標準管理規約を読むその4、暴走理事長を生まない役員規約

標準管理規約を読むその3では、マンション管理組合の理事長が暴走した場合、解任する方法についてまとめました。
究極的には標準管理規約の第44条組合員招集権を使って、1/5以上の組合員によって理事長の理事の解任と、新理事の議案をつくって臨時総会を招集する方法についてまとめました。

相談を受けた築30年以上の300世近い比較的大きな団地型マンションの組合員の方の場合は、実現できるかどうかわからない。暴走理事長を解任させるにも、軋轢を生みますのでなかなか踏み切れないようです。また、後任の理事長やりたがる人がいないと言っています。
現理事長の任期が終わってから次の理事長の代で、総会決議事項の給排水配管の劣化診断をしてもらえば良いと言っていました。

しかし、「理事、理事長の任期はマンション管理規約ではどう決められていますか?」と確認すると、来季も立候補した場合は長く暴走理事長が居座るかもしれない、と危惧していました。

立候補する理事長がいる場合に規制する管理規則を設けていないと、暴走理事長が長期政権になる可能性があります。

今回は暴走理事長を生まない、居座らせない、任期が来たらそう長くない期間で辞めていただく標準管理規約(単棟型)の第35条とその任期の役員の規約の改定方法と、管理規約細則の案について提案します。

標準管理規約第35条(役員)、第36条(役員の任期)について

第35条(役員) 管理組合に次の役員を置く。
一  理事長
二  副理事長 ○名
三  会計担当理事 ○名
四  理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
五  監事 ○名
2  理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3  理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
*外部専門家を役員として選任できることとする場合
2  理事及び監事は、総会で選任する。
3  理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
4  組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

第36条(役員の任期)  役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。
2  補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
3  任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。
4  役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

*外部専門家を役員として選任できることとする場合
4  選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

あっさりしています。総会で理事と監事を選出して、理事会で、理事長、副理事長、会計理事を決めるとなっています。
任期も〇年としながら再任を妨げないとしています。
この規約のまま、〇の部分だけに人数を入れるとマンション管理規約になりますが、暴走理事長を生み出し、再任が妨げないの規定により暴走理事長が居座り続ける問題が起こりえます。

また標準管理規約では、マンション管理組合の役員への「なりて不足」の問題も解消されません。

理事と知り合いになると役員になってくださいと頼まれるために、なるべく管理組合の役員と交流しないようにするなど役員なりて不足の問題は、組合員間のコミュニケーション不足の問題にもつながる可能性もあります。

多くのマンション管理組合では2年、半数改選とする輪番制とする細則をつくるなどの規約をつくっています。

しかし理事を積極的にやりたい組合員がいる場合もあります。しかし、そのような組合員が暴走理事長になりえる可能性もあります。
これらを踏まえると立候補する組合員の意思も重視しつつ、任期は設けるのがもっともよい規約ということになります。

具体的な管理規約改正案の説明に入る前に、第35条の管理規約の改正の歴史を振り返り、管理組合役員のなりて不足の問題と、その背景を説明します。

居住組合員が役員になるべきか?標準管理規約の35条、36条の改定の歴史と経緯

標準管理規約の役員の規定について、過去2回の改正を振り返ります。

2回前の改正は2011年7月にありました。

(改定前)
2 理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。

(2011年7月改定後)
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。

現に住んでいない組合員も理事になることが出来ますという改定でした。

これは、購入した区分所有者が居住していない分譲マンションが増えて役員のなりて不足が問題になっていることを意識した改定です。
マンション住民が高齢化して退職後実家に戻ってマンションを借家として賃貸している場合、そもそも投資用マンションとして購入して、居住せず賃貸している場合など、区分所有者である組合員が住んでいないマンションが多くなっこと背景にあります。

さらに役員の規定について、標準管理規約は2016年3月に改正されています。2020年現在の最後の改定です。

(2016年3月改定後)
2  理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3  理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。

*外部専門家を役員として選任できることとする場合
2  理事及び監事は、総会で選任する。
3  理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
4  組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

