中小マンション直結給水方式への切替方法

築20年以上の中小分譲マンションの管理組合の理事をされていた方は、直結給水方式への切替について耳にしたことがある人は多いと思います。ポンプユニットは、10年から15年くらいで一度交換して、貯水槽もそろそろ寿命というところで更新を考えるタイミングです。

4階、5階建てくらいまでの都市部のマンションですと直結直圧給水方式に切り替えられる可能性があり、メリットはとても大きいです。

給水方式を貯水槽方式から更新か、直結増圧か、直結直圧かの検討フローや総会議決の資料案などをまとめました。

直結給水への切替まとめ、総会向け資料について

直結方式は、直結直圧方式と直結増圧方式の2種類がありますが、メリットが大きいのは直結直圧方式です。

年一度の貯水槽清掃、年数回のポンプ点検費用、もし、給水設備についてのみ管理会社の遠隔監視システムで24時間を監視しているならば、給水設備がなくなり遠隔監視システム費用などの管理委託料の削減と、ポンプの電気代(200V動力)の削減とコストメリットはとても大きいです。

インバータ付きの回転数制御の交互運転ポンプユニットを使用している場合は、設定圧力を変えて、直結直圧の可否の検証が可能です。詳しくはリンクを参照ください。

中小マンション直結直圧給水可否をポンプ設定で検証する

直結方式デメリットは、「事故や災害時等に、貯留機能がないため断水することがある」と東京都の水道局のホームページであります。確かに異常気象で雨量が足りず給水制限が起こる、或いは、大災害で水道局の設備も破壊されてしまうような事態になれば、水道が使えなくリスクはあるでしょう。

貯水槽方式では、1日の使用量の50%程度で設計されており半日分持っていることになります。節約すれば数日間分の水として災害時に使える可能性があります。しかし貯水槽の場所が地下ピットで、マンションも停電になるような大災害だと、簡単に水を取り出せないなども考えられるので、考慮が必要で本当に貯水槽方式が災害時のメリットなのかは、貯水槽から簡単に水が取り出せるかも含めてよく検討する必要があります。直結方式は貯水槽がなくなります。災害は自助・共助・公助が基本であり、直結方式に切り替える場合は、マンション住民の自助としての水の備えは重要になり、共助としてマンション管理組合でペットボトルの水を備蓄して備えるなど、直結方式に切り替える際には検討すべきかもしれません。

東京都23区の3階建て20世帯のマンションにお住まいの方から問い合わせがあり、直結給水への切替のための管理組合の検討がなかなか進まないということでいくつか質問を受けました。

おそらく共通の課題があると考えて対応策をブログでまとめることにしました。主に以下の二つが大きな要因があります。

  • マンション管理会社のビジネスモデル、知識・経験の問題
  • 給水方式別に工事費・維持費を数字に落とし込むことが出来ていないため意思決定が出来ない

そんな管理組合の悩みにこたえるマンション管理組合目線での解決策、各給水方式のコスト比較により検討をすすめる方法などを以下まとめたいと思います。

直結給水方式に対応した各都市水道局の考え方

都市部の水道局は、東京都、横浜市、川崎市、大阪市、名古屋市、札幌市、福岡市、神戸市、京都市、さいたま市、仙台市、尼崎市、新潟市などが直結直圧給水、増圧直結給水の両方を認めています。

