中小マンション直結直圧給水可否をポンプ設定で検証する

中小マンション直結給水方式への切替方法では、貯水槽方式から、直結直圧方式または、直結増圧方式への切替の手順について説明しました。中小マンションでは水道本管の圧力のみで給水する直結直圧方式のメリットについて、具体的に工事費、維持費を示してメリットを説明しました。

東京都水道局では、直結工事に補助金(増径工事が東京都負担)が出ます。他の都市で直結給水を認めている市は、横浜市、川崎市、大阪市、名古屋市、札幌市、福岡市、神戸市、京都市、さいたま市、仙台市などです。以後の説明は、東京都水道局の水をつかっているマンションでの前提での検討になっていますので、ご注意ください。

貯水槽方式から直結給水方式に変更するには、マンション管理組合の議決権数及び管理組合数の3/4の賛成が必要で簡単にはできません。メリットデメリットを検討する上で、工事費・維持費の計算は必須です。以下のブログも参照ください。

中小マンション直結給水方式への切替方法

水理計算を行って、最上階でも給水可能であることを計算上、確認しても分譲マンションでは管理組合の特別決議を通すための議決件数及び管理組合数の3/4の賛成を得るための意思統一が難しく、最上階の組合員からの水圧が落ちることへの不安が払しょくできない、リスクをとりたくない管理会社からは増圧ポンプを入れて直結増圧をすすめられることもあるでしょう。

しかし、ちょっと待ってください。

本当に圧力が足りないなら直結増圧方式になりますが、メリットが大きい直結直圧方式の可能性をもう少し検証しませんか?インバータ付きの回転数制御の交互運転ポンプユニットを使って圧力が足りるかどうかを簡単に検証しませんか?

東京都水道局では、3階建までのマンションでは、直結直圧が許可されます。4階でも5階でも口径75㎜以内で、水理計算で最上階末端の機器までの水圧が足りるのであれば、特例直結給水として許可されます。直結直圧方式工事費も維持費も大幅に削減できるため管理費・修繕積立金も余裕が出来ます。

貯水槽方式で高置水槽ではなく、ポンプ圧送方式の場合は、ここ10から15年くらいで購入したポンプユニットを使用していると、インバータ付きの回転数制御の交互運転ポンプユニットを使用している可能性が高いです。

具体的には、以下のメーカー、型式であればインバータ機能がついています。

  • 荏原製作所:F3100BN型 
  • テラル株式会社:NX-VFC 
  • 株式会社川本製作所:ポンパーKFE
  • 株式会社 日立産機システム インバータ・ウォーターエース

これらのポンプユニットは、推定末端圧力一定制御と言う方式で、圧力制御を細かく設定できるポンプユニットになります。つまり直結した場合の水道本管の圧力と同じ設定にすることで、実際に最上階の住民の方にも直結直圧方式に変更した場合の圧力を体験テストしてもらえることになります。

インバータの圧力設定を変えてだけですので、費用もかかりません。管理会社の技術担当にやってもらうか、或いは管理組合理事会メンバーでもマニュアルを読んで圧力設定を変えるだけですのでテスト可能です。

以下で具体的な手順を示したいと思います。

近年マンションで貯水槽給水で使用されているポンプ給水ユニットについて

図1.マンションポンプ圧送方式で使用されるポンプユニット

近年マンションで貯水槽給水で使用されているポンプ給水ユニットは、図1にあるような、ポンプ吐出圧力を検出して、設定値に併せて、インバータ制御によってポンプの回転数を変化させて運転できる推定末端圧力一定制御を行っている2台のポンプユニットが主流になっています。代表的な4社のポンプユニット写真と型番を載せています。

旧式のポンプ仕組みを理解しないと、インバータによる推定末端圧力一定制御のポンプユニットのイメージがわかないので、簡単に旧式のポンプの運転について説明します。

インバータによる回線数制御のないポンプユニット給水(旧式のポンプユニット)

