サッシ・玄関扉の進め方以外にも、大規模修繕工事の進め方を学びたい方はこちらから動画参照ください。

大規模修繕工事、管理組合が工事会社に直接発注すると何が不安ですか?
費用対効果最大の大規模修繕工事

本ブログの内容を解説した動画です。

大規模修繕工事における窓・サッシの改修について

マンション長寿命化のために最も重要な修繕は、給排水配管です。次に重要なのが、サッシ・玄関扉などの建具です。標準管理規約ではサッシを窓と呼んでいますが、掃き出し窓をイメージしづらいので、このブログでは窓と掃き出し窓を合わせてサッシと呼びます。

大規模修繕工事におけるサッシ、玄関扉の扱いは難しいです。サッシ、玄関扉(標準管理規約第7条2の三)は標準管理規約では共用部とされています。正確に言うと玄関扉は内側の内部塗装部分と錠以外が共用部(標準管理規約第7条2の二)とされています。共用部であるにもかかわらず通常の使用に伴う保存行為は専有部の負担とされています。

計画的修繕として、住宅性能の向上を目的に大規模修繕工事などで、管理組合で全戸一斉に修繕することも出来ますが、劣化状況は専有部で異なるはずです。劣化していない部屋の工事を実施することは修繕積立金の無駄使いすることになります。一部の専有部のみ修繕積立金を使うことは不公平であるため出来ません。

例えば全戸一斉に戸車交換する必要がある場合は、総会決議のもと修繕積立金を使っても問題ないですが、戸車交換の必要性は低い専有部もあります。住民アンケートを実施して状況を確認して検討しましょう。必要な専有部のみ大規模修繕工事のタイミングで専有部負担で実施するのが現実解です。

今回のブログでは、大規模修繕工事で専有部負担で実施するドア・窓の改修の進め方についてまとめます。DIYで長寿命化につながる簡単なメンテナンスも含まれていますので、是非参考にしてください。

標準管理規約のサッシ、玄関扉の扱いについて

標準管理規約22条(窓ガラス等の改良)には、以下のように記述されています。

「約22条 共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。

 2  区分所有者は、管理組合が は、前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することについて、細則を定めるものとするができる。」

このことからサッシ、玄関扉は、計画修繕として、住宅性能向上の目的で全戸平等に管理組合の費用で実施すべきと言うことを意味しています。但し、計画修繕のタイミングまで区分所有者が待てない事情がある場合は、理事長に書面で申請して、理事会で承認(第54条)を得て専有部の責任で実施して良いということになります。

標準管理規約21条(敷地及び共用部分等の管理)  敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。」

3 区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。

ベランダ、サッシ、玄関ドアの専用使用権のある共用部分の通常の使用に伴う保存行為について、専用使用権を有する者が、その責任と負担において行います。区分所有法の保存行為とは、現状の維持を図る行為で破損個所の小修繕を含む行為です。修繕時は、理事長に書面で申請して、理事会で承認(第54条)を得て専有部の責任で実施、緊急を要する保存行為、例えば部屋に雨水が入ってくるような状況であれば、申請なしで修繕できます。

例えばサッシ戸車の調整や、サッシのクレセント錠が破損した場合の交換などは「通常の使用に伴う保存行為」にあたり、専有部の責任で修理するということになります

では、通常の使用に伴なわい保存行為とはどういうケースがあるかというと、第21条の⑥のコメントに記載があります。

第21条の⑥のコメント バルコニー等の破損が第三者による犯罪行為等によることが明らかである場合の保存行為の実施については、通常の使用に伴わないものであるため、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。

専有部の責任でない場合は管理組合の費用での保存行為(修繕)ということになります。なお通常は管理組合が入っている火災保険のオプションが適用できます。

では、全戸一斉実施前提で、窓・サッシの戸車調整・交換を実施するケースはあるかというと、全室劣化状況が同じで、どこの専有部も同じようにサッシの動きが悪い状況を除いて、あり得ません。

