「マンション専用部分等の配管類更新による再生事例調査報告書」を読む

2017年2月に国交省の住宅市場整備推進事業で特定非営利活動法人「全国マンション管理連合会」が、首都圏、関西、中部、北海道から全国の32の事例、うち給水管・給湯管・雑排水管・汚水配管のいわゆる配管については、共用部・専有部で27の事例についてマンション専用部分等の配管類更新による再生事例調査報告書(以後、再生事例調査報告書)にまとめています。

81%が築30年以上のマンションです。築30年以上のマンションの共通の課題が、給水・給湯・雑排水・汚水管の工事であることがわかります。

今回は、この報告書を読み解き、築古マンションで、管理組合として実施すべき専有部の配管工事について自分の意見をまとめたいと思います。

給湯・給水・雑排水管の共用部・専用部の所有者、責任について

共用部の更新工事は言うまでもなく、修繕積立金で実施すべき工事の対象となります。専有部の床下の配管は専有部となります。給水管の共有部との専有部の境界は、標準管理規約の別表2 共用部分の範囲の説明で「給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管」とあるため、水道メーター後が専有部になります。

なお、給湯・給水・雑排水専有部の扱いについては、標準管理規約の第21条(敷地及び共用部分等の管理)の2とそのコメントを読みます。

標準管理規約の第21条(敷地及び共用部分等の管理)の2 占有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。

そのコメント(国交省の解釈)では、以下となっております。

8.配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。

2021年6月現在、国交省は改定に向けてパブリックコメントを終えたところです。確定はしていませんが以下のコメントが上記のコメント8に追加される改定の見込み(リンクのP12参照)です。

なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。

専有部は区分所有者の所有物で個人負担が原則になっています。この改定には、パブコメに私の意見も出しています(こちらのブログ参照)。管理組合が修繕積立金をつかって専有部の配管の工事がしやすくなるコメントがつく予定です。

専有部床下配管はどうなっているのか?

図1.専有部床下配管が床下スラブの上(近年の施工)

専有部の床下配管には二種類があります。

床下配管が床下スラブの上を通っている図1の専有部床下配管が床下スラブの上(近年の施工)と、床下スラブの下を通っている図2の専有部床下配管が床下スラブの下(過去にあった工法)の二つがあります。ケース2は近年のマンションでは見かけませんが、30年前のマンションにはありました。

図1の場合が、ほとんどのマンションになりますが、床下の配管は、専有部の区分所有者の所有物で、区分所有者が負担しなければ行けません。

管理組合負担で一斉に専有部の工事を実施するためには、規約の変更を実施したり、すでに自己負担で交換した区分所有者などへの配慮が必要になります。

図2.専有部床下配管が床下スラブの下(過去にあった工法)

図2の場合は、平成12年3月21日の最高裁判所第三小法廷、建物共用部分確認等請求事件での判決で、床下コンクリートスラブと階下の天井の間にある排水管は、区分所有者全員の共有部分にあたると判決が出ています。

つまり図2の場合は、逆に管理組合で床下配管については、修繕積立金をつかって修繕しなくてはいけないということになります。判決文は、専有部の配管にも関わらず、下の階の専有部に入らないと修繕出来ないため、専有部に属さない付属物であり共用部分にあたる、としています。

しかし、築30年のマンションでも、図1の例の方が多いのですが、その場合床下配管は、専有部の配管になりますが、再生事例調査報告書には、主に築30年以上のマンション管理組合の修繕積立金で100%負担した21例、10~65%負担した6例が紹介されています。再生事例調査報告書は、先進的な例であり専有部の配管も管理組合で更新していますが、現存する築30年以上のマンション管理組合で専有部の配管を、管理組合が一斉更新した例の比率は少ないと思われます。

再生事例調査報告書の事例概要

共用部・専有部で27の事例の内訳、管理組合で一斉実施した配管工事の内容を表にまとめると以下のようになります。

表1 再生事例調査報告書 工事実施例(同じ行が、同時に工事した工事例の数)

雑排水
竪管
20例
給水
竪管
18例
汚水管
竪横管
7例
雑排水
横管
19例
給水
横管
22例
給湯
横管
20例
2
1
22
222
33
444
2(※)2(※)2(※)2(※)
111
77777
11111
444444
竪:共用部竪管、横:専有部横引き管、汚水(トイレ)、給湯管は全マンション専有部に設置されており横管のみ
※)再生事例調査報告書によると、床下スラブの下に階上の配管が通す図2であり漏水事故を契機に更新とあります。