2と3の「組合員のうちから」、「理事のうちから」という文言が削除されたオプションが用意されました。

現に住んでいない組合員も理事になることが出来ますという2011年の改定でも、役員のなりて不足の問題は改正されないため、さらに踏み込んで、区分所有者ではない組合員ではない人が理事に選ばれるオプションを標準管理規約に追加されたということです。

マンションの建物、敷地、付属施設の管理のために区分所有者が支払う管理費、修繕積立金の運用を含めて外部の理事に委ねることは、良いはずがありません。国交省も意見募集を行って改変していますが、積極的な改変というよりは、このような対応をしないとマンション管理組合の役員不足の問題は解消されないと考えたための改変と言えるでしょう。

2016年の改定の標準管理規約のコメントに解説があります。組合員へのなりて不足の問題について代わりに期待されるのが外部専門家と呼ばれるマンション管理士、弁護士、建築士など専門家になります。外部専門家は、役員として意思決定を行えるのは自然人であり、法人そのものは役員になることができないと解すべきであるとしています。

国交省の意図は、役員のなりて不足の問題の解消だけではなく、不正防止の意図もあるのかもしれません。

タワーマンションなどの巨大なマンションでは1棟で500世帯、1500人の居住者がいるようなマンションも出てきており、年間の管理費、修繕積立金が億円の単位の金額になってきます。金額が大きくなってくると、工事会社の選定などで、理事長がワイロを受け取って高い業者を選定をするなど、不正の温床にもなりえます。外部専門家に報酬を支払い役員として入って工事会社選定などで不正が起こらないようにするという意図があるのかもしれません。

外部専門家については、国交省が外部専門家の活用ガイドラインを公開しています。

2016年3月改定の標準管理規約の別添1にある外部専門家の活用パターンの3つの1)理事会は存在して、外部専門家が役員(理事または理事長)になることを想定した場合、2)理事会は存在して、外部専門家が(理事長ではない)管理者になる場合、3)理事会は存在せず、当然理事長も不在で、外部専門家が(理事長ではない)「管理者」になる場合が、について解説しています。

なお、「管理業者(マンション管理会社)が自ら自ら管理者に就任する場合の手法についてお示ししているものではありません。」と管理会社が自社の利益のために外部専門家として管理組合役員にならないように釘をさしています。

マンション管理適正化法をつくったのも管理会社の不正が起こらないようにするためです。国交省は管理会社の不正の是正は毎年行っており、令和元年もマンション管理業者61社に是正指導を行っています。

外部専門家が管理組合の理事となり、外部の工事業者の選定などを行って、その会社と結託して不正を起こせば同じことなので、結局は管理組合がしっかりしないといけないということになります。自分の家は自分で守りましょうということです。

役員なりて不足を充分に意識して、暴走理事長が居座らない、管理規約および、細則をどのようにつくるべきかの案を提示したいと思います。

なりて不足を解消しつつ暴走理事長をうまない管理規約35条、36条案

このブログでは外部専門家を理事にするケースについては、書きません。国交省の外部専門家の活用ガイドラインに規約細則案と、外部専門家への委託契約書案がありますので、参考にするのが良いでしょう。

ここでは、管理組合員の中で、役員を回していくことを前提として、立候補したい組合員の意思を尊重しつつ、なりて不足防止、暴走理事長を生まない、居座らせない輪番制を提案します。
任期は2年として、半数改選とすることで、毎年半分の役員が残るので引き継ぎをしやすい輪番制としています。

理事に関しては現に居住しない組合員も可能として、すそ野を広げますが、理事長に関しては現に居住する組合員がなることにしています。

一概にはいえませんが非在住者は、在住者より収入や生活レベルが高いことが想定されます。所有する専有部は賃貸収入、将来の売却益を得るための目的か、書斎・仕事部屋などセカンドハウスのような扱いとなっており、居住組合員より収入が多く、売却する可能性も在住組合員より高いと考えられます。
居住していない理事が最終意思決定権限を持った理事長になると、意思決定が短期的なコスト優先の判断となる可能性もあります。