都市名直結給水方式、増圧直結方式への考え方
東京都水道局3Fまで直結直圧給水可能、4F以上、圧力が足りない場合の増圧ポンプ場所確保の上、特例直結直圧可能。増圧直結も可能、補助金制度あり工事概算例1世帯 20㎜口径 直圧直結20-50万円、10世帯 直圧直結20-25㎜口径 50-90万円、20世帯 増圧直結30㎜口径 220-360万円 
横浜市4Fまで圧力が足りれば直結直圧給水可能としてきたが、2011年5月以降は0.25MPaで給水できる階まで可能。増圧直結も可能
川崎市上下水道局3Fまで直結直圧給水可能、4F以上、圧力が足りない場合の増圧ポンプ場所確保の上、特例直結直圧可能。増圧直結も可能
大阪市3F(8m高さ)まで直結直圧給水可能、但し、4,5Fでも特例あり。増圧直結も可能
名古屋市上下水道局5Fまで直結直圧給水(但し、該当地域の水道管圧力による)。増圧直結も可能
札幌市水道局5Fまで直結直圧給水(但し、目安として、該当地域の水道管圧力が4Fで0.25MPa、5Fで0.30MPa必要)。増圧直結も可能
福岡市水道局3Fまで直結直圧可能、増圧直結も可能(10F程度まで可能)
神戸市6Fまで直結直圧可能(但し、該当地域の水道管圧力による)、増圧直結も可能(10F程度まで)、工事費概算例:10世帯180万円~、30世帯350万円~
京都市上下水道局5Fまで直結直圧可能(該当地域の水道管圧力:3F:0.245MPa以上,4F:0.294MPa以上,5F:0.343MPa以上)、増圧直結も可能(該当地域の水道管圧力:0.196MPa以上で)、併用も認めている。
さいたま市3Fまで直結直圧可能、増圧直結も可能(15F程度まで可能)
仙台市水道局5Fまで直結直圧可能(但し、建物の規模、該当地域の水道管圧力などによる)、増圧直結も可能(15F程度まで可能)
尼崎市水道・下水道3Fまで直結直圧可能、増圧直結も可能
新潟市3Fまで直結直圧可能のような記載であるが、増圧直結方式が可能とある
北九州市上下水道局4階以上の建築物も直結給水可能、口径によって基本料金が変わる、要問合せ。条件を満たすと工事費の一部に助成金もあるらしい
※)詳しくは、リンクから各都市の水道局に問い合わせてください。増径が必要な場合は水道料金が上がる場合もあると記載がある都市もあるので確認必要です。直結工事補助金は、東京都と北九州市

東京都水道局は、直結工事に伴う増径工事(水道本管から水を取り出して第一止水弁までの工事、貯水槽の時よりも管径は大きくなるため東京都は増径工事と呼んでいる)について手続きを、踏んですすめればば無償(補助金)で実施してくれます。また「直結切替工事施工工事業者」もリスト化していますので、 東京都管工事工業協同組合の直結切替工事施工事業者一覧(PDF)、 協同組合東京都水道請負工事連絡会の直結切替工事施工事業者一覧(PDF)三多摩管工事協同組合の直結切替工事施工事業者一覧(PDF)などに問い合わせれば見積もり可能です。直結工事の工事概算額も公開しています。こちらの数字、専有部の減圧弁ユニット、土間工事なし、増径なし、貯水槽の基礎の撤去などについても含まれていないように思えます。ここまではリーズナブルには出来ないと考えたほうが良い価格です。

神戸市も、工事金額の目安まで例示しています(土間工事なし、増径なし、取り出し工事なしを前提とした例と思われます)。都市によって直結を許可する階数によって異なります。詳しくはリンクからお問い合わせしてみてください。

マンション管理会社が直結方式切替に必ずしも協力してくれない理由

マンション管理会社は、必ずしも直結方式を推進してくれません。一つは管理費収入・修繕費収入が減ってしまうという理由があります。もう一つは、工事担当・営繕担当と呼ばれる管理会社の技術者が、管理組合にアドバイスできるほど、直結給水の関する知識・経験を持っていないという事情もあります。

一つ目の管理費収入や修繕費収入の削減について説明します。貯水槽や給水ポンプの点検業務は、マンション管理委託契約のうち、建物・設備管理業務費にあたりますが、通常は管理会社から別の専門の設備点検会社に再委託しています。しかしマンション管理会社の利益も含まれていますので、管理する設備が減るのは利益が減ることになり直結方式に切り替えることは収益のメリットはありません。さらに、ポンプや貯水槽があれば、10年後、20年後に交換の工事を受注できる可能性が高いですが、直結方式になり設備が減ると将来の修繕費収入が減るため切り替えるメリットがないのです。管理会社によって担当者によって、どれくらい協力してくれるかは異なるとは思いますが、管理会社としての大きな視点では、直結方式への切替は手がかかるわりには売上が減少してしまうため、積極的に提案をしたくはないという事情があります。

