1年後、後悔しない管理会社の変更のポイントの選考時のヒアリング項目について説明します。管理会社候補からヒアリングをしっかり行えば、後でこんなはずではなかったということになるリスクを削減できます。 前回までの3つのブログを紹介しておきます。全体像を知りたい場合は、以下のブログも参考にしてください。

マンション管理会社も管理組合を選ぶ時代です。まずは関係改善をしましょう。

マンション管理会社変更を考える前に関係改善を

築古・小規模マンションで変更先の管理会社が見つからない場合は、こちらのブログのノウハウ参照

小規模、築古でも断られないマンション管理会社の探し方

マンション管理会社の変更を成功させるためのポイント、それは、現在の管理会社への不満を項目に整理して一つ一つ改善要求してその結果と履歴を残すことです。

マンション管理会社の変更を成功させるための3つポイント

このブログでは、管理会社選考の際、1年後に後悔しない管理会社選考のヒアリングポイントを中心に、変更の流れを説明します。

管理会社に見積もり依頼するための資料

現管理会社には、管理会社を変更する予定があるかは、伝えても伝えなくても良いです。伝えることで、緊張感を高めてもらうのも良いでしょう。

管理会社が新しい管理会社探しを手伝ってくれることはありません。つまり動ける理事が動くしかありません。

管理会社候補には、まずは所在地、戸数、築年数を伝えて提案してもらえるか電話で確認しましょう。メールだと無視されたり、返信にかかるので電話が早いです。所在地、戸数、築年数を伝えて電話ですぐに断られる場合もあります。もし、見積もり提案してもらえそうならば、以下の3点を提出して正式見積もりをお願いしましょう。

  • 現管理会社との管理委託契約書(金額だけを削除)
  • 各種設備点検報告書
  • 管理員業務で、管理委託契約書に記載されていないことがあればその概要をまとめたもの

さらに、マンション基礎情報も整理しておくと間違いありません。

表1 マンション基本情報(例)

マンション名〇〇〇〇マンション○○○○
住所
戸数18世帯
竣工年1998年
階数地上5階、地下1回(機械室)
敷地面積500m2
建築面積300m2
延べ床面積600m2
機械式駐車場なし
エレベータ1基

これらを管理会社候補にメールで送れば見積もってもらえます。

管理委託契約書を渡して良いのか、という問題があります。標準管理委託契約書には、以下の記載があります。

16条(守秘義務)

乙及び乙の従業員は、正当な理由がなく、管理事務に関して知り得た甲及び甲の組合員等の秘密を漏らしてはならない。この契約が終了した後においても、同様とする。

基本的には、管理組合が、管理委託契約書を他社に開示していけない義務はありません。しかし価格は管理会社さんのノウハウなので、消して提出するのが正しいです。

管理会社候補のヒアリング

先の情報を上げると見積もりは可能ですので、見積もり説明の日程を決めて、併せてマンションや設備、地下室、屋上などを見て頂きましょう。同日に、見積もり説明とヒアリングシートに基づいてヒアリングを進めて行きましょう。

1年後後悔しない管理会社の見極めのポイントを上げます。

表2 管理会社選定基準、会社情報、ほかヒアリング(例)

項目確認事項A社B社
会社情報売上・従業員数・管理組合数、管理戸数(マンション管理業協会のHPで調査)
マンション管理業保証機構加入有無 (マンション管理業協会のHPに名前がある)
行政指導を受けていないかチェック(令和2年分の指導は国交省が発表、処分を受けている会社は避けたほうが良いです)
管理委託料事務管理業務費 <=あらかじめ見積もりを提出してもらい整理する
 事務管理手数料
 管理運営費
管理員費
清掃費
 日常清掃費 週4日
 定期清掃業務 年4回
設備点検費
 消防設備点検 年2回
 建築設備点検 年1回
 貯水槽清掃費 年1回
 設備点検費  年4回
植栽管理 年1回
エレベータ保守点検 年4回フルメンテ
機械警備、コールセンター 24時間対応
コストダウン案上記項目に対してのコストダウン案
担当フロントマン経歴、物件数、組織、上司・バックアップ体制
近隣管理物件件数、規模
支払いの引継ぎ
口座開設有無
ファクタリング会社の経由で支払っている場合は、組合員の新規口座開設なしで引き継げる場合がある
専有部サービス専有部の漏水、照明交換、ドア・サッシなど対応可否、月額費用

