クレーマ組合員は、どこのマンションにいます。あれこれ要求型クレーマ、何でも否定型クレーマ、気まぐれ無責任発言型などいろいろいますが、最強なのはインテリ型クレーマ組合員。

法律や規約に詳しく、交渉能力が強く、声が大きく妥協しない。そんなインテリ型クレーマが最強です。総会で決議が取れない空気を作り妨害することもあります。

このようなクレーマ組合員、抑え込む方法は、このブログにまとめています。

大規模修繕工事など大きな議決をする総会で議決できないような空気を作られて決議に失敗する。がんばってきた理事は意気消沈。もう一度、総会まであれこれやり直し。大変な作業になります。どうすればうまく総会議決できるか?


クレーマ組合員に総会議決を阻まれない対策

標準管理規約の第1条には「区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的とする」という記載があります。共同の利益を考えて管理組合活動をしないと行けません。

インテリ型クレーマ組合員が管理組合の理事に立候補して理事会に入って来て自分の主張ばかりして、その意見が組合員の「共同の利益」になるものなら、大いに進めて頂ければ良いのですが、そうではない場合はどうしますか?

他人の考えていることはわからないものです。「何を考えているかさっぱりわからない」とさじを投げて付き合わないと言うのが、利害関係のない他人との交友関係では正解です。

しかしマンション管理組合の理事で、直接の利害を共有しており、付き合わないわけに行きません。そんなクレーマ理事ともお互いのことをよく知り、仲良くなっていくのが最適解ですが、これは時間がかかります。生理的に合わない人の場合では不可能かもしれません。 そんなインテリ型クレーマ理事を、制御する確実な方法についてまとめます。

インテリ型クレーマ理事の話を聞いて妥協案を提示する

専有部の給水・給湯管の修繕に関する件で意見が割れました。

図1.専有部の給水管

専有部の配管は、床の下の横引き配管のことです。

クレーマ理事の専有部配管に関する主張

  • 専有部の個人の財産なので個人の負担で配管を交換すべき。個人の選択の自由は保障されるべきだ。
  • 修繕積立金を専有部の修理につかうべきではない。
  • 専有部リノベーションをして自費で専有部の配管を更新した人には不平等
  • 修繕積立金の払い戻しは標準管理規約で禁止されている。
  • 専有部の配管について管理組合で工事したらその後の保証はどうするのか?

標準管理規約でも第21条の2には、「占有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分と一体として行う必要があるときは、管理組合が行うことができる」とあるが、そのコメントには、「但し、国交省の解説である標準管理規約のコメントは、「配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである」とされています。

2021年6月の標準管理規約の改定では第21条のコメントに「専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。」と追加されています。規約の改正、補償などを留意すれば、専有部の配管交換に修繕積立金を使うことも、肯定されました。

つまり2021年6月以降の標準管理規約は、専有部配管については、専有部負担でも組合負担でも可能ですが、組合負担の場合管理組合員に平等であり賛同してもらうことが大前提であると言えます。

他の理事の 専有部配管に関する主張

  • 専有部の配管は専有部の財産であるが漏水したときに迷惑がかかるのは、専有部の下の階
  • 他人に迷惑をかけることを回避することも考えるべきである。
  • 修繕積立金をつかい専有部の負担を極力減らして漏水リスクのある専有部配管を更新すべきである。
  • マンション火災保険のオプションで水漏れ調査は保険の対象で費用は出るが、原因が配管の経年劣化であれば保証対象外となり、水漏れが専有部配管であれば、補修は専有部負担となり大きな出費になることは避けたい。

これらが他の理事の意見です。真っ二つに意見は分かれていました。

妥協点をめぐる話し合い

個人で配管工事を実施希望する専有部がある場合は、「管理組合が専有部配管一斉に工事実施した場合に、自費工事していただいた専有部の工事確認後に、使用した修繕積立金を専有部面積割でその専有部に戻すことでどうか?」と妥協案を出すと、「修繕積立金の払い戻しは標準管理規約で禁止されているから不可」とのご主張で、「専有部の配管更新をしたい有志で別途お金を貯めて実施すべき」と一歩も譲らない姿勢でした。

専有部の給水・給湯管について劣化状態を診断してその後、どうすれば良いか検討しましょうと提案しました。劣化診断の予算取りをするべく給排水設備会社から見積もりを取り、時期総会に向けて予算取り承認を願いたいと説明すると、「個人の財産である専有部配管の調査にも管理組合の予算を使うことは不可、実施する部屋だけメリットがあり不平等」とこれにも反対。専有部の給水・給湯管について、2部屋を2か所ずつマイクロスコープで確認する費用は、10-15万円程度でしたが、これも否決されて、劣化状態の把握も出来なくなりました。

このままでは、マンションの専有部配管の課題は事故がおこるまで解消されないことになります。共用部の給水竪管も40年近く更新していない部分があり修繕する時期を迎えているため、クレーマ理事にどうすれば良いのか提案を求めました

クレーマ理事の弱点に有識者の意見を使う

クレーマ理事に提案を求めると、電気防食の10年保証付きのソリューションを共用部の給水配管に取り付けるというものでした。さすがに築40年近いマンションに更生工事はないでしょう?と耳を疑いましたが、本人はいたって真剣でした。また赤錆を黒錆に効果があると、どうもおかしな主張もされていました。