例えば、長期修繕計画を作成して、10年後予定の2回目の大規模修繕工事が費用が不足が見込まれる場合の修繕積立金の値上げを検討しているとします。
修繕積立金が足りないなどの事態に対して、考えられる管理費の削減を行ったうえで、修繕積立金の値上げを検討しているとします。

この時、在住組合員の理事長と、非在住組合員の理事長では、判断は変わってくる場合があるでしょう。
もし、非在住組合員の理事長が10年以内に所有する専有部を売却したいと考えているとしたら、修繕積立金を値上げすると売却が難しくなる可能性もあります。そうなると、修繕積立金は値上げしたくないと考えても不思議ではありません。本当は修繕積立金が適正のマンションの方が健全に修繕ができるので価値が高いはずなのですが、購入する人も毎月の支払いが高いマンションは購入したくないと考えることが考えられます。
この例では10年後も住み続ける組合員は、修繕積立金を値上げすることが最適解であり、値上げしないことは将来必要は大規模修繕工事ができなくなりマンションの資産価値を落とすことになるのです。

また別の例として、給排水配管の漏水事故があったとして、漏水が発生しても漏水箇所を修正すれば良いと考えるか、給排水配管についてコストをかけて更新または、更生工事で延命をはかるかなど判断も、10年以内に売却する予定の非在住組合員と、在住組合員では異なるでしょう。

居住者の意思が優先されるようにするのは、理事は非在住組合員も選ばれる、理事長は非在住組合員からは選ばれないという案になっています。

赤字部分が標準管理規約からの変更部分です。

第35条(役員)変更案
管理組合に次の役員を置く。
一  理事長
二  副理事長 A名
三  会計担当理事 B名
四  理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) C名
五  監事 D名
2  理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。尚、役員の選任方法については別に細則を定めることができる。
3  理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。 但し、理事長はマンションに現に居住する組合員のうちから選任するものとする。

第36条(役員の任期)変更案
役員の任期は2年として、原則として毎年役員の半数を改選する。但し、1回限り再任を妨げない。
2 任期の途中において、理事又は監事に欠員が生じた場合には、あらかじめ総会にて選任した補欠理事または監事より補充できるものとする。
3 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
4  任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。
5  役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

なお、A,B,C,Dの和は偶数で、A,B,Cの和は奇数であることが望ましいです。
というのは、理事会の決定も過半数で決議されると規定されています。監事を除く役員が理事ですが、理事が奇数だと決断しないといけない議案がある場合に決議しやすくなります。

つづいて役員選任に関わる細則案です。

役員選任に係る細則案
第1条 役員は原則として毎年半数(A+B+C+Dの半数)を改選する。
第2条 役員候補者に立候補するものは、通常総会前の理事会2週間前までに理事長に書面にて申し出ることとする。
役員候補者が定数に足りない場合は、組合員を割りふった役員輪番表より選出するものとする。
第3条 役員輪番表は、組合員全員が対象で、(棟別に、階別に、部屋番号順に)割り当てて理事ならび監事を決定することが出来る。
第4条 理事、監事の補欠を輪番表順によりそれぞれ(3)名、(2)名を予め選出する。
補欠で繰り上げられた理事は前任者の役職、任期を引き継ぐ。さらに補欠以上に欠員がでた場合は輪番表で繰り上げとする。
第5条 理事長は「現に居住する組合員」のみ就任する。
2 理事長が組合員でなくなった場合、もしくは現に居住しなくなった場合は、再度、理事のうちから、理事会で理事長を選任する。
第6条 理事は1回限り再任可能(最大4年)とする。
第7条 通常総会前の最後の理事会後に、役員候補となった組合員に文書で通知する。
入院等でやむを得ない事情により役員としての職務を果たすことが出来ない場合以外は、役員を拒否することが出来ない。

このような形で、在住組合員、非在住組合員ともに役員が半数改選で割り当てられる仕組みの規約案、細則案を考えました。
暴走理事長の居座り、あるいは、理事長をコントロールして支配する影の理事長の居座りを防止するために、任期2年再任1回、つまり4年を1回の最大任期としています。
どんなにたちの悪い理事、理事長が選出されても、4年我慢すれば変えられるというのが案です。

