場合等には、集会の 決議が無効となる おそれ があるなどの課題に留意する必要があります。

つまり現状の区分所有法、標準管理規約でもWEB会議システム等を用いて集会(総会)に参加することも、総会の場で議決権を行使することも可能ということになります。

現状の区分所有法、標準管理規約について

オンライン総会については想定されておらず、区分所有者全員が了承した場合は、総会を実施せず、あらかじめ配布した議案について、各自から書面または、メールやWEBサイトで議決権行使をしてもらうことで、総会で議決したことに出来るという記述があります。

区分所有法の集会(総会)について抜粋します。

第四十一条 (議長)
1 集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる。
第四十二条 (議長)
1  集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 省略
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
4、5、省略
第四十三条 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
第四十五条 (書面又は電磁的方法による決議)
この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。
2 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。

45条に決議の方法に電磁的な方法による決議が区分所有者全員の承諾があるときは、集会(総会)を開催せずに、電磁的な方法で決議できるということになっています。全員の承諾は、通常難しいので、実質、集会(総会)を開催せずに、決議するのはかなりハードルが高いということになります。

標準管理規約では、管理組合が電磁的な方法を利用可能でない場合と、利用可能な場合で50条の決議が二つに分かれており、「電磁的な方法が利用可能でない場合は、書面による決議」、「電磁的な方法が利用可能な場合は書面又は電磁的方法による決議」が可能となっています。

電磁的な方法による決議が可能な場合の標準管理規約の第50条は以下となっています。

電磁的な方法が利用可能な場合
第50条 (書面又は電磁的方法による決議) 規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る組合員の承諾については、あらかじめ、組合員に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
2 省略
3  規約により総会において決議すべきものとされた事項については、組合員の全員の書面又は電磁的方法による合意があったときは、書面又は電磁的方法による決議があったものとみなす。

電磁的方法とは、標準管理規約の第44条にコメント(国交省の補足解説)があり、電磁的方法による議決権行使の具体例には、電子メールの送信やウェブサイト(ホームページ)への書込みの利用とあるので、あらかじめ議案が配布されており、内容を確認して、組合員が、メールや、WEBサイトで議決権行使を実施することを想定しています。

さらに、全員が電磁的方法による決議を承認していれば、議案はあらかじめ送付して総会を開催せずに、決議だけ行うことが出来るとなっています。このあたりは、区分所有法に合わせて作られたものが標準管理規約なので足並みがそろっています。

国交省のマンション管理の新制度の施行に関する検討会、IT総会ついての議論

2021年1月29日に第4回マンション管理の新制度の施行に関する検討会が開催されました。議事は、法改正及びデジタル化への対応等に係る標準管理規約の改正検討についてとなっており、まさに、昨年のコロナウイルス感染症対策で露呈した総会の課題をどう解消するかの議論でした。

不動産、住環境、マンション管理をテーマに研究に取り組んでいる、横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤 広子氏を座長に、関係する公益法人、社団法人、東京都住宅政策本部住宅企画部マンション課長などが参加して議論しています。

資料は、一般社団法人マンション管理業協会作成のもので、完全オンライン総会、リアル+オンライン併用総会について議論されています。

図2.ITを活用した総会の在り方検討会報告書・ガイドラインの概要

以下の論点で検討がされています。

  • オンライン出席者の本人確認 => リアル総会と同様、部屋番号と氏名で確認
  • 質問の受付=>画面を通じて挙手、テキスト(チャット機能などを想定 ※補足)での受けつけも考えられる。
  • 通信障害について=>決議の効力に影響が生じる可能性は否定できないので、あらためて総会を開催する。
  • パソコン、スマフォ等を所持していない組合員=>区分所有者に1人でもいるなら、リアル総会は開催して、リアル+オンライン総会とする必要がある。

Zoomなどオンライン会議を経験したことがある人は、現状の通信環境、PC,スマフォの端末性能で、双方向性と即時性が確保されているため、問題ないことが理解できるでしょう。有識者の議論も明示的にIT総会(オンライン総会)を認める方向ですすめています。

改定検討中の標準管理規約について

マンション管理の新制度の施行に関する検討会の第4回2021年1月29日の資料3として、改定検討中の標準管理規約は公開されています。

オンライン総会に向けて大幅な改定はありません。

38条 理事長、43条 招集手続き 52条 招集 46条 議決権 
はWEB会議システムをつかった場合のコメント(国交省の解説)が追加
されています。

47条 総会の会議及び議事 53条 理事会の会議及び議事には、標準管理規約本文に(WEB会議システム等を用いた会議を含む。)と()が追加されています。

そのほかの改定として、18条の仕様細則について、マンション内が感染症の感染拡大の恐れがある場合において、共用施設の使用停止等ができる点などをコメントに追加しています。