二つ目の工事担当・営繕担当と呼ばれる技術者が知識・経験が十分でなく、建物の修繕に詳しい技術者も設備のことはよくわかっておらず、管理組合から提案を求められても、お付き合いのある設備会社に再質問したり水道局サービスステーションにヒアリングに行って、なんとか得た知識で提案となっているケースもあるようでなかなか前にすすみません。直結直圧を推奨するには、水理計算を理解していないと難しく、管理会社の提案でもし最上階の水圧が足りなくなるというリスクは避けたいという意識があるかもしれません。

直結給水工事実施のための見積を依頼したいが管理会社が対応してくれない、見積もりが高すぎる、そんな思いを持ったら、管理組合で簡単な検討を行って見積もり依頼をしましょう。具体的な仕様書作成方法をこちらにまとめています。

直結給水工事の見積取得のための仕様書作成について

直結直圧給水方式と直結増圧給水方式について

直結方式には、直結直圧給水方式と、直結増圧給水方式の2種類があります。直結直圧給水方式が一番わかりやすい呼び方ですが、東京都は呼び方は3階までを直結給水方式、3階以上では特例直結給水方式と呼んでいます。

まずは、築10年くらいのマンションで主に採用されていた直結給水方式だった貯水槽方式について説明します。

貯水槽方式は文字通り、水道本管から一度、貯水槽に水を入れます。水道本管の圧力は、貯水槽に入った時点で水道本管でもっている圧力が解放されて、大気圧に戻ります。図1aのように、この貯水槽からポンプユニットで、直接マンションの各部屋に圧送するか、もしくは図1bのように、屋上の高置水槽にあげて屋上の高置水槽から重力落下させて各部屋に給水します。

10年以上前は、都市部の水道網も十分な配管サイズで整備されておらず、マンションでは貯水槽に一度貯めて給水する前提であり、各都市の水道局は直結を推奨していませんでしたが、近年は東京都をはじめとして都市部の水道の配管が十分なサイズで整備されてきたため直結給水方式が許可されるようになりました。東京都では、2012年12月以前の貯水槽方式の給水設備が補助金の対象となって、以後増径工事を無償で実施してくれるようになっています。また最近の新築物件では、建物で使用する使用量の配管サイズが本管より太くならなければ、直結方式が許可されるケースが多いようです。

続いて直結給水方式について説明します。

図2aのように、本管から直接マンションの給水配管に接続される方式を、直結直圧方式と呼びます。それに対して、貯水槽を間に置かずに配管に増圧ポンプを直結する方式を増圧直結方式と呼びます。貯水槽方式と異なり一度大気圧に戻さず、本管の圧力を使って各部屋まで水を供給します。新鮮な水道水を各部屋まで供給できるというメリットがあります。

後述しますがマンションにとって大きなメリットがあるのは、直結直圧方式です。但し、どのようなマンションでも直結直圧が出来るわけではありません。直結直圧が出来ないマンションでは、直結増圧方式をとることになります。図2a、図2bのイラストともに、5階建ての建物で何も違いがないのですが、本管水圧が違うという想定です。

以下は、東京都の水道局の公開資料による解説です。各都市で基準は異なると思われますので、詳細は各都市の水道局にお問い合わせください。

東京都の水道局のホームページおよび、指定給水装置工事事業者工事施行要領(このブログで確認したのは令和2年度4月版)に記載されている給水装置設計・施工基準(給水装置編)の4-13ページあたりに詳しく解説があります。

まずは、水道局のホームページの説明では、3階建てまでの建物であれば、つまり、1階、2階、3階の建物であれば直結直圧が許可されるように説明されています。さらに、給水装置設計・施工基準(給水装置編)にある4-13ページの直結給水方式の説明があり「ただし、三階建て建物の屋上部分に給水栓(散水用等の単独水栓に限る。)を設置する場合は、直圧直結給水方式の取扱いによる設計水圧によって水理計算を行い、給水に支障がないことが確認された場合に限り、設置することができる。」と説明があり、3階建てでも屋上に散水用の給水栓がある場合は、水理計算によって給水に支障がないことの確認が求めれます。屋上で散水栓とは、屋上で植物を植えているようなマンションでしょうか、ちょっとイメージがわかないのですが、説明はそのようになっています。さらに、4-14ページでは、「一時に多量の水を使用するものや使用水量の変動が大きい施設、建物等で、配水小管の水圧低下を来たすもの。毒物、劇物及び薬品等の危険な化学物質を取扱い、これを製造、加工又は貯蔵を行う工場、事業所及び研究所。」とありますが、通常はマンションに関係ないので、ほぼ、東京都にある3階建てのマンションは条件なく問題ないと考えて良さそうです。

