中小分譲マンションのエレベーター独立系保守会社の使い方

日本のエレベーターは、三菱ビルテクノサービス、日立ビルシステム、東芝エレベータ、フジテック、日本オーチス・エレベータの5社でほぼ市場を独占しています。

エレベーターの保守は、エレベーターメーカーが保守するメーカー保守と、独立系保守会社による保守という選択があります。

エレベーターの設置台数は、一般社団法人日本エレベーター協会の2019年度昇降機設置台数等調査結果報告によれば、2019年度の新規設置分は24,861台、2020年3月でトータル設置台数は766,354台です。そのうち共同住宅向けエレベーターの保守台数は、261,455台(34%)とありますが、こちらは分譲マンションと賃貸マンションの和と思われます。

一般社団法人マンション管理業協会によれば、日本には、2020年4月でマンション管理業協会の会員で管理している分譲マンション棟数が、119,866棟(2021年4月)あります。エレベーター付が80%と仮定して約95,892台が分譲マンション、総数766,354台の12.5%が分譲マンション向けに設置されたものという計算になります。

今回のブログでは、15階建て以下程度の中小規模マンションに入っている中低速のエレベーター(最大120-105m/s)の保守と、リニューアルについてメーカー、独立系保守会社の使い分けについて考えて見たいと思います。

なお、タワマンなど高層ビルで使われている高速エレベーターは、特注品であるため、独立系保守会社が保守できる余地はありません。

独立系保守会社、業界3位の10,000台のエレベーターコミュニケーションズ株式会社(以下、エレコミ社)に取材させて頂き、見解をまとめさせていただきました。

エレベーターメーカーと独立系保守会社の歴史

エレベーターは販売時の利益が十分ではなく、安全性確保を理由にエレベーターメーカーが保守メンテナンスを抱き合わせ販売してた歴史があります。しかし、1993年の東芝エレベーターテクノス事件大阪高判や2011年の日立ビルシステム訴訟など、保守部品の納期を遅らせるなど、出し渋るエレベーターメーカーに対して独立系保守会社が損害賠償請求をして、独立系保守会社が勝訴したことなどから、現在は、保守メーカーに対して部品が供給されないことはなくなっています。

自動車で言われるリコールに相当する制御ソフトウエアの更新が必要となる場合も、製造物責任のあるエレベーターメーカーから、独立系保守会社にも制御ソフトウエアを供給してもらえるようそうです( エレコミ社 )。

5大メーカー以外で自社以外の保守を引き受けるエレベーター保守会社の大手の会社は以下の通りです。

  • JES(ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社) 67,500台(2021年3月現在
  • SEC(エス・イー・シーエレベーター株式会社)非公開
  • 阪神輸送機株式会社 11,600台(2020年10月現在)
  • マーキュリーアシェンソーレ株式会社 非公開
  • エレベーターコミュニケーションズ株式会社 10,000台(2021年9月エレコミ社より)

JESとSECは同じくらいの市場を持っていると仮定して、同じ台数として計算して、公開されている2社を加えると、156,600台になります。上位5社の保守台数は、少なくても国内のエレベーター台数766,354台の20%を占める計算になります。

決して小さな割合ではなく、独立系保守会社は選択肢に入れて、管理費支出の固定費削減を検討すべきと考えています。

エレベーターのタイプ別分類と現状

中高層マンションで使用されるエレベーターの油圧式とロープ式に大別されます。油圧式は電動ポンプで油圧を制御しその圧力でかごを昇降させます。ロープ式では、「かご」と「釣合おもり」の重量をバランスさせ、上部に取り付けた巻上機で駆動させます。

図1 油圧式エレベーター(間接型)地下または1階に機械室

図2 ロープ式エレベーター(機械室あり)屋上に機械室

油圧式エレベーターは、多くが1990年代から2000年代までに製造中止になっています。5大メーカーは既に製造していません。一般的に地下に機械室が必要で大がかかりであることや、オイル安全性などの問題からロープ式に置き換わっています。

エレコミ社 の2021年6月のプレスリリースによれば、以下のタイミングで保守部品も製造停止するそうです。

  • 2020年停止:日立ビルシステム・フジテック
  • 2023年停止:三菱電機
  • 2024年停止:東芝エレベータ

分譲マンションのエレベーターが油圧式の場合、早めに今後のメンテナンスについて考えておいたほうがよさそうです。

保守について

保守契約には、二種類あります。小部品(ヒューズ、照明部品等)の交換と、グリス、オイルだけを保守費用に含め、それ以外の部品の保守は都度発注となるPOG契約(パーツ・オイル・グリス契約)と、フルメンテナンス契約と言って、主要な消耗品であるロープ、ケーブル、制御装置内のプリント基板、制御リレー、スイッチなどの交換業務を保守料金に含める契約と、があります。どちらも通常3か月に1回の保守点検を行います。その検査内容な変わりません。