非在住組合員の役員については、理事会への出席の問題があります。
一般的には、理事会はマンション敷地内の集会室や、マンション近くの公共施設の会議室などが利用される場合が多いでが、非在住組合員の理事会へ出席に関しては、必ずしもマンションに来ていただく必要はありません。
今の時代はオンライン参加の設備を整えれば問題ないでしょう。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務、オンライン会議に慣れた人は増えています。
理事会の議案書は、事前に送付するか電子データで共有すれば非在住役員のオンラインでの参加は全く問題ありません。

もし、非在住者は役員としての仕事を果たせないと考える場合は、第3条の「役員輪番表は、組合員全員が対象」でという部分を、「現に居住する組合員」とすれば良いでしょう。このあたりは、マンションの在住組合員の割合にも関係します。例えば20-30人の小さなマンションで、70%程度が非在住組合員とすると、6-9人程度しか在住組合員がいなくなり、在住組合員だけが役員候補となると輪番表で回すことができなくなります。非在住組合員も輪番制に組み込むことは避けられないでしょう。

輪番表に良いところは、全組合員が役員を経験することです。
管理組合役員経験者なら感じていると思いますが、ほとんどの組合員は管理費・修繕積立金をはらっているため当然のごとく必要な共用部の管理がなされるものと考えています。管理会社が共用部の管理をするものと思っている人も多いでしょう。そんな人に限って管理組合の仕事を批判したり横柄な態度を取ったりする場合もあります。実際には、管理組合役員がボランティアで働いており、管理会社の協力を得て、管理組合総会で決めたことを実行しているに過ぎないのです。

しかし、役員を経験していない組合員はその苦労はわかりません。役員を経験することで管理組合の仕事に理解をして、協力的になることが期待できます。輪番票で選出された組合員の中には、理事会には参加しない、総会も出席しない、議決権行使書も委任状も出さないという役員もいるかもしれません。それでも毎回理事会の議案書と議事録が送付されてくれば少しは管理組合役員の仕事を理解するでしょう。

非在住者が組合員となり理事会出席率が下がることが懸念されますが、理事会は全員出席しなくても成り立つのです。

第53条(理事会の会議及び議事)  理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。

標準管理規約では、半数以上の理事が出席すれば成立するので、全く協力しない理事がいても、毎回理事会欠席理事が半数以上にならない限りは理事会は機能します。どんな規約、細則をつくっても理想の状態にすることは難しいのですが、なりて不足を解消して、暴走理事長を生まない、居座らせない、引き継ぎもしやすい管理組合運営が出来る規約、細則を考えるべきでしょう。

なお、管理規約の改正は第47条(総会の会議及び議事) で総会の特別決議事項となっており、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上の賛成がないと変更できません。管理規約の変更は大変重要なもので、区分所有法の第31条で、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議としており、管理規約改変によって4分の3以下の割合に緩和することは禁止されています。管理業務主任者やマンション管理士の試験問題でたびたび出題されています。国、国交省がマンション管理規約の改変を重く見ていることがわかります。


管理規約の変更そのものも苦労しますが、暴走理事長が生まれる前に、役員とその任期については、規約を改変した方が良いです。

読んでくださったマンション管理組合の運営に興味のある方の参考になれば幸いです。

まとめ

  • 標準管理規約では、役員は、総会で理事と監事を選出して、理事会で、理事長、副理事長、会計理事を決める、任期も〇年再任を妨げないとあっさりした文言になっています。
  • 分譲マンションの非在住組合員が増えてきた背景から管理組合の理事になりて不足を解消するため、2011年の標準管理規約の改定で「現に居住する組合員」も役員になることができるよう改変されて、2016年の改定では、外部の専門家が役員になることができるように改変されています。
  • 役員のなりて不足の問題を踏まえた、暴走理事長を生まない居座らせない、引き継ぎもしやすい役員の選出方法を考慮した第35条の規約案、役員選任に係る細則案をつくりました。
  • 管理規約の改正は第47条(総会の会議及び議事) で総会の4分の3以上の賛成が必要な特別決議事項です。暴走理事長問題が起こる前に、改変しておくのが望ましいです。

以上

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