図2aでは、あえて5階建てのイラストで直結直圧方式の説明をしています。4階建て以上の建物における直結給水方式を、東京都では、特例直圧給水方式と呼んでいます。水道局のホームページの説明では、メータ口径制限として、20ミリから75ミリまでと記載がありますので、本管からの取り出しが、20ミリから75ミリであれば、直結できる可能性があります。75mmの口径で本管から取水するのはかなり大型のマンションで、300世帯くらいのマンションでも可能な配管サイズです。さらに、建物階高制限:なし(水理計算上可能な範囲)とあり、4階建てでも、5階建てでも水理計算上可能であれば特例直圧給水方式、つまり直結直圧が可能であるとしています。

給水装置設計・施工基準(給水装置編)にある4-13ページの「特例直圧方式の条件として、増圧直結方式の対象であるが、現状の配水管圧力において、建物最上階の末端給水栓まで直圧直結給水が可能な場合に、増圧給水設備(増圧ポンプ、減圧式逆流防止器及び制御装置等)の設置を留保し、特例として直圧直結給水を認める。ただし、この給水方式は、特例として認めているものであるので、受水タンク方式及び増圧直結方式との併用は認めない。」とあり、増圧ポンプの設置する場所を確保しておく必要があります。

また、東京都水道局の直結方式への切替には、条件承諾書にサインが必要ですが、「給水栓を設置する建物の階数、所要水量、配水管の水圧その他の事情変更により給水場の支障が生じた場合又は、恐れがある場合は、あらかじめ確保したスペースを利用して増圧ポンプを設置します。なお、その際には水道局に届け出ます。」という記述があります。「配水管の水圧その他の事情変更」については、例えば、同じ水道本管が接続している近くの敷地に巨大マンションが出てそちらの水道使用量が多く本管の圧力が低下してしまう場合などを想定しています。そのような場合は増圧ポンプを置いてくださいという条件に同意する必要があります。

制限給水時、事故時、水道施設の工事等による、一時的な水圧低下に伴う上層階での断水や出水不良が発生した場合は、共用の直結給水栓を使用します。」という記述も条件承諾書にはあります。マンションの管理者(理事長)は、これらを組合員に説明して同意してもらう必要があり、総会の決議を得て、捺印しないといけませんのでプレッシャーになります。なお、この条件書は、直結増圧給水方式でも同じ文面があります。

直結方式への切替は、これらの壁を乗り切る必要があります。

図3に、東京都水道局のホームページと、給水装置設計・施工基準(給水装置編)の記述を元に、マンションにおける直結直圧方式と、増圧直結方式についてまとめます。

1,2,3階のマンションの直結給水方式

  • 許可される
  • 3階建ての場合、屋上の4階で、散水栓がある場合は水理計算を行い、給水に支障がないこと

4階以上で特例直結給水方式の条件

  • 4階以上、階数制限はなく、水理計算上、水道本管圧力で建物最上階の末端給水栓まで給水できること
  • 本管からの取出口径が20A(20mm)から、75A(75mm)であること
  • 水道本管の圧力が下がった場合は増圧ポンプを設置できるスペースを確保すること

4階以上で増圧直結給水方式

  • 4階以上、水理計算で建物最上階の末端給水栓まで水道本管の圧力では給水できない場合

図3.東京都における直結給水のまとめ

3階までは、ほぼ無条件で直結、4階以上は、水理計算上、圧力が足りるならば増圧ポンプを置くスペースを確保し口径75mm以下ならば、直結も可能、それ以外が、直結増圧方式になります。

水理計算について

水理計算というキーワードが出てきますが、これは詳しくは、指定給水装置工事事業者工事施行要領の第3節 参考資料(メータ口径選定基準、流量計算、水質、メータの隔側装置)に詳しくは説明があります。以下、ざっと説明します。