27件のうち最多が、給水横管の22が専有部の配管にも関わらず最も多く更新を実施しており、続いて給湯横管と雑排水の竪管が20と多いです。

30年経過すると、漏水がおこるということは確かなのでしょう。

汚水管の更新例が少ないのは、流すものが限定されているので、油や水、食べかすが流れる雑排水管よりは寿命が長いと言えそうです。

すべての事例の配管が記されているわけではないですが、本文から読み取れる記述からは以下のような材質に更新されていることがわかります。

表2. 再生事例調査報告書 工事実施例

雑排水
竪管
給水
竪管
汚水管
竪横管
雑排水
横管
給水
横管
給湯
横管
更新前SGP(※1)
or
SGP(白)(※2)
SGP-V(※6)
or
SGP(白)(※2)
SGPSGPまたは、塩ビ(PVC)SGP-V(※6)
or
SGP(白)(※2)
銅管
更新後DVLP(※3)
または
TMP(※4)
または
FS-VP(※5)
記述なしFS-VP(※5)FS-VP(※5)ポリエチレン樹脂管アルミ三層管
※1)炭素鋼鋼管、黒ガス管(SGP)
※2)炭素鋼鋼管、白ガス管(SGP白)
※3)排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DVLP)
※4)耐火二層管(TMP)
※5)耐火塩化ビニル管(FS-VP)
※6)給水用塩化ビニルライニング鋼管(SGP-V)

30年経過して鋼管、白ガス管、給水用塩化ビニルライニング鋼管など鉄系の配管が、主に錆で劣化して、漏水につながっていることがわかります。更新後は、多くが樹脂系に置き換わっています。

再生事例調査報告書には記述はありませんでしたが、給水縦管にはステンレス管(SUS304)、耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管(HIVP)または、耐衝撃型高性能ポリエチレン管(エスロンハイパー)などの樹脂などが使われるようになっています。

なお、更新時に給水管塩化ビニルライニング鋼管(SGP-V)を使用することはその寿命を考えると望ましくありません。ライニングされていても継ぎ手部分からの劣化は避けられないからです。

工事金額については、共用部排水縦管工事の11万円/戸から、給水管・給湯管・雑排水管まで含め174万円/戸と幅があり参考にならないので記述しません。共用部・専有部をすべて実施すると大規模修繕工事以上の出費になることもあります。コストを削減した例としては、専有部給水管を一部、床下ではなく施工しやすい天井面に変更した例などがあげられています。

雑排水竪管の更新の実例

雑排水管の竪管更新の実例です。この写真は、再生事例調査報告書の中のものではありません。

雑排水管はパイプシャフト(PS)をマンションの上から下までまっすぐ通っています。最上階からは、通常屋上まで排水竪管という通気管がつながています。

配管交換前 左側が更新した雑排水縦管(SGP白)

防火区画に囲まれているため工事は大掛かり

配管交換後 左型が更新した雑排水管(FS-VP)上部は排気管であり、劣化していないため更新していない

工事終了後の仕上げ。壁紙に線が入っているのは、工事後のつなぎ目であるため

間取り図を見ると、PSと書かれた部分に、雑排水竪管が通っています。ほとんどのマンションが耐火構造で設計されており、火災の際に、配管を経由して上下階に火が燃え広がらないように防火区画に囲まれています。なお、近年のマンションは配管の材質が基準を満たしている場合は、必ずしも防火区画に縦配管は入っていません。

共用部の竪配管工事といっても、内装工事が含まれています。この工事の例の費用の内訳では、共通仮設7%、配管工事(材料含む)43%、内装復旧工事28%、現場管理費・廃材処理費・運搬費・諸経費22%でした。

再生事例調査報告書によれば、工事費の内訳としては、100万円/戸の工事に対して、約40万円が配管工事で付帯建設工事、つまり内装工事が約30万円と割合が大きいことが指摘されています。専有部への負担も大きいため、予算が許すならば一度で共用部・専有部の配管工事を済ましてしまうのが効率良いです。

再生事例調査報告書、進め方について

総会決議に過半数決議が12例に対して、共用部の変更扱いとして、総議決権数の3/4の決議をした例が16例ほどあります。専有部の工事に修繕積立金を使用するため、共用部の範囲が変更になるという解釈をしているのだと思われます。