図2、図3で軽く説明します。築30年くらい前のマンションでは、このようなポンプユニットが使われていました。インバータ制御によってポンプの回転数を変化させることはできません。

縦軸がポンプ吐出圧力で揚程(ようてい、mH20)と言われる圧力です。水を何mの高さまで揚げられるかを示す圧力の単位です。1mH20=0.098MPa=1kg/cm2fです。横軸はポンプ給水量(L/min など)です。

かつてのマンション向けのポンプユニットは、常の一定スピードでモーターが回り、オンオフだけで制御されていました。ポンプの回転数は変えられず流量が増えると圧力が落ちます。流量が減ると圧力が増えるというポンプの性能曲線に従って、給水栓(水道の蛇口)での圧力も変動します。

旧式のポンプで給水しているマンションに住んでいて、水道の圧力変動には、なかなか気づかないかもしれませんが、実は変動は大きいです。

図2.インバータによる回線数制御のないポンプユニット給水最大時

図3.インバータによる回線数制御のないポンプユニット給水最小時

このタイプの旧式ポンプユニットでは、ポンプ始動圧力だけの設定可能なため、直結給水にした場合の圧力設定に変更したテストすることはできません。

インバータによる回線数制御によるポンプユニットによる給水

一方、インバータによる推定末端圧力一定制御のポンプユニットでは、ポンプのモーターの回転数を変化させることができます。図4のようになります。

旧式のインバータによる回転数制御のないポンプと違って、オレンジ色の大きな矢印にある方向に、ポンプ性能曲線を変えて圧力と流量の両方をも変化させて運転することができます。

図4.インバータによる回線数制御によるポンプユニットによる給水

図4の右側に、「圧力損失」と「高さと末端の機器に必要な圧力」と記載があると思います。わかりづらいですが、圧力損失、高さ、末端の機器に必要な圧力が、給水栓に求められる必要な圧力と頭に入れて図4を見てください。

ポンプに設定する圧力は、ポンプメーカーによって呼び方が異なるのですが、ここでは設定最大揚程(PH)と、推定末端揚程(PL)と呼ぶことにします。ポンプ始動圧力は、PLからポンプメーカーによって自動で算出される値が設定されるようです。

水の使用量が増えると、モーター回転数を増やして圧力もあげて流量も増やしていきます。逆に水の使用量が減るとモーター回転数を減らして、圧力を下げて、流量が減ると圧力も合わせて下がります。

次項で詳しく説明しますが、使用量が多いときは水がたくさん流れるため配管の抵抗が大きくなって、圧力損失も大きくなり、給水栓の末端で求められる圧力は大きくなります。この時の圧力がPHです。逆に使用量が小さいと、ほとんど抵抗はなくなり、圧力損失はゼロに近づいて、給水栓の末端での求められる圧力は、高さと末端の機器に必要な圧力だけになります。この時の圧力がPLです。

このような水の使用量に応じて生じる圧力損失の大きさに応じて、ポンプの回転数をかえて、供給圧力と流量の両方を変更して給水するので、推定末端圧力に変動が少ないため、推定末端圧力変動一定制御と呼ばれています。正しく設定ができていると、末端での給水栓の圧力変動は少ないです。

推定末端圧力一定制御型のポンプユニットが使われているマンションでは、PHとPL設定圧力を変えることで、給水管本管から直結直圧給水方式で接続された場合と、近い状態の給水の体験テストができるのです。

インバータ制御ポンプユニットで直結直圧想定給水圧力を計算する

具体的には、図5のような水理計算というものを行うことで、高さの確認と最上階末端の機器に供給する際の圧力損失と計算します。マンション管理組合が持っている竣工図面の設備系統図、設備平面図、建物の立面図を見ることに必要な情報がわかります。末端の機器で圧力が必要なものとしては、給湯器などがありますが、給湯器メーカーのカタログなどで確認できます。