やむを得ない事情による総会の延期について、42条4項 「総会では、通常総会の招集時期が新年度開始以後2か月以内でなければならない。」に続いて、「ただし、災害又は感染症の感染拡大等によりやむを得ない場合においては、この限りでない。」が追加されて、総会の延期についても記述しており、延期に対して柔軟に対応できるように記載になる見込みです。

オンライン総会の効果

ビジネスでは、営業行為は顧客訪問から、オンラインセミナー集客、その後の個別オンライン面談、必要なら現地訪問デモ、成約というような流れに切り替わりつつあります。いまさら感はありますが、冒頭に書いたように、今の管理規約でもオンライン総会、オンライン決議は可能ですので、本年からも実施できる管理組合は実施すべきでしょう。

忙しい子育てママさんはリアル総会には参加できなくても、オンライン総会であれば、子守をしながら参加可能になるかもしれません。オンライン総会は、総会出席率を上げる効果があります。

さらに、このオンライン総会は、単に感染症対策としてではなく、非在住の区分所有者への出席を促す効果もあると考えています。非在住の区分所有者は、投資向けで購入したオーナーもいるかもしれませんが、管理費や修繕積立金の値上げの議論が総会で行われることもあります。利回りに直結する話で、議論に入るべきですし売却のタイミングを検討したり、他のマンション投資する際の選球眼を身に付けるチャンスともいえます。

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投資家目線の修繕積立金

総会がオンライン化するということは、理事会もオンライン化が可能になります。理事会は理事のなり手がいないという問題がありますが、その理由として非在住の組合員の比率が増えて、マンションに近くに集まるのが大変で、理事会に出席できないということが背景にあります。

理事会こそ、オンライン実施をするメリットは大きいです。遠方に住む非在住の組合員にも輪番制で理事を割り当ててるような管理規約細則にすることで理事・監事の負担を分散することも考えられます。

オンライン総会を感染症対策と考えるのではなく、当たり前のツールとしてマンション管理を円滑に行うために、組合員に興味をもってもらうための手段としてマンション管理組合で使いこなしていくという発想が必要でしょう。

その他の標準管理規約の改定

オンライン総会関連以外では、2020年2月に改定が閣議決定されて、今後改定される見込みのマンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)管理計画認定制度への申請と、マンションの建替え等の円滑化に関する法律についての除却の必要性にかかる認定の申請が、48条の議決事項に盛り込まれる見込みです。

マンション管理適正化法改正で、地方自治体による管理計画認定制度などが盛り込まれますが、別の機会で詳しく書きたいと思います。

さらに、敷地及び共用部分等の管理(21条)のコメントに、専有部分配管の修繕について追加される見込みです。

配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。

この変更は、マンション管理組合目線では、大いに歓迎します。

給排水配管は、古いマンションでは、更新が必要になりますが、専有部ごとに単独で行うのはかなり無理があります。売却時または購入時にフルリノベーション大改修を行わうタイミングでない限りは普通は実施しません。漏水が多発する前に、管理組合で一斉に工事すべきであるべきであり、多くの管理組合が、一斉更新工事を実施しています。実態に合わせた変更と言えます。

専有部分の配管については、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものとしながら、一斉に行うことのメリット(費用軽減)が書かれており、先行して工事を行った区分所有者への補償などにも言及しているので、管理組合も動きやすくなります。さらに長期修繕計画への反映まで記載されています。

専有部分の配管更新費は、マンションの隠れた負債であるため将来どれくらいの負担が発生するのかを管理組合として把握しておき、個人負担、修繕積立金の負担率などを検討しておくことは非常に重要です。

まとめ

  • 公益財団法人 マンション管理センターのQ&Aによれば、オンライン総会およびオンライン議決は、現在の区分所有法、標準管理規約でも可能です。
  • 標準管理規約の改定される予定で、オンライン総会、リアル+オンライン総会は正式に認められる方向です。しかし、現実には、オンライン参加が出来ない区分所有者が可能性があるため、完全オンライン総会開催ではなく、リアルな総会を開催しつつ、オンライン参加および、議決権行使が普及していく見込みです。
  • オンライン総会は、感染症対策と言うよりも、当たり前のツールとして使いこなすことで、総会の出席率をあげたり、理事会もオンライン化することで、非在住組合員も理事として選任して理事会に参加しやすくなり、理事の負担を軽減するなどの効果があると考えるべきでしょう。
  • リアル+オンライン総会を検討しているマンション管理組合は、通信環境の整備や、Zoomなどのサービスを準備して今年度の総会も準備するべきでしょう。

以上