投資家目線で分譲マンションを見ると、修繕積立金が上がると、利回りが下がり不動産価値は下がるそうです。
分譲マンションを購入して、賃借人に貸し出して賃料がかせぐ実質利回りとは、以下で計算できます。

棚田行政書士の不動産大学は、宅建士の受験対策の講義の動画がメインですが、不動産業の実務に関する知識も豊富です。下記の動画での修繕積立金が1,000円から10,000円に値上がりして物件価格が1日で300万円減少する話は、投資目線が修繕積立金をどのように見ているかを解説している興味深い内容でした。

分譲マンションは、投資用(賃貸用)分譲マンションに限らず、新築時に極端に低い修繕積立金を設定しています。マンション分譲会社が、物件を売りやすくするためです。

ところが、安すぎる修繕積立金では、12年に1度程度の頻度で必要となる大規模修繕工事などの費用が確保できなくなるため、段階的に値上げすることになります。

マンション管理組合目線では修繕積立金は、定額方式を推奨しています。国交省の修繕積立金のガイドラインでも定額方式を推奨していますが、新築分譲販売する際、市場に競合の中で選んでもらうためには修繕積立金を安くしないと競争力がないので仕方がありません。

現実には、購入した分譲マンションのオーナーの集まりである管理組合の理事会は修繕積立金が値上げ問題に直面して、値上げをしないと行けなくなり苦労することになります。

投資用(賃貸用)分譲マンションでは、修繕積立金の値上げがどのように影響するかを以下の流れで解説します。

投資用(賃貸用)マンション分譲会社のビジネスモデル

図1.オーナー所有賃貸マンションと、投資用(賃借用)分譲マンション
オーナー所有賃貸マンション投資用(賃借用)分譲マンション
建設費オーナー(賃借料で回収)投資マンション分譲会社
(区分所有者に売却して回収)
オーナー1棟すべてオーナー
(多くは土地所有者)
区分所有
法律/規制区分所有法/管理規約
共用部
管理・修繕
オーナー管理組合から管理会社
(多くは分譲会社の子会社)

賃借人となる居住者から見ると、オーナー所有の賃貸マンションも投資用(賃借用)分譲マンションも同じように見えるかもしれません。投資用(賃貸用)分譲マンションも、区分所有マンションであり、区分所有法/マンション管理規約に従って管理されます。

わかりやすくするために、オーナー所有マンションと比較します。

オーナー所有マンションと異なり、投資用(賃貸用)分譲マンションは、投資マンション分譲会社が建物を建てます。その後、直ちに個人投資家に売却することで、新築分譲で建設費を回収して利益を出します。個人投資家は必ずしも資産をもっているとも限らず、資産と借金で購入します。
利回りをかせぐことが目的ですから、投資家は賃借人による入居率と、利回りが何パーセントになるかを考えて購入します。

家賃回収に関しては、各部屋からの集金は通常は集金代行会社経由あるいはオーナーが直接行います。この点は、オーナー所有も、投資用(賃貸用)分譲も同じです。

オーナー所有マンションでは共用部の設備の管理・修繕は、オーナーの判断で行います。投資用(賃貸用)分譲マンションは、共有部管理は区分所有マンションなので、オーナーで構成される管理組合が区分所有法/マンション管理規約に基づいて行います。

しかし、自分が住んでいるわけではなく、共用部の管理への関心はうすく管理会社にお任せになるケースが多いです。管理会社は、新築分譲時から投資マンション分譲会社または、その子会社である場合が多いです。投資マンション分譲会社は新築マンションの販売でビジネスをして、さらにマンション管理でストック型のビジネスをすることになります。二重においしいビジネスになっています。

投資家である専有部のオーナーは、賃借人(入居者)が決まれば家賃収入から管理費と修繕積立金を管理会社に支払います。管理費は、主に共有部の清掃、マンションの設備点検費、共用部照明・エレベータ・水道ポンプ電気料、など、日常的管理・維持費用です。修繕積立金は、大規模修繕工事など計画的に行う修繕、水道管が破裂するなど突発的な事故など費用が大きな場合に修繕に使われます。