水道本管の元圧を使って、どこの高さまで給水できるかの計算の事です。絶対的な要素として、高さと配管内の圧力損失があります。水道本管の元圧は、お住いの最寄りの水道局サービスステーションで確認する必要があります。0.2MPaの場所もあれば、0.3MPaなど圧力が高い場所もあるようです。

仮に本管圧力が0.25MPaだとします。わかりやすく圧力をmH20(水頭)になおすと、25.4mH2Oとなります。これは、水を、25.4m揚げることが出来るという意味です。ポンプメーカーのカタログの性能曲線の表記では揚程(ようてい)と呼ばれている能力です。仮に水道本管が、地下0.5mに埋設されているとして、マンションの階数が4階だとしたら、1階あたりの高さが2.5mだとすると、4階のフロアーで7.5m、最も高い蛇口が1.5mの高さだとすると、0.5m+7.5m+1.5=9.5mの揚程が最低必要です。さらに水道本管の分岐から、もっとも高い、もっとも離れた機器までの距離と必要な圧力を、その機器までの同時水道使用量を考慮して、水が流れる際の圧力損失を計算します。その機器に必要な圧力が、ガス式湯沸かし器として、最低動作仕様が、0.1MPa(10.1mH20)、5L/minだとしたら、以下の計算になります。

 本管圧力25.4m ー 高さ9.5m - 想定される同時使用量の圧力損失 > 10.1m@5L/min(最も遠く、高い位置の機器の最低動作仕様)

この条件を満たせば、水理計算上、建物最上階の末端給水栓まで給水できることになります。この計算では、圧力損失が、5.8m以下だとすると末端で5L/minで10.1mを確保できるということになります。

圧力損失の計算は少し複雑です。マンションの場合は、戸数と居住者数から、給水装置設計・施工基準(給水装置編)の4-16ページにある方法で、最大使用量を計算して、マンションの部屋割りと配管の分岐に併せて流量を割り振り、最上階もっとも離れた給水が必要な機器までの圧力損失を計算していきます。

この計算を行うためには、配管ルート図(アイソメトリック図)が必要ですが、マンション管理組合として、管轄の水道局サービスステーションに訪問して直結方式の検討をしたいと言えば、提供してくれるはずです。

計算を行う際の注意点は、マンションの高さの情報を間違えないことです。マンションの給水管の圧力損失は、同時利用は極めて少なく、計算値ほどの圧力低下はありませんが、マンションの高さは揚程に直接効いてきます。配管ルート図(アイソメトリック図)が間違っていることもあり、マンションの竣工図面の立面図で正確な高さで計算するようにしましょう。

水理計算の検討を管理会社が行って、管理組合にわかりやすく説明してくれれば、直結方式への切替の検討は前進しますが、必ずしも管理会社は得意ではないようです。

直結給水方式への切替を考えるうえで、現状がポンプ圧送方式の場合は、もしインバータによる回転数制御のポンプの場合、水理計算の値をもとに、ポンプの設定を変えることで直結直圧の供給で最上階の水の供給がどうなるかシュミレーション出来ます。

中小マンション直結直圧給水可否をポンプ設定で検証する

給水方式を仮に貯水槽方式から直結給水方式に変更することは、国交省のマンション標準管理規約(単棟型)の第47条(総会の会議及び議事)の3項の二、敷地および共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい伴わないもの除く、一部省略)によれば、管理組合員の組合員総数および議決権数の3/4の賛成が必要な議案となるので、かなり敷居が高いのです。

多くのマンション管理組合員が、「管理費・修繕積立金を払っているのだから、後は理事さん管理会社とうまくやってください」と考えています。前述のとおり、マンション管理会社は、給水方式を直結にするメリットがないため、管理組合の理事会で強く推進しないとすすまないのです。

貯水槽方式、直結給水方式、直結増圧方式のコスト見える化

それぞれの定性的なメリット・デメリットは、個人のブログの方にまとめていますので、こちらを参照ください。もう少し定量的なメリットの見える化について、工事費と維持費の観点で以下にまとめます。

ブログを見て質問をくださった方も、3階建て20世帯のマンションの方で、東京都水道局は3階での直結直圧給水は許可するはずなのですが、何故か管理会社が、直結直圧給水は圧力が足りないと検討から外したうえで、貯水槽方式と直結増圧方式での検討を行っており、管理組合で意思統一できずに話が進まないというお話でした。3階までは直結直圧が可能ですとアドバイスさせていただきました。