電気防食の会社に問い合わせ、直近の水質検査の結果を渡すと、電気防食10年保証はできるが、築40年近いマンションなので更新工事を検討した方が良いのではないか?というアドバイスでした。さらに、赤錆化をさせない効果はあるが、赤錆を黒錆にする効果はないとはっきり確認がとれました。さらに、給湯銅管にピンホールが空く原因は、流速の違いが生じるエルボやハンダ付け部分に穴(ピンホール)が開くことが原因なので効果がないことも確認しました。インテリ型クレーマもいつも根拠ある正しいことを言うわけではないこともわかりました。

次の理事会で、ヒアリング結果を説明すると、今後はセラミックフィルターによる酸化被膜法があると言い出しました。こちらは確かに赤錆を黒錆に変える効果をうたっています。しかしこちらも会社に確認すると、給湯銅管のピンホール対策にはならないという確認がとれたので、その点を伝えると、「給湯銅管は専有部の問題で組合が関与すべきではない。築40年くらいでは穴は空かない」と言い出して、そもそも専有部の配管の事は管理組合として考えるべきではないところで、根本がずれているため、話は一向に進展しませんでした。

しかしインテリ型クレーマ理事も、配管の更生・更新についての事例については、十分な知識があるわけではないことがわかり、次のうつ手を考えました。

次の理事会で、専有部の給水管、給湯銅管の問題については、実績豊富な専門家を理事会に招聘すべく、東京都防災・建築まちづくりセンターのマンションアドバイザー派遣制度を利用して、専有部配管工事に実績のあるマンション管理士を理事会に招聘しました。

インテリ型クレーマ理事は、その理事会に欠席でした。自分に分が悪い会合には欠席するという習性があります。

専門家の意見で確証が得られたことは以下の通り。

  • 給湯銅管はピンホールがあくことは避けられない。施工状態が良いと長持ちするが築40年過ぎればどのマンションでもピンホールはあり得る。
  • 管理組合が専有部配管工事を実施したら、以後は管理組合が保証すれば良い。瑕疵保険もある。
  • 管理規約は書き換えが必要と考えるなら総会決議して書き換えればよい。

このような経緯や、専門家の意見も、理事会議事録として組合員に公開したことは言うまでもありません。

組合アンケートで「共同の利益」を確認する

情報が集まったところで、組合としてアンケートを実施することにしました。以下の内容にしました。

理事会では十分な議論が出来たため、給水・給湯配管の材質や、修繕などの履歴を説明した上で、組合員の直接的な意見を集めて、「共同の利益」が何であるかをはっきりさせることが狙いです。

総会前の最後の審議で議案が多いことなどを理由に、クレーマ理事はアンケートにも反対しましたが、しかし押し切りました。

アンケ―トの内容

Q1 専有部の配管、給水管・給湯管・雑排水管・汚水配管について更新しましたか?

□1.Yes(実施した場合はおおよその時期    年ごろ 配管の種類        )

□2.No

□3.不明

Q2 今後の修繕の方針(建物全般を範囲)としてどのような方針で進めるべきと考えますか?

□1.マンション寿命は60年と言われているので、修繕にコストをかける必要はない。

□2.現在の管理費・修繕積立金の設定の範囲内で修繕を行い、次世代に引き継いでいきたい。

□3.その他、自由記述

Q3 専有部の配管の修繕について、どのように考えますか?

□1.専有部は区分所有者の財産であり、修繕積立金を使用すべきでない。

□2.専有部の配管工事は事故がない限りは区分所有者個人では手がつけづらい。専有部配管工事を既に実施済または、工事する予定の区分所有者との間で公平性を考慮した上で、管理組合が主体で、専有部配管についても必要な修繕を検討すべきである。

□3.その他、自由記述

アンケート結果は、80%の組合員から回収出来ました。

Q1 Yesが1件(5%)(中古購入時に配管も更新したと聞いているが本当のところは不明)、Noが65%、不明30%

Q2 1が1件(5%)、2が77%、その他が18%

Q3 1が0件、2が95%、インテリ型クレーマのみが、その他を選択

規約改正に必要な総議決権数の3/4以上の回答のうち、Q2の長寿命化には77%の賛同が得られ、Q3で専有部の配管工事にははっきりと管理組合主体で専有部の配管工事を実施すべきという意見でまとまったので、今後は規約改正をおこなって、修繕積立金を使って専有部の配管工事の準備をすることになります。

この先、インテリ型クレーマ理事がどんな反撃をしてくるかはわかりませんが、恐らく8割回答率で自分以外は、「管理組合主体で専有部の配管工事を実施すべき」と意見をしている以上は、「共同の利益」は明確になり、勝負あったと見て良いでしょう。

自分の主張ばかりするクレーマ理事と、話し合いでは妥協点が見つけられない場合は、組合員のアンケートによって、「共同の利益」が何であるかを明確に示すことが有効であるという結論でした。審議の過程は、議事録を配布する事で組合員にも良く説明することが大事であることは言うまでもありません。

まとめ

インテリ型クレーマ組合員が理事会に入って来て、自分の主張ばかりして譲らない時は、話し合いで合意できる点をみつけます。どうしてもダメな場合はクレーマ理事の弱い部分について、有識者をつかった反論をします。最後に組合員アンケートを実施して、「共同の利益」を確定させることで、制御することが出来ます。

以上

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