管理費は、新築物件で安く設定されることはありません。主に管理委託料は、投資用(賃貸用)分譲マンションか、その子会社が管理会社をしており、重要な収益源ですので余裕をもって設定されます。消費税増税など外的な要因で値上げすることはあっても、通常は値上げされません。一方、修繕積立金は、新築分譲時は安く抑えられているので段階的に値上げされますので投資家は注意が必要です。

このビジネスモデルをうまく回すには、立地の良い場所に、選ばれやすいデザイン・広さ・機能で、賃借人が決まるような適度な価格設定をすることがノウハウになります。

投資マンション分譲会社で、東証二部上場の株式会社デュアルタップの2020年6月の決算説明資料を見てみます。
不動産販売事業は東京23区の駅近物件に絞って自社ブランドマンションXEBECの開発をしており、賃借人(入居者)が見つけやすい立地を選択しています。自社で販売した投資用分譲マンションを不動産管理事業が管理しており、中期計画では不動産販売事業と同じ規模に拡大させており、不動産管理事業を重視しています。

都心部の不動産販売事業も、いつか飽和すると建て替え需要だけになりますので成長には限界があるのに対して、不動産管理事業は管理を維持していれば安定して収益をあげることが出来ます。大規模修繕工事も自社の管理会社が受注できる体制を作ることが出来れば、さらに収益をあげることができます。いうまでもなく、投資用(賃貸用)分譲マンションを購入する投資家の所有する部屋の入居率をあげて、利回りを安定して稼げるようして投資家とWin-Winの関係になることが重要です。

楽待で、投資用(賃貸用)マンションを検索すると都心ワンルームなど投資用(賃貸用)分譲マンションの管理費・修繕積立金と比べて、専有部平米あたりよりも高めに設定されています。
とくにワンルームマンションでは、築年数が15年以上の物件では専有部の平米あたりの管理費、修繕積立金が300円程度とかなり高い例が多いようです。修繕積立金は一般的には、国交省の修繕積立金のガイドラインにも記載がある専有部の平米面積あたり200円前後で、管理費にはガイドラインはありませんが、修繕積立金と近い金額に設定されています。

築年数が15年以上の物件の投資用(賃貸用)分譲マンションの管理費、修繕積立金が高い理由は、よくわかりませんが、投資家の集まりである管理組合が管理委託料を細かくチェックしたり、大規模修繕工事の費用に関心を向けることも要因にあるように思います。総会への出席率も低いです。

図2.居住用分譲マンションと投資用(賃借用)分譲マンション総会のイメージ

物件の投資用(賃貸用)分譲マンションのオーナーは、管理費も、修繕積立金も、赤字にならないような運営できれば管理組合の総会の決議で適正価格に値下げもできるということは頭に入れておいてください。あくまでもマンションの所有者は区分所有者であり、管理組合のものであることを忘れてはいけません。投資用(賃貸用)マンションでも管理組合が、理事になる機会があれば理事になって、管理費・修繕積立金が適正かどうかを検証して管理会社にも意見・要望をしたりして、管理会社に主導権を握らせないようにして利回りが落ちないように努力しましょう。

利回りの計算

棚田行政書士の不動産大学で紹介された物件に近い数字で一部想定して利回り計算します。

投資用(分譲用)マンションの利回り計算例
物件価格 1700万円
専有部面積 20m2
家賃  70,000円/月 (想定)
管理費 6,000円/月
修繕積立金 1,000円/月(安すぎるまま放置された)
集金代行手数料 2,250円/月 家賃の3% 
固定資産税・都市計画税 100,000円/年(想定)
年間収入 =(70,000 - 6,000 - 1,000 - 2,250) X 12 - 100,000円 = 629,000円
実質利回り =629,000/17,000,000 x 100 = 3.70%

実際には、購入時には手数料、不動産取得税などかかり、その費用を分母に加わると利回りはもう少し低くなります。賃借人(居住者)が見つかることを前提にしていますが、見つからなければその間は、管理費・修繕積立金の支払いだけを行い、家賃収入は入って来ません。