管理委託料は、現状の管理会社の項目をもとに、見積もりをしてもらい、コストダウン案も出してもらうと良いです。担当フロントマンの経歴や、そのバックアップ体制を確認します。クレームする場合、どのように上司にエスカレーションするかを知るためです。さらに、近隣のマンションの管理物件があるかを聞いておきましょう。たくさんあると今後、管理会社に切られにくいです。

さらに、管理会社変更の際に、組合員に銀行口座を開設する必要があるか、否かは確認しておいた方が良いです。管理組合員の負担があるため、銀行口座開設が無い方が良いです。また、専有部サービスを現在の管理会社に依頼している場合は、同じようなものが提供できるかどうか、月額料金と併せて聞いてみましょう。

表2 管理会社選定基準、管理組合要望へのヒアリング(例)

項目質問A社B社
理事会運営議案を毎回3週間前に理事長確認、2週間前に理事に配布してもらえるか?
議事録案作成は1週間以内に対応してもらえるか?
IT対応Zoomなどオンライン理事会運営は可能か?
議事録、月次管理報告などの共用ドライブでの運用などの対応、その費用?
清掃業務清掃員は社員?、アルバイト?外注?
現在管理員(を引き抜いて)雇用可能か?
巡回指導員の指導体制
損害保険代理店でない場合の火災保険に、緊急時の対応をしてくれるか?
有害行為の中止対応具体的な事例をあげてヒアリング
管理費等滞納対応手順、何か月まで対応可能か?
顧客満足度調査回数、ヒアリング対象、そのフィードバック
大規模修繕工事元請けをするか?設計・監理による対応か?
設計書(工事仕様書・設計明細)の作成を請け負ってもらえるか?
長期修繕計画作成可否(自社or外注)、納期?

さらにヒアリング項目を整理します。現管理会社への不満の内容について聞いてみると良いでしょう。前回のブログで、現管理会社へ改善の申入れをすることについてまとめていますが、現管理会社への要望に対応してもらえるかを確認しましょう。

その他、IT化など、コロナウイルス感染症対応以後に当たり前になっているオンライン理事会対応など、顧客満足度調査などをヒアリング項目に追加しています。

このようにあらかじめ項目を整理してヒアリングしましょう。なお、管理委託料はとても大事ですが、それだけで判断すると、役員が1年後に批判されて後悔することになります。納得ができる対応をしてくれる管理会社を候補に選びましょう。

忘れてはいけない大規模修繕工事についてヒアリング

管理委託料も重要ですが、大規模修繕工事の時に、どのように協力してくれるのかは、しっかりヒアリングしましょう。

管理会社は工事の元請けをする会社と、元請けをしない会社がありますが、それぞれ特徴があるのですが、前社の場合は、管理委託料は安くても管理会社主導で、大規模修繕工事の提案が進み、高い工事費になる傾向にあります。後者の場合は、管理委託料は高めですが、大規模修繕工事では必要な工事以外は勧めない、設計書により入札で工事会社を募集する透明性の高い進め方になる傾向です。もちろんどちらも管理会社に全面依存では高い工事になってしまうことはあります。

どちらの会社と付き合うにしろ、大事なのは管理組合に、大規模修繕工事の設計書(工事仕様書、設計明細)を作成してもらえるかを確認しておきましょう。

大規模修繕工事で痛い目に合わないように管理会社選びから気をつけましょう。


大規模修繕工事、元請けをする管理会社、元請けしない管理会社、どちらが良いの?

管理費の固定支出10%削減に成功しても、大規模修繕工事が20%高くなるとしたら、とっても、1年後は管理会社変更に満足しても、大規模修繕工事のタイミングで後悔することになります。

提案してくれる会社が1社もない場合

小規模、築古マンションでは、提案する会社は1社も見つからない、管理委託料の値上がりを避けられない、提案内容も管理組合の期待を下回る対応しかなかったという、残念な結果になったかも知れません。

労働人口減少、最低賃金は上昇、社会保険料の料率がアップ、経済成長はしていない時代ですので、管理会社が管理組合を選別する時代なのでやむを得ない面もあります。

自分たちの創意工夫で行き残ることを考えないと行けません。項目を減らして管理会社への委託事項を絞り込んでいくことが重要です。

少しだけ例をあげます。

  • 給水設備を直結給水方式に変更して維持費を下げる。
  • 清掃業務を切り離して外部に委託する。ゴミ捨てだけは有償の当番制にする。
  • 地震保険を辞める。火災保険をマンションドクター火災保険にする。
  • エレベータを独立系会社に見積もり依頼する。