図5の例では、30世帯で、1世帯当たり3.5人住んでいるとして、マンション住民数は105名と仮定します。給水装置設計・施工基準(給水装置編)の計算式で、最大流量を計算します。30世帯、3LDKとして、1部屋3.5人住んでいると105名が住んでいるマンションと想定して、最大流量を計算します。

図5.30世帯、4階建てマンション最上階でのガス式給湯器に必要な流量の圧力損失の計算と、ポンプに必要圧力

Qmax = 15.2 x 105^0.51 = 163L/min

高さは、立面図をみて、最上階の4階フロアーレベルがわかれば計算できます。ポンプの高さは、正確には貯水槽のレベルLの値なのですが、ポンプの吐出からの高さで問題ありません。最も高い位置で水を出す給水栓は普通はお風呂場のシャワーですが、床面からの距離をはかることで計算できます。

ポンプからの高さ = 2.5m x 3 - 0.5m(ポンプの高さ分)+2m(シャワーの高さ)= 9m   

機器は、ガス式給湯器がついているとして、カタログを見ると、使用圧力として、0.1MPa-1MPa、最低動作流量が5L/minとありますが、給水装置設計・施工基準(給水装置編)の4-16ページによるとシャワーの流量は、8~15L/minとありますので、ここでは12/min、0.1MPa(10.2mH20)とします。

圧力損失計算のためには、配管サイズが必要ですが、設備平面図、系統図に配管サイズが記載されているのでわかるはずです。50Aとは内径50㎜の配管という意味です。これらの情報をもとに、ポンプ吐出をAとして、最初の縦配管の分岐Bで40Aに、3階で配管サイズが25Aとなる点をC、4階の専有部で、20Aと小さくなる点をD、専有部で、EとFまで計算しています。水の流量もQmaxの163L/minから、専有部で、シャワーと、もうひとつの給水栓で12L/minをつかっている想定でEまでを、最大使用量24L/minと、末端のFで12L/minとして圧力損失を計算しています。

図5の右上に圧力損失の計算結果がありますが、1.494mH20となりました。

ポンプに必要圧力(揚程)= 高さ9m + 給湯器10.2 + 圧力損失1.494 = 20.06mH20

と計算できます。

架空のマンションでのポンプですが、このマンションでは実際には、30%の余裕を見てPHが27m、圧力損失は200%として、3m考慮して、PLが24mのように設定されていたとします。

次に、直結給水の場合での水道管本管からの高さ、圧力損失を計算します。地中どの深さに埋設されているかは不明な場合は、給水装置設計・施工基準(給水装置編)の4-91ページに東京都の区部の埋設深さの記載がありますが、仮に0.5mとします。本管圧力は、事前に水道局より入手しており0.25MPa、25.4mH20であることがわかっています。

配管本管からの高さ = 地中埋設深さ0.5m + 2.5m x 3倍 +2m(シャワーの高さ) = 10m

ガス給湯器 : 10.2mH20、圧力損失は、AからBまでのみやり直しをして、2.16m 

水道管元圧力25.4mH20 - 高さ10m - 圧力損失2.16m = 13.24m > ガス給湯器 10.2m

となるため、直結直圧での供給が可能と計算されます。

これを、インバータ制御のポンプユニットの設定を変えることで同じような圧力に変更できます。

高さの差分 = 10m - 9m =1mと、圧力損失の差分 2.16m - 1.494m = 0.66m 合計 1.66mの揚程分の差があります。

水道管元圧力25.4m - 1.66m = 23.74m

となりますので、ポンプのPHの設定を23.74mに設定して、PLは、ポンプからの圧送の場合の圧力損失分の1.494mを引いた値になりますので、22.2mと設定すればよいのです。

インバータ制御ポンプユニットで直結直圧想定給水圧力テスト

表1. インバータ制御ポンプユニットで直結直圧想定給水圧力の体験テスト設定値

設定最大揚程(PH)推定末端揚程(PL)
現状ポンプ圧力設定値(架空マンションの設定)27m24m
直結直圧を想定とした場合でのポンプ設定値23.7m22.2m

表1のようにインバータ制御の設定をポンプユニットにセットします。上述の川本製作所、荏原製作所、テラルはマニュアルがダウンロードできます。設定最大揚程(PH)と、推定末端揚程(PL)の呼び方は表2のようになっています。