まず理事会の中でも、コストを見える化して行くことが大事です。

給水方式を切り替える動機、築20年以上のマンションで、貯水槽のパッキンから水が漏れはじめているなど、管理会社からの貯水槽清掃や設備点検の報告があった、もしくは、給水管の埋設管が破裂して復旧したが、給水管を更新するべきタイミングで、併せて給水方式の検討も開始したことなどが考えられます。

貯水槽給水から直結給水に切り替えをしたいが進め方がわからない。

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ここでは、東京都、4階建て、30世帯のマンションで、現状は貯水槽方式(ポンプ圧送、高架水槽なし)で、築25年、東京都水道局の水を使用、水理計算した結果で直結可能であるが、最上階の住民からは増圧ポンプをつけたほうがよいという声もあがっているという前提で、貯水槽方式、直結増圧方式、直結給水方式の3パターンで検討することにします。貯水槽と給水ポンプは両方寿命に至っており交換する前提としています。

築25年という前提ですと、主配管から各専有部の縦配管の分岐、専有部の水道メーター周りの配管までの共用部の配管も更新する時期ですが、費用を入れると、わかりづらくなるため配管工事は検討から除外しています。

そのうえで各方式の工事費、設備点検費、電気代を整理します。工事費は、管理会社や設備会社の見積もりをしてくれれば良いですが、見積りをしていない段階では、長期修繕計画の数字をつかうことが出来ます。