仮に管理会社候補が、値上がりを避けられないようでしたら、これらを組み合わせることで、固定支出を抑えることなどを考えていくことが大事です。会に管理会社変更議案をあげる際に、現在の管理会社の見積から固定支出が下がていると賛成を得やすいです。

ヒアリング会と管理会社候補の選考

理事会では、良い会社2社を選びます。ヒアリング会は、組合員全員に参加してもらう形で実施します。3社以上ですと長すぎて集中力が切れてしまう事、日程調整が難しいので2社に絞り込むのが良いです。

理事会では、現管理会社にもう一度候補としてヒアリング会に参加してもらうかどうかよく議論してください。現管理会社を変更ありきで進めているならば、当然、対象から外して、声をかける必要はありません。

ヒアリング会は、最低でも2週間前に、管理組合員に周知しておき、参加してもらうことが大事です。現管理会社との関係がうまく行っている変える必要がないという組合員ほど参加してもらうべきです。

組合員に管理会社専攻の過程に参加してもらうことが大事です。質問はなるべく組合員がするようにお願いすると良いでしょう。

予め1時間など時間割を決めて、室外で待機してもらって順番にプレゼンとヒアリングをする形式になります。必ず、担当して頂く予定のフロントマンにも参加してもらって、経歴や、重視していることなど話してもらいましょう。管理会社の実力を測る上で重要なポイントになります。

終了後に、出席した組合員から意見を聞くか、アンケートに答えてもらって、その後、理事会を開催して、総会に上程する管理会社を決定するのが良いです。何日経過しても迷ってしまうので即決めてしますのがおすすめです。

このタイミングで、現管理会社にも次回通常総会で管理会社変更の議案を出すから協力してもらいたいと伝えます。総会の議案作成は、現管理会社がつくります。来季予算もつくってもらうのも、管理会社の仕事なので気を遣ってお願いするようにしましょう。

総会承認後の管理会社の引き継ぎについて

組合員の連絡先情報や、過去の決算書、建物や設備の図面、遠隔監視システム等、管理費等の口座振替先などは、引き継ぐ管理会社からリストが出て、現管理会社との間で実施してもらえます。

抜け落ちる可能性がある書類は、マンションの修繕履歴です。引継ぎ出来ないと、後日、引き継いだ管理会社が長期修繕計画が立てられなくなります。

日ごろから現管理会社には、修繕履歴の作成を依頼しておくと引継ぎがスムーズです。修繕履歴は、現管理会社が標準管理委託契約書に基づいて契約しているならば、別表5の宅建業者の求めに応じ絵開示する事項という項目にある専有部の売却希望者があった場合に、物件購入を検討する人に対して、宅建業者経由で提示する書類に、共用部分等の修繕実施状況(工事概要、実施時期)というのがありますので、必ず作成しています。これは引き渡すように現管理会社に要求しましょう。

管理組合は、常に修繕履歴を電子データにして保管しておいたが良いですし、お願いすれば出してくれるはずです。

その他、清掃業務の引継ぎは、現管理会社の清掃員の仕事にノウハウがある場合は、最終回に新しい清掃員に来てもらい参加してもらうなど、ノウハウを引き継ぐ段取りを依頼しましょう。

清掃が一番目につくところなので、管理会社を変更した直後に清掃品質が落ちていると組合員の不満が出ます。逆に言うと清掃がきちんとしていると、他に問題があっても、組合員には見えないので、文句は言われにくいのです。

まとめ

  • 管理会社に管理委託の見積を依頼するには、管理委託契約書のコピー(管理委託料の金額のみ消したもの)と設備点検報告書等があると提案してもらえます。電話で相談してしまったほうが早いです。
  • 小規模、築古マンションですと提案してもらえる会社は少なく、管理委託料は値上がりする可能性もあります。そんな時は、管理項目を減らすなどでコスト削減を併せて考えましょう。管理会社を変更するにあたって管理委託料が上がると総会議決のハードルが上がります。
  • 管理会社候補には、事前にヒアリングシートをつくってヒアリングしましょう。とくに現管理会社の問題点をどう解決してくれるかという視点でヒアリング項目を整理しましょう。
  • 最終選考は組合員が参加してもらって、ヒアリング会を実施して決めましょう。終了後すぐに理事会を開催して管理会社候補1社に絞り込みましょう。

以上

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