表1 POG保守とフルメンテナンス保守

POG保守契約小部品(ヒューズ、照明部品など)、グリス、オイルが契約に含まれる
それ以外の部品の保守は都度発注が必要
フルメンテナンス保守契約POGに加えて、ロープ、ケーブル、制御装置内のプリント基板、制御リレー、スイッチなど消耗品の交換は契約に含まれる

リニューアル方式について

エレベーターの法定耐用年数17年ですが、実際にエレベーターは使用頻度にもよりますが、20年~30年くらいでリニューアルになるようです。使用頻度が高くはないマンションでは、30年をリニューアルの目安にして良いかと思います。

リニューアルにはいくつかのレベルがありますが、駆動部など主要部品だけを交換する制御系リニューアルかごや扉まで撤去して新しいエレベーターを入れる撤去リニューアルの2種類に大別されます。

油圧式は、撤去リニューアルすることは出来ないため、メーカーは撤去リニューアルを提案、独立系保守会社は油圧式の延命のための制御リニューアルを提案するようです。

表2 制御系リニューアルと撤去リニューアル

油圧式ロープ式
制御系リニューアル油圧ユニット、ジャッキ台、油圧配管、戸開モーターなど、制御部品を交換巻上機、調速機、制御盤、かご操作盤、戸開モーターなど制御部品を交換
撤去リニューアル製造中止になった油圧式への撤去リニューアルはない。メーカーはロープ式へ切替を促す上記に加えて、かご、レールブラケット、おもりなども新品に交換する提案

なお、油圧式のメーカーの保守部品供給をやめるといっても、主要部品が製造終了になるわけで、オイルやグリスは入手できなくなるわけではなく、代替品への交換も可能なので保守は継続できるそうです。

保守費用について

表3 保守費用に目安

メーカー保守料金独立系保守料金
フルメンテナンス契約 月額保守料
3か月に1回
LTEによる遠隔監視機能
緊急時インターフォン対応
建築基準法に基づく年1回法定検査実施含む
50,000円~80,000円程度30,000円(※)
POG契約
3か月に1回
LTEによる遠隔監視機能
緊急時インターフォン対応
建築基準法に基づく年1回法定検査実施含む
25,000円~40,000円程度15,000円(※)
※)エレベーターコミュニケーション社 エレベーター保守料金 月額定価表より

独立系保守会社によるLTEによる遠隔監視機能、緊急時のインターフォン、3か月に1回の点検と、建築基準法に基づく年1回法定検査実施含む価格が、メーカー保守料金の6割~5割程度ですむことがわかります。エレベーターの遠隔監視機能の通信には、PHSが使われていましたがPHSサービスが停止したため現在はLTEが使われているそうです。

保守料金は、ざっくりとメーカーの6割から5割程度に抑えられます。エレコミ社によれば、パーツは、1oo%メーカー純正、納期が長い部品はストックを全国支店にも確保して、多くのトラブルは即日、翌日対応が可能だそうです。

お客さんから一報が来る場合もあれば、例えば分譲マンションで一括受電を導入している場合は、受変電設備のメンテナンス停電がある場合などは、遠隔監視機能でエレコミ社の方から管理会社へ確認の連絡をすることもあるようです。

メーカーと独立系保守会社で、エレベーターのメンテナンスの技術の優劣があるかは何とも言えません。コスト優先で独立系保守会社という選択も考えられます。

エレコミ社 によれば表3の点検頻度は毎月点検という選択もありますが、毎月点検は保守費が高くなるだけで、寿命が延びる、故障のリスクが減少するということはなく、3か月に1回点検で十分だそうです。

フルメンテナンス契約が良いか、POG契約が良いかについては、POG契約の方が、トータルコストは抑えられるそうです。ですのでオーナービルの場合は、POG契約が多いそうです。しかし、突発的に部品が壊れることなども起こるので、すぐに決済できないと修理が滞ることになります。

管理組合は、早急な対応が必要な予算処理は二つの理由で出来ません。一つは、年間で確保していた小修繕費予算を使い切ってしまっている場合は臨時総会で予算確保が必要になります。もう一つは、理事長による理事会での確認の上での発注処理の対応が必要になり負担が増えること、手続きが遅れる可能性があることです。

エレベーターが止まるとマンション住民の生活に大きな影響があるため、数日止めるわけにもいかずマンション管理組合はフルメンテナンス契約が良いです。確保すべき小修繕費や承認のフローまで管理規約、細則で固めて、迅速なワークフローが確立できれば、POGに切り替えてさらなる節約することも考えられます。