表2. 各社の推定末端圧力一定制御(インバータ制御)のポンプユニット設定圧力の呼び方

設定最大揚程(PH)推定末端揚程(PL)
川本製作所 ポンパーKFE設定揚程P1推定末端揚程P2
荏原製作所 F3100BN型コードP01(設定圧力PA)コードP02(DOWN%) 表1だと6.3%
テラル NX-VFC全揚程PH最小維持揚程PL

マンション管理組合理事会で十分に協議して、テストの意義が認められれば、あらかじめ組合員、住民に通知して設定を変えてテストします。ポンプの設定変更は管理会社の技術担当に依頼すればやってくれるはずです。

住民には1週間から2週間くらい普通に水道をつかってもらって、体験テストして問題なければ、水理計算を実証したことになります。

総会向けの資料としては、現状ポンプ圧力設定値と、直結直圧を想定とした場合でのポンプ設定値で給水栓での水量を比較できるようにデータを取っておくと良いでしょう。曜日や時間をかえて、複数の時間でデータを残して取りましょう。

最上階で、できればポンプから最も離れた部屋の住民に協力を依頼して、1Lのボールなどで給水量を測定するのがよいです。1Lのボールを何秒で満水にできるかを測定してもらうのです。例のようにガス式給湯機が圧力損失が大きい機器だった場合は、ガス式給湯器の出力のお湯で計測するとよいでしょう。5秒でいっぱいになれば、12L/minが確保されています。給水装置設計・施工基準(給水装置編)の4-14ページの給水流量の仕様を満たしています。なお10L/minくらいでも問題なく水は出ると感じる人は多いと思います。文句を言う人は少ないと思いますが、人によります。

現状の圧力設定より水量が落ちたと、直結直圧にすることに反対して、直結増圧を要望する住民がいた場合は、総会決議が難航することが予想されますが、直結直圧にすることによる工事費、維持費削減のメリットを説明して、まずは理解が得られるように努めるべきです。東京都水道局の場合は、直結直圧にするための増圧ユニットのスペースを確保することが求められるので、スペースは確保されています。後日、万一、圧力が下がって水道がまともに使えないといわれた場合の後日に増圧ユニットの追加工事の予算やタイミングなども見込んで総会決議として、直結直圧方式で予算化を進める方法も考えられます。

国交省のマンション標準管理規約の第一条には、「この規約は、○○マンションの管理又は使用に関する事項等について定めることにより、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的とする。」とあります。直結給水方式変更を考えている管理組合では、共同の利益とは何かを、よく管理組合の中で協議して、よい結論を出していただければと思います。

まとめ

  • 貯水槽給水方式から、直結方式(直結増圧、または直結直圧方式)への変更を検討している中小低層マンションでは、水理計算をして、直結直圧が可能かどうか微妙な場合の検討の進め方として、もし、貯水槽+ポンプ圧送方式を採用している場合で、推定末端圧力一定制御(インバータ制御)のポンプユニットであれば、水理計算から算出される設定最大揚程(PH)と、推定末端揚程(PL)を変更して体験テストをするとと良いでしょう。
  • 荏原製作所:F3100BN型、テラル株式会社:NX-VFC、株式会社川本製作所:ポンパーKFE、株式会社 日立産機システム インバータ・ウォーターエースなどが使われている場合は、設定変更できます。
  • 実際にテストする場合は、変更前後で、1Lのボールを何秒で満水にできるかを測定して設定変更前後で記録を残しておくのが良いでしょう。
  • 直結直圧での最上階の圧力の不安はありますが、工事費、維持費をトータルで考慮して、マンション管理組合員の共同の利益が何であるかを考えて結論を出すのが良いでしょう。

以上