このように考えると、窓・サッシの戸車調整・交換などの保存行為は、専有部の責任と負担で実施すべき工事に分類されると言えるでしょう。

ほぼ全戸の専有部のサッシがまともに動かなくなり、あるいは一斉に動かなくなることを見越して、サッシをカバー工法などで一斉に交換する場合は、「防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するもの」として、計画修繕で総会の決議を得て実施することになります。この場合は大規模修繕工事の一部として実施することになります。かなりの金額になりますので、マンションの寿命をどのように考えるかを含めて慎重に検討すべきです。

表1 サッシ・玄関扉など専用使用権のある共用部

住宅の性能向上のための全戸一斉交換通常の使用に伴う保存行為通常の使用に伴わない保存行為
-戸車の調整・交換、クレセント錠交換、網戸の交換盗難にあって窓ガラスを割られた
実施者管理組合専有部の区分所有者(緊急時を除いて理事長に申請・理事会の承認必要)管理組合
根拠(※1)第22条の1項第21条の1項第21条の⑥のコメント
実施時期管理組合の計画修繕(サッシは大規模修繕工事が実施しやすい)随時必要な時に。大規模修繕工事のタイミングは実施もしやすい随時
※1)標準管理規約

玄関扉の修繕について

国交省の長期修繕計画の記載例によれば、36年で交換周期となっています。積算資料ポケット版マンション修繕編(一般社団法人 経済調査会)2019/2020では、鉄扉のみで36,700円/戸、カバー工法で50,000円/戸とありますが、少し想定が低いように思えます。玄関扉の交換は、1箇所数万円から、モノによっては20万円以上かかる場合もあります。その必要性からよく考えたほうが良いです。玄関ドアは壊れるものではありません。36年程度で交換する理由はないです。50年以上使う前提で丁寧に使いましょう。

玄関扉の丁番のネジが緩んで傾いているか、そのまま放置して玄関扉が傾いてしまって玄関扉が締まりにくくなるという問題や、ドアクローザーが効かなくなりゆっくり扉が締まらないなどの部品の問題は考えられます。玄関扉のネジを締めることは誰にでも出来るのでネジを締め直して、ドアクローザーの可動部にCRCをかけると問題なくなることもあります。傾いてしまっているなら丁番おこしという作業で改善されます。

クローザーはそうそう壊れることもなく大概は部品交換なしで十分であると理解しておきましょう。蓋の部分からオイルが漏れていなければ通常は壊れていません。開閉の速度を調整するプラスネジがあるのですが、調整ネジの場所はものよって違います。右回しすると扉はゆっくり閉まるようになります。また、玄関扉の周りのエアタイトパッキンも消耗品なので交換は出来ますが、シーリング工事と違って多少傷があっても水が入ってくるわけではないので問題ありません。劣化があまりにひどい場合を除いて交換する必要はないという認識で良いでしょう。

耐震丁番への交換は、地震対策として有効ですので「住宅の性能向上のため」の一斉交換を前提に共用部の計画修繕として管理組合で検討しても良いでしょう。その効果はどれくらいあるのか、下記の動画は参考になるでしょう。なお、丁番は扉ごとに違いますので、どんな玄関扉の丁番でも交換できるとは限らないようです。費用は、玄関扉の交換と同じ時間かかるためリーズナブルではありません。

サッシの修繕について

国交省の長期修繕計画の記載例によれば、36年で交換周期となっています。しかし、36年で交換が必要かというと多くの場合は必要ありません。

サッシの交換は大変です。一品物でサッシそのものを交換するためにはコンクリート枠まで壊してつけなくてはいけません。大掛かりになり、生活への影響も大きく費用もかさむので、多くの場合はカバー工法と言う既存の枠を残してその外枠に新しいサッシの枠をつけるカバー工法が取られます。施工例はYoutubeの動画で解説されています。