管理規約改正をしたのは6例にとどまっています。改正内容は詳細には触れませんが、専有部の配管も管理組合で実施できるということを管理規約に明記する変更をしています。

自由記述の意見はいかのような意見が出さているようです。

・合意形成(9件)、非同意者・個別条件について(8件)、管理規約の整備(6件)、技術上の問題(5件)という順番で意見が多かったようです。

個人の資産である専有部の床下配管を、管理組合として共用部の工事としてすすめることなので、合意形成、非同意者・個別条件に時間がかかるのは当然でしょう。

築30年の床下専有部配管の更新について

さて、ここからは、私の意見です。

床下の専有部の配管の更新も管理組合で実施すべきというのが私の意見です。専有部の配管が漏水した場合に迷惑がかかるのは、下の階です。そして、個人の費用ですぐに改修することは出来るような規模の工事ではありません。所有権が専有部の区分所有者にあると言う事にこだわって、漏水事故が多発する前に、管理組合主体で専有部の配管も更新すべきです。マンションの長寿命化を考えるのであれば、管理組合で実施して、築50年でも選ばれるマンションにしましょう。

築30年以上のマンションの事例にもあったように、劣化が早いのは、炭素鋼管SGPまたは、白ガス管SGP(白)の給水・雑排水管、および、給湯の銅管、塩ビライニング鋼管の給水になります。

まずは、管理組合理事会で、組合員への実態および、意向調査アンケートから実施ましょう。以下3点は最低限、確認しましょう。

  • 専有部の配管、給水管・給湯管・雑排水管・汚水配管について更新したか?
  • 今後の修繕の方針(建物全般を範囲)としてどのような方針で進めるべきか?(選択枝:60年、出来るだけ長く、その他自由記述、など)
  • 専有部の配管の修繕について、どのように考えますか?(選択枝:個人で実施すべき、管理組合が主体的に検討・実施すべき、その他自由記述、など)

意向調査の結果を実施して、管理組合主体で専有部の配管も実施できる合意形成が出来たら専有部の配管の材質を、竣工図で確かめましょう。炭素鋼管SGPまたは、白ガス管SGP(白)、銅管、給水用塩ビライニング鋼管などは、劣化診断調査の対象になります。管理会社にお願いしても良いですし、給水設備工事会社に依頼することもできます。

内視鏡カメラでみるか、少し大きな費用はかけて、抜管(ばっかん)することでさらに状況がわかります。

排水配管には、樹脂ライニングによる更生工事(延命)という選択もあります。劣化状態を見て検討することになります。給水配管および給湯配管に関しては、樹脂ライニング、電気防食ほか、更生延命も考えられますが、もし築30年を経過しているならば更新すべきです。ステンレスや、樹脂に更新してしまえば、錆びないため交換後に50年使用できるからです。

修繕費用は、戸当たり100万円を超える場合もあることが再生事例調査報告書にあります。

タイミングは、3回目の大規模修繕工事の時期と、給排水管更新工事の時期が重なります。長期修繕計画には、専有部の配管工事は含まれていません。3回目の大規模修繕工事の時期に、戸当たり100万円の予算が確保できるかも併せて、見ておきましょう。

更新工事を実施ということであれば、同時に管理規約の変更と、見積もり作業をすすめて管理組合が主導で共用部および、専有部の配管を同時に検討を進めるべきです。

長くなりましたので、床下専有部の配管の予算の割り振りなどについては、また別の機会に改めてまとめたいと思います。

まとめ

  • 再生事例調査報告書には、給水管・給湯管・雑排水管・汚水配管のいわゆる配管については、共用部・専有部で27の事例が紹介されています。
  • 再生事例調査報告書には、給水横管、給湯横管、雑排水竪管、雑排水横管、給水竪管の順番で工事実施が多いです。
  • 27例中、修繕積立金で100%負担した21例、10~65%負担した6例が、専有部配管についての工事も管理組合が主導で実施しています。
  • 総会議決は、共用部の変更扱いとして、総議決権数の3/4の決議をした例も16例あります。管理規約を改正した例は6例のみでした。
  • 専有部の配管が漏水した場合に迷惑がかかるのは、下の階です。所有権が専有部の区分所有者にあると言う事にこだわって、漏水事故が多発する前に、管理組合主体で専有部の配管も更新すべきです。

以上