なお、最近のトレンドになっているエレベーター内に監視カメラ付きモニターを設置について、独立系保守会社のJESによりはじめられました。 エレコミ社 も同じようなソリューションを提供しているようでが、エレベーター内広告や、SDカードによる1か月分のカメラ映像の録画機能などがありますが、まだその価値をサービスできるところまで確立されてないようです。

リニューアル費用について

表4 油圧式リニューアルについて

メーカーリニューアル独立系保守会社リニューアル
油圧式制御系リニューアル500万円
(6階建ての建物でエレベーター
1基の場合の標準的な例 ※1)
油圧式撤去
→ ロープ式へのリニューアル
1,000万円 ~
※1)エレベーターコミュニケーション社 2021年6月のプレスリリースより

表5 ロープ式リニューアルについて

メーカーリニューアル独立系保守会社リニューアル
ロープ式制御系リニューアル基本的には撤去交換を提案するスタンダードプラン 400万円 ※2
ゴールドプラン 550万円 ※3
ロープ撤去リニューアル1,000万円  ~ 撤去リニューアルプランも用意はあり
※2)エレベーターコミュニケーション社 各種リニューアルプランより
※3)新規製品では、現在の建築基準法で義務付けられている戸開走行保護装置、地震時管制運転装置への対応をされていない機種に対してのグレードアップを含むプラン。2006年の港区のマンションでの痛ましい事故を受けて、2010年4月以降の新規エレベーターには設置しないと既存不適格となります。

 

リニューアル工事ですが、製造メーカーに依頼しないと心配だと考える人も多いでしょう。結論としては、かごや扉も含めて撤去リニューアルする必要があると考えるなら、メーカーに交換してもらう選択を中心に検討、かごや、扉はまだ使えると判断、コストを抑えるべきと考えるなら、独立系保守会社の制御系リニューアルの選択も考えるべきです。

2021年6月のプレスリリースにある通り、メーカーは1千万円以上のロープ式へのリニューアルを促し、 エレコミ社 は、油圧式での制御系リニューアルを500万円程度(6階建ての建物でエレベーター1基)で提案して、2017年の45台から、2020年には106台交換へと、2.35倍に受注が増加しています。

油圧式を制御系リニューアルでそのまま継続使用するソリューションが市場に受け入れられているようです。

メーカーと独立系保守会社双方に提案を依頼して、ヒアリングして納得できる会社の提案を選択すれば良いでしょう。

油圧式エレベーターを使用しているマンションでは、間もなく日本の大手2社の三菱・東芝が保守部品供給を停止する前に、リニューアルを検討する必要があります。

独立系保守会社メンテナンスに切り替えるとメーカー保守には戻れないは本当?

一度、独立系保守会社に、メンテナンスを切り替えるとメーカー保守には戻れないという話を耳にしますが、これはどうなんでしょうか?

真相は以下の通り説明できます。

独立系保守会社の保守は通常メーカー純正を使用します。制御系リニューアルは必ずしも純正部品を使いません。同じ部品をつかってリニューアルでは人件費を削る以外のコストダウン要素がないため独立系保守会社では、勝負になりません。

ロープ式の場合は巻上機や制御盤などを交換しますが、SECは自社製、JES、 エレコミ社 、それぞれメーカー以外の調達先があるそうです。巻上機や制御盤など、制御の基幹部品が変われば、当然メーカーは保守できません。

100%純正部品の独立系保守会社に保守を依頼して、リニューアルをする前までは、保守返還は技術的には可能で、条件があえばビジネスとしてメーカーが保守を引き受けない理由はないと言えます。メーカーとケンカをしたり、メーカーの提示する保守費に折り合えない場合は、断られることは当然あります。

独立系保守会社によるリニューアルをしたら以後は独立系保守会社の保守となり、撤去してメーカーの新品を入れない限りはメーカー保守には、戻れないということになります。

マンション長寿命化を考えたエレベーターリニューアルについて

独立系保守会社による保守を選択するなら、30年目前後のリニューアルは、独立系制御リニューアルと、メーカーによる撤去リニューアルのどちらかを検討します。

独立系保守会社に制御リニューアルを選択した場合、次の30年は独立系保守会社に保守してもらうことになります。そして、再び30年経過して60年目前後で、マンションの長寿命化させる方針であれば、独立系保守会社のリニューアルにするか、メーカーの撤去リニューアルを選択するか、その時エレベーターの状態と、マンション管理組合においてマンション寿命についてよく協議して、決定すれば良いでしょう。

30年目前後でメーカーを選択した場合は、その後もメーカー保守、60年目前後もメーカー保守になりますが、トータルのコストは大きな差が出ます。

独立系保守会社を選択してもメーカーにより撤去リニューアルを選択すれば、メーカーに戻るタイミングもあるということは理解して検討するのが良いでしょう。

図3 マンション長寿命化を考慮したリニューアル例(30年目で独立系保守会社の制御リニューアル選択の例)