この例だと足場がなくても取り付けられるように見えますが、既存サッシの取り外しが室内から出来なければ、足場なしでの交換は出来ません。

積算資料ポケット版マンション修繕編(一般社団法人 経済調査会)2019/2020では、既存サッシ撤去が14,800円/1箇所、アルミサッシをカバー工法で1800x1800mm程度(大)243,000/戸、1100x900㎜程度(小)138,000円とあります。この数字はかなり高いです。

サッシの全交換などを考えるならば、相当の予算になるのでマンション寿命を100年にするくらいの合意形成が必要かもしれません。修繕積立金の額もかなり高めの設定となるでしょう。

交換以外の方法について以下のような状況が考えられます。それぞれの場合の対応をまとめています。

  • 戸車が埋まってしまう。
  • 戸車が埋まったまま使用してレールが削れてしまい、レールが波打ったり変形してしまいひっかかる。
  • サッシが前後方向で傾いてガタガタ動く。
  • サッシの錠が壊れる

戸車は、1枚のサッシの下側のレールの左右に2つあります。片方の戸車が下がってしまうと、下側サッシ枠がレール底面にあたってしまいサッシが引っ掛かり重くなります。

戸車の調整は、プラスドライバーがあれば、だれでも出来ます。戸車があたっているようなら、プラスドライバーをさして戸車の調整ネジを手探りで見つけます。ドライバーがねじに入るポイントを見つけたら、右回しすることで、戸車は出てきて、サッシを上に押し上げます。まだ右に回す余地があれば、戸車を出してサッシをあげることで修正できます。

戸車のネジが右に回せないようならば、そもそも戸車の位置がおかしくなっているか、変形してしまっている可能性があり戸車の交換が必要かもしれません。その場合は、サッシを外して、戸車の出具合を見ながら調整します。なおサッシを外す作業は、外したサッシを元に戻せなくなると大変なので、プロに任せるべき作業になります。

戸車の不良の場合は、戸車を取り出して寸法を測って以下の対応になります。

  • メーカー純正を購入する
  • 代替品(通常は汎用品の調整戸車といわれるもの)を探す
  • 金型をつくりメーカー純正と同じものをつくる(最低100個単位など条件あり)

古いマンションでは往々にして、メーカー純正が製造修了になっているケースがありまして、2になる場合がありますが、汎用品の調整戸車は寿命が短い、ぴったり入らないなどの課題があります。3の場合は、最低100個など条件が付きます。かなり高額になります。以下は2のケースで代替品に取り換えた例です。

サッシのレールが変形した場合、すり減ってしまった場合には、オーバーレールと言う、レールの上にレールをかぶせて修理する方法があります。

サッシの上側が枠の中で、外側に倒れてガタガタして動きが悪くなったりする場合の補修としてのアクリル板を接着剤でつけた例です。

サッシの錠の軸が抜けて動かなくなってしまった錠の交換例です。メーカーは廃業していましたが、同じ形状の製品がありました。ビスの位置が合うものを探して類似品になる場合もあります。

網戸専用レールについて 

網戸にについては、サッシが外側に倒れて、網戸のツメが圧迫されて動かなくなり、サッシと一緒に動いてしまう症状に対して網戸専用レールを取り付けて修理した例です。

玄関扉・サッシ修繕委託先の見つけ方と費用

サッシ・網戸・玄関扉の改修を大規模修繕工事会社に依頼することが出来るでしょうか?大規模修繕工事会社でも引き受けてもらえますし、現場代理人が工事の段取りなどをしてくれるので管理組合は楽に進められる場合もあります。

しかし、リーズナブルに工事が出来るかどうかはわかりません。大規模修繕工事会社が連れてくるサッシ屋さんによります。修繕するマンションから離れていないご近所のサッシ屋さんに依頼することがリーズナブルになるポイントです。

専有部、それぞれで症状が異なります。とくにサッシの修繕については、現場に来て症状を確認しないとわからないのです。戸車の高さ調整なのか、戸車の交換なのか、オーバーレールなのか、前後のがたつきなのか、確認しないとわかりません。