貯水槽方式 初期コスト(工事費)700万円

工事費 700万円

貯水槽12m3、計器、設置 :500万円

給水ポンプユニット工事  :150万円

撤去、廃材処理      :50万円

直結増圧方式 初期コスト(工事費)730万円

工事費 730万円

増径工事 : 東京補助金

引込土間工事  :200万円

増圧ポンプ工事 :250万円

専有部メータ廻り工事:200万円 

撤去、廃材処理:80万円

直結直圧方式 初期コスト(工事費)480万円

工事費 480万円

増径工事 : 東京補助金

引込土間工事 :200万円

専有部メータ廻り工事:200万円 

撤去、廃材処理:80万円

貯水槽方式 維持費(設備点検費、電気代)
33万円/年

設備点検費 90,000円/年

ポンプ、貯水槽点検費  :30,000円/年

貯水槽清掃費      :60,000円/年

電気代(ポンプ動力200V):20万円/年

機器メンテナンス費(ポンプ):40万円/10年

寿命 : 貯水槽20年、給水ポンプ15年

直結増圧方式 維持費(設備点検費、電気代)
20万円/年

設備点検費 50,000円/年

増圧ポンプ点検費  :50,000円/年

電気代(ポンプ動力200V):10万円/年

機器メンテナンス費(ポンプ):50万円/10年

寿命 : 増圧ポンプ15年

直結直圧方式 維持費(設備点検費、電気代)
0円/年

設備点検費 0円/年

機器メンテナンス費 0円/年

機器メンテナンス費(ポンプ):0円

寿命 : 配管次第

初期コスト、維持費による回収計算

  • 貯水槽方式 VS 直結増圧方式 

初期コスト差 貯水槽方式 ー 直結増圧= 700万円 - 730万円 = ▲30万円  

維持費差 貯水槽方式 - 直結増圧 = 33万円 - 20万円 = 13万円/年

回収年数 ▲30/13 = 2.3年  直結増圧に切り替えても3年で回収

  • 貯水槽方式 VS 直結直圧 

初期コスト差 貯水槽方式 ー 直結直圧= 220万円

維持費差 貯水槽方式 ー 直結直圧= 33万円/年 

初期コストも維持費も直結直圧が良い  

  • 10年使用時のコスト差  

貯水槽方式 700万円 + 33万円/年 x 10年 = 1,030万円

直結増圧方式 730万円 +  20万円 x 10年 = 930万円

直結直圧方式 480万円 

  • 30年使用時のコスト差

貯水槽方式 700万円 + 100万円(ポンプのみ交換1回)+33万円 x 30年 = 1,790万円

直結増圧方式 730万円 +200万円(増圧ポンプのみ交換1回)+20万円 x 30年 = 1,530万円 

直結直圧方式 480万円 

図4.東京都、4階建て、30世帯のマンション、現状は貯水槽方式(ポンプ圧送、高架水槽なし)、築25年→貯水槽継続、直結給水への切替の際の試算

金額は、あたらずとも遠からずの数字ですが、貯水槽が1階か地下か、直結の場合は土間工事の長さがどれくらいかにもよりますので、あくまでも例として見てください。貯水槽の入替は、仮貯水槽の設置、解体、新貯水槽設置という手順となり、仮貯水槽のスペースがないと工事費がかなり増額する場合もあるようです。ポンプ動力の電気代は、増圧ポンプの場合は、本管の元圧があるため、圧力が足りない時だけ動作するため、貯水槽の場合の50%としましたが仮定の数字です。増圧ポンプユニットは、寿命15年で計算していますが、メーカーや管理会社の推奨は10年であり、いつ交換時期を設定するかによってもコストシュミレーション結果は変わります。

貯水槽方式から増圧直結方式への切替はコストメリットは大きくありません。上記の例では、工事費は、貯水槽よりも少し高いですが、維持費は安く、3年使用して増圧ポンプの維持費が回収できるという結果となりました。屋上に高架水槽が設置されている場合は、さらに高架水槽の撤去費、交換費用もあるため、増圧直結方式のメリットが出てきます。

貯水槽が1階でアプローチしやすい場所にあれば、非常用の取水口をつけると災害時、渇水時、万一水道供給が止まった時に、貯水槽があるメリットも活かせるので貯水槽方式継続というのも選択もあるかもしれません。

直結方式では、渇水時、大災害時に水道の供給が制限されることへの懸念に対しては、安くなる維持費から防災用の水を定期的に購入する予算をとり災害時に備えることが考えられます。マンションに敷地があれば、防災用の手押し井戸を掘るなども考えれます。手押し井戸は、停電でも使えるので防災時のメリットは大きいです。飲み水にするためには水質検査など費用もかかりますが飲み水にしなければ検査も不要です。防災用では、飲み水はペットボトル買い置きで、生活用水を井戸水という考え方もあるでしょう。

メリットが際立つのが直結直圧方式です。水理計算で圧力が足りるのであれば、メリットがかなり大きいことがわかります。東京都以外では、直結工事の増径工事に補助金はないので、さらに工事費は上がりますがそれでも維持費0円は、インパクトが大きいです。

インバータ付きの回転数制御の交互運転ポンプユニットを使用している場合は、設定圧力を変えて、直結直圧の可否の検証が可能です。詳しくはリンクを参照ください。

中小マンション直結直圧給水可否をポンプ設定で検証する

1点注意点として、直結直圧、直結増圧いづれも水道本管からの取り出し配管サイズは貯水槽のときよりも大きくなりますが、東京都水道局の場合は、「増径工事に伴い、メータ口径が大きくなった場合、水道料金が増額となる場合があります。」と注意書きしていますので、現在の取り出し配管のサイズと、水理計算で使った主配管の配管サイズを伝えて水道料金が変更にならないか、検討段階で確認することをお勧めします。

このように見える化することで、検討はすすみます。

直結方式に向けたマンション管理組合での合意形成

水理計算で直結直圧方式が可能なら、理事会の中での上記のようなコスト比較で、合意形成は出来るはずですが、それでも進まない場合は、管理会社まかせにせず、管理組合として、水道局のサービスステーションに行って以下のようなヒアリングをすると良いでしょう。

  • 同じエリアの同規模のマンションでの直結直圧方式に切り替えた実績はあるのか?
  • 過去の給水制限があったのか、どのくらい給水制限されたか、どんな理由であったのか?
  • 東京都の特例直結給水の場合は、増圧ポンプの場所を確保することが要件になるが、直結直圧方式に切り替えて後日圧力が足りずに増圧ポンプをつけたマンションの例はあるか?
  • 増径工事で水道基本料金はアップしないか?