6階建ての建物でエレベーター1基の場合 、築20年目でメーカー保守から、独立系保守会社の保守に切り替え、30年目に制御リニューアルを選択して、その後、30年間独立系保守会社の保守を継続した場合のコストメリットは表6となります。 差額の総額は、1,460万円となりました。

表6 メーカー保守、独立保守会社、保守費、リニューアル費差額(築21年~築60年まで)

築20年から30年の保守費築30年目リニューアル築31から築60年の保守費合計
メーカー600万円(※1)1,000万円(撤去)1,800万円(※1)3,400万円
独立系保守会社360万円(※2)500万円(制御系)1,080万円(※2)1,940万円
差額240万円500万円720万円1,460万円
※1 メーカーフルメンテナンス月額5万円、※2 独立系保守会社フルメンテナンス月額3万円として

管理会社は独立系保守会社への切替を提案してくれるのか?

管理戸数上位30社のマンション管理会社が、独立系保守会社と手を組んで積極的に管理委託料コストダウンを提案してくる例は聞いたことはありません。マンション管理会社のメーカー保守費用には、管理会社に発生する工数分の利益が含まれています。管理会社にも保守・トラブル時に工数が発生するので必要な費用が保守に乗るのは理解できます。

管理会社が独立系保守会社への提案をすると、保守費が6割から5割になるため、相対的に管理会社の利益も減ってしまうことになるので、管理会社から提案するメリットはありません。

エレコミ社 によれば、 エレコミ社 のサービスを推奨する管理会社はいくつかあるようですが、管理物件数が多くない新興の管理会社でした。管理組合が自ら動いて、独立系保守会社に切り替える検討を始めないと進まないと言えます。

管理委託料の値上げ、火災保険料の値上げなどで、消費税8%から10%への増額など、ここ数年で予算がひっ迫している管理組合は、エレベーターの保守を独立系会社に切替も検討すべきでしょう。

独立系保守会社との契約は、管理組合と独立系保守会社の直契約になります。しかし、3か月の1回の点検や、トラブル時の緊急対応を管理員さんに立ち会ってもらうもらうなど、管理会社の協力も必要となります。管理委託契約範囲外のことも依頼することになるため、管理会社とは関係が悪くならないように独立系保守会社の保守・緊急対応の際の業務フローを調整して、別途管理会社に発生する工数もふまえて管理委託契約を見直しする必要があれば見直も行って、独立系保守会社と管理会社の双方の協力で保守体制を検討しましょう。

まとめ

  • 2020年3月で全国に766,354台のエレベーターがー設置されていますが、マンション管理業協会の管理物件の8割のマンションにエレベーターが設置されていると仮定すると94,000台の約12.5%が分譲マンション分エレベーターと計算されます。
  • 独立系保守会社上位5社の保守台数は、少なくても155,100台となり全国に766,354台のエレベーターの20%を占めており、十分な実績と言えます。
  • エレベーターの保守には、消耗部品の交換が含まれているフルメンテナンス契約と、小部品、オイル、グリス以外の部品は契約に含まれないPOG契約と、2種類に大別されます。
  • メーカー保守費の6割から5割くらいのが独立系保守会社では保守費です。
  • POGの方が、お得な契約なのですが、管理組合での保守の場合は、突発的な事故で必要となる部品発注が理事会の負担になるため、フルメンテナンス契約が良いです。
  • リニューアルは、25年から30年に1回実施ですが、メーカーが提案する撤去リニューアルと、独立系保守会社が提案する制御系リニューアルの選択があります。メーカーの撤去リニューアルの半額程度で、独立系保守会社の制御系リニューアルを実施できます。
  • 製造停止となっている油圧式エレベーターを使用しているマンションでは、間もなく日本の上位2社の三菱・東芝が保守部品供給を停止するので、早めのリニューアルを検討する必要があります。

【取材協力】

エレベーターコミュニケーションズ株式会社 営業本部 西日本エリア責任者 松本英之様(写真)ほか、2名にご協力いただきました。大変お忙しい中、どうもありがとうございました。

マンション修繕積立金の値上げが必要か検証するセミナー詳細

■セミナーでわかること
・築60年までに考える必要な推定修繕工事項目の確認
・国交省が2021年9月28日に公開した更新された「修繕積立金ガイドライン」は妥当なのか?説明します。
・国交省が2021年9月28日に公開した更新された「長期修繕計画標準様式(記載例 参考資料)」の読み方と、国交省の間違いを説明します。
・長期修繕計画の推定修繕工事の支出検証方法
・工事を実施する管理会社作成の長期修繕計画の推定修繕工事は、自社で受注する場合の利益も入っているので高めになります。