戸車の交換の場合は、サッシを外して戸車の寸法を計測して、元に戻して代替品を探して取り付けと、最低2回は現場に来なくては行けません。場合によっては戸車が見つからないので修理できませんという場合もあります。遠くから通ってくるサッシ屋さんは、移動時間も工数に載ってしまい価格が高くなってしまいます。

なるべくマンション近くのサッシ屋さんを探しましょう。地元ネットワークで評判の良いサッシ屋さんを探す方が早いかもしれません。見積もり依頼するときも、サッシを外さないとわからないということで、高い見積もりが出てくることもあれば、一度外して見てから見積もりしたいと依頼される場合もあります。また見積もりが有料というサッシ屋さんもあります。粘り強く丁寧なコミュニケ―ションを心がけて対応してもらいましょう。

日程調整の段取りは、大規模修繕工事のタイミングであれば、ベランダ防水や塗装の工程と重ならないように、大規模修繕工事の現場代理人に日程を調整して進めましょう。

価格の相場は幅があります。新品に交換したほうが良いとかんがえられるような提案が出てくる場合もあります。

表2 玄関扉・サッシの修繕費用の例

想定価格その他
玄関扉
 玄関扉交換50,000~300,000円扉の品質により大きな差があります。
 玄関扉調整4,000円~丁番ねじの固定、丁番起こしなどの作業
 ドアクローザー交換15,000~25,000円
 エアタイトパッキン交換8,000円~18,000円
 耐震丁番への交換40,000円~100,000円ドアのタイプによって耐震丁番がなく交換出来ない場合もある
サッシ交換
 掃き出し窓 (1枚あたり)1,800x1,70050,000円~150,000円ガラス種類による
 窓(1枚あたり) 1,100 x 900 30,000円~100,000円ガラス種類による
サッシ調整(サッシの種類によらず)
 戸車調整(1枚あたり)4,000円~
 アクリル板による前後調整(1枚あたり)4,000円~
 戸車交換(サッシ1枚の戸車2つ交換)18,000円~25,000円代替品の戸車が汎用品としてある場合の価格、代替品がないと交換できない場合もある
オーバーレール8,000円 ~15,000円
 サッシの錠交換(1箇所あたり)10,000円~18,000円代替品の錠が汎用品としてある場合の価格
網戸
 網戸専用レール8,000円~15,000円
 網戸交換 1,800x1,70010,000円~
 網戸交換 1,100x9008,000円~
 網戸張替 1,800x1,7005,000円~
 網戸張替 1,100x9004,000円~

価格は参考程度に見てください。実際に見積もりをとるとかなり幅があります。また、お断りされることもあります。とくに戸車交換は手間がかかる割にはもうからないようで嫌がる業者も多いです。近隣の腕の良いサッシ屋さんに依頼して、現場を見てもらいコミュニケーションよくすすめるのがリーズナブルな提案をしてもらうポイントになります。

まとめ

  • サッシ・玄関扉の交換は劣化状態が異なり全戸一斉交換すべきものではありません。大規模修繕工事アンケートで専有部の玄関扉・サッシの状況を確認しましょう。専有部の劣化状態によって、実施を希望する専有部だけを専有部の負担で足場のある大規模修繕工事の時期に一斉に実施するのが現実的です。
  • サッシ・玄関扉は、国交省の長期修繕計画の例では、36年周期になっていますが36年で交換しなくても使用できます。
  • 玄関扉は、丁番のネジをきちんと締めて、丁番おこしなどの調整でよくなります。ドアクローザーやエアタイトパッキンは交換可能ですが、価格とメリットをよく考えたほうが良いです。
  • サッシの戸車調整は、プラスドライバーがあれば出来ます。専有使用権のある共用部の通常の使用に伴う保存行為として住民が出来ることです。戸車調整することでレールがすり減らないのでサッシの長寿命化につながります。
  • サッシの戸車の交換は手間がかかることもあり見積もりに業者さんによって幅があります。近隣のサッシ屋さんに依頼して、現場を見てもらいコミュニケーションよくすすめるのがリーズナブルな提案をしてもらうポイントになります。

以上

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