なお年間629,000円が手元に残るわけではなく、多くの投資家は金融機関から借金をしており、利子と返済額を引いたものが手元に残る利益になります。

投資家目線の修繕積立金

先ほどの計算した利回り計算から、修繕積立金が上がると、物件価格どうなるかを不動産コンサルタントとしての実務経験が豊富な棚田行政書士が解説しています。

所有物件を販売しようとしており不動産会社に査定を出したら、1700万円といわれていたのが、マンション管理組合の総会で修繕積立金が月額1,000円から10,000円に値上がりすると、物件価格は、300万円~350万円値下がりするそうです。

修繕積立金の相場は、平米当たり200円/月程度で動画でも4000円程度/20m2であると解説されたうえで、長いこと1,000円で放置したため長期修繕積立金がたまっておらず、極端に値上げせざるをえなくなったという設定で20m2で10,000円となった場合と解説されています。棚田行政書士にもこのような相談があると説明されていますが、10,000円に値上がると、物件価格がどうなるか?を計算してみます。

年間収入 =(70,000 - 6,000 - 10,000 - 2,250) X 12 - 100,000円 = 521,000円
実質利回り =521,000/17,000,000 x 100 = 3.06%

投資家は利回りで物価価値を見るので、修繕積立金が元の4.73%となるように物件価値を見ます。

物価価格 = 17,000,000円 x 3.06/3.70 = 14,059,459円

この計算例ですと役300万円の下落します。

また動画の中で投資家に向けては、1回目の大規模修繕工事が、築12年前後で実施されて修繕積立金を使い切った直後に修繕積立金の値上げが起こるので利回りが下がる前に、売却するタイミングと解説していました。

投資家は投資用(賃借用)分譲マンションを購入する前にまず現状の修繕積立金が専有部の面積に対していくらであるかは計算できます。平米当たり50円とか100円の場合は、いずれ200円以上には値上がりするということを想定して物件選びをすることが大事です。さらに、修繕積立金がいくらあるのか、長期修繕計画があれば、いつどのくらいの費用で大規模修繕工事が実施されるかなどは確認することが出来ます。現在の修繕積立金で積み立てて、予定通りに大規模修繕工事が実施できるかなどをチェックすべきでしょう。

投資用(賃借用)分譲マンションに売却希望の所有者がいる場合は、購入希望者は宅建業者を介して入手することが出来ます。管理組合および、サポートする管理会社がきちんと国交書の標準管理委託契約書の通りの仕事をしていれば、開示してもらえるはずです。

投資用(賃借用)分譲マンションを購入する際に、宅地建物取引業法第16条の2、第16条の4の3、マンション標準管理委託契約書の第14条の1にある通り、分譲マンションの所有者が売却する物件の情報について、管理会社経由で回答を求めることが可能です。

標準管理規約を読むその2 中古マンション物件購入希望者が、物件を判断する際に確認できる書類

大規模修繕工事がまともに実施出来ない程度にしか、修繕積立金が貯金されていない場合は、今後値上がりがあることを想定して利回りを計算して、購入を検討しましょう。

また購入後も、管理組合運営、理事会の活動に目を向けて、管理会社への管理委託料に無駄はないか、高すぎないか、大規模修繕工事の費用が高すぎないかマンション管理組合の目線で監視することが、利回りを維持するためにも重要になります。

まとめ

  • 投資用(賃貸用)分譲マンションは、オーナーが購入した分譲マンションを賃貸用に貸し出して収益を得ることに特化したマンションです。区分所有法/マンション管理規約に従って共用部は管理されますが、オーナーは利回りにしか関心がなく管理組合総会などの出席が悪く管理会社まかせになっている場合が多いです。
  • 投資家目線で修繕積立金を見ると、値上がりすると実質利回りが下がり物件価値がさがります。棚田行政書士の動画では、修繕積立金1,000円が10,000円に上がると、物件価格が1700万円から、1400万円まで下がることになると解説されていましたので、実際に計算してみました。

以上

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