これらを管理組合として直接水道局からヒアリングすると、判断する材料が増えます。

さらに工事費と維持費の精査をしっかり行うことが大事です。結論が出ない場合は、工事会社に見積もり依頼して数字を精査しましょう。水道工事が出来る給排水設備会社は各水道局の指定工事業者ですので、お住いの指定工事業者のリストからネット検索して工事会社を探していくとよいでしょう。まずは「直結給水」「給水方式変更」などのキーワードでネット検索して見つけて、水道工事指定工事業者リスト(東京都の場合区部、多摩地区で公開)であることを確認して連絡すれば良いでしょう。東京都水道局はエリアが広いですが、多摩地区のマンションでも区部の会社に発注することも出来ますし、その逆も可能です。東京都の直結切替え見積りサービスなども利用して、給排水設備会社に見積もり依頼することも出来ます。

見積りをとるためには仕様書が必要ですが、管理会社が作成してくれるなら有償・無償で仕様書作成を依頼するのも良いでしょう。しかし、やってくれない場合は、マンションの竣工図面のうち配管系統図、設備関連の電子データを用意して、直結工事にする場合の水道本管からの配管取り出しルートや、マンションの水道供給本管への接続の場所や、共用散水栓の接続方法などを決めて簡単にまとめておけば、給排水設備会社は見積もりすることが出来ます。

これらの作業には手間がかかりますが、問題意識をもったマンション管理組合の理事が動き出さないことにはすすみません。このブログを見ている意識の高い理事さんは行動しましょう。

それぞれの方式の金額の精査することと、メリット・デメリットを整理することで検討がすすみます。

理事会の中で方式が決まったら、総会決議に向けて準備が必要ですが、大事なのは総会で、議決権の3/4の賛成をえるために、検討過程を組合員伝えることです。理事会議事録の議論や比較検討資料の配布は必須です。とくに直結直圧にする場合は、最上階にすむ組合員には、直接理事会として説明にいった方が良いかもしれません。

直結直圧にする場合は、管理費から捻出していた給水設備の維持費が下がるため、専有部の横引き配管工事の更新をしていない場合は、本来、管理規約上は個人負担になる工事ですが、給水縦配管の配管更新工事の際に、一斉工事を前提に専有部配管工事の管理組合として補助金を出すことなども提案できると、直結直圧に切り替えるメリットが組合員に還元されるので、メリットが際立ちます。

工事会社の選定と発注金額、スケジュールも決めて、総会の議案を管理会社につくってもらいいよいよ総会決議ですが、当日は工事会社に来てもらってよく説明してもらい、質疑にも対応してもらうのが良いでしょう。ここまでやって3/4の合意がとれない場合は、何か特別な理由があるのだと思いますが、その場合は、マンション管理組合目線にご相談ください。

まとめ

  • マンションの給水方式を貯水槽方式から直結方式へ切り替える検討で困っているマンション管理組合は多いようです。理由は、管理会社が積極的でないこと、水理計算など検討に必要な知識・経験が足りないことと、メリット・デメリットをコストを含めて検討出来ていないことなどが考えられます。
  • 給水方式は、かつては、貯水槽方式(ポンプ圧送)または、貯水槽方式(高架水槽)などの方式が主流でしてが、近年は直結増圧方式、直結直圧方式が主流になってきています。
  • 東京都水道局の場合は、直結直圧方式は3階以下のマンションでは許可されます。4階以上のマンションでは、水理計算を行い、最上階末端まで給水できる水圧があり、水道本管からの取出配管口径が75mm以下、圧力が足りなくなった場合の増圧ポンプユニットの設置場所の確保すれば特例直結給水として許可されます。
  • 貯水槽方式、直結直圧方式、直結増圧方式のコストシュミレーションを行いました。貯水槽、ポンプを交換する前提で貯水槽方式と直結直圧方式は大きな差はなく、維持費は直結直圧方式の方がメリットがあり、長い目で見るとコストメリットがあります。但し、貯水槽の場所や、直結の場合、本管までのルートなどによっての土間工事により工事費は変わり、増圧ポンプの寿命の見方などによって維持費のシュミレーションは変わりますので、コストは検討しているマンションで精査していく必要があります。
  • 直結直圧方式は、貯水槽方式、直結直圧方式と比べて、工事費、維持費ともに大きなメリットがあります。4階、5階の低層中小マンションで、水理計算で圧力が足りることがわかったら直結直圧方式への切替をすすめるべきです。

以上

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