国交省のマンション政策と管理会社による第三者管理方式について

2021年はマンション管理会社が、第三者管理者方式を管理組合に提案して広がった年でした。

2016年の標準管理規約の改定から、管理組合員(区分所有者)以外の第三者管理者を、管理者(理事長)に入れてマンション管理を行う方法が、追加されました。

同時に作成された「外部専門家の活用ガイドライン」を読む限りは、第三者管理者が、管理会社の社員であることを想定した内容ではありませんでした。管理組合の発注先である管理会社や工事会社と利害関係のない、マンション管理士など専門家が、第三者管理者になることを想定した改定でした。

しかし、5年経過して普及したのは、管理会社社員が管理者になる第三者管理方式によるマンション管理の提案になりました。

理事会廃止型の第三者管理方式とは

図1 理事会廃止型 第三者管理者方式

今、普及が始まっている第三者管理者方式は、理事会を廃止型です。第三者管理者が管理組合に管理・修繕について提案します。管理組合は総会で、提案を受け入れるか否か判断します。

管理会社による第三者管理者方式、民法解釈

図2 管理会社による第三者管理者方式

管理会社の社員による第三者管理者方式は、民法108条で原則禁止とされている自己契約にあたります。

図3 民法の自己契約は原則は無効

図4 本人(管理組合)があらかじめ(管理会社による第三者管理者)を許諾した場合は有効

民法108条では、自己契約は原則としては無効と言う解釈になっているのですが、「あらかじめ本人(管理組合)が許諾した場合は、有効」とされており、図4のような自己契約がなりたつことになります。

提案する側(見積書作成側)と発注する側(注文書作成側)が同じ人物になることは、問題があります。管理会社側の判断で、不要な設備を提案されたり、高い大規模修繕工事を提案されるリスクがあるが、管理組合が総会で無関心で、判断できないと、無駄に修繕積立金が使われて修繕積立金が高騰するリスクがあります

仮に拒絶しても理事会を亡くしてしまっているので、代替案を考えても提案が出来なくなります。

2040年の日本の人口

図5 2020年と2040年の人口ピラミッド

国立人口保障・人口問題研究所によれば、2040年は、2020年から、人口が1,000万人から1,400万人減少する予想をしています

図6 マンションは10万戸/年のペースで供給
図7 マンション建替えは1年に8件のペース

マンションは作りすぎで、供給過多。建替えは1年に8件程度ですすんでいません。容積率・建蔽率いっぱいに建てられたマンション、建替えの際に売却用の建増しができずに、管理組合員の持ち出し費用が大きいため、合意形成が難しいのが現状です。多少容積率を緩和しても大きな変化はないでしょう。

国交省は、建替え推進しつつ長寿化に注力

図8 国交省はマンションは、建替えを推進しつつ長寿化に注力

国交省はマンションは、本来は建替えや除却が簡単ではない新築マンションを総量規制しないと行けないが、既存のビジネスモデルを変えられません。

そんな理由で国交省は、建替え・除却要件を緩和しつつマンションの長寿化に注力し始めました、と私は考えています。

図9 やけに設定を高くした修繕積立金ガイドライン、実質マンション増税
図10 やけに甘い管理計画認定の修繕積立金の滞納者の基準

人口が減少するのに、マンションが余ることを考えると、空室が増えて、滞納者が増えても回る仕組みを考えないと行けないです。

ですので、国交省は修繕積立金の平均を1.53倍(専有部床面積合計5,000m2以下)の大幅値上げ、一方で管理計画認定の修繕積立金の滞納は、1割以内でOKとやけに甘い基準にしていると言えます。空室が増えてしまい滞納が始まっても、管理組合でしっかり修繕するためには、修繕積立金を値上げしましょうということを言っているわけです。

管理会社による第三者管理者方式

三井不動産グループは、都心部の案件で、新築物件に理事会廃止型、第三者管理者方式を前提とした販売を開始。安心だと考える人が支持をされて購入しているようです。

長谷工コミュニティは既存管理物件向けに「smooth-e(スムージー)」というアプリを提供、管理組合員が気軽に意見を言える参加型のマンション管理を提案しているが、理事会廃止型、第三者管理者方式です。

合人社は、リゾート物件、ワンルームなど投資物件から始まって、現在はファミリー物件でも実績が豊富のようで、既に合人社の管理物件の20%が合人社による第三者管理者方式を採用となっているようです。

マンション規模に応じての慎重に考えるべき

図11 管理会社おまかせマンションと、管理組合で工夫して修繕コストを抑えてきたマンション

築古、小規模、郊外にあるマンションで、修繕積立金が高騰したら周囲のマンションと比べて選ばれる理由があるのか?

  • 管理費・修繕積立金が高騰するリスク
  • 大規模修繕工事のような大きな工事、総会で否決して理事会がないと管理会社の提案以外の選択肢がないリスク
  • 管理委託契約を断られたときに、次の管理委託先も第三者管理者方式の管理会社しかなくなる。
  • 意見を言えても、実現するためのノウハウが身につかないため理事・理事長が育たない。理事会方式に戻ることが出来ない。

確かに理事、理事長のなり手不足の問題は解消されます。

しかし、選ばれる理由がある都心部のお金に余裕がある人が購入する魅力的な新築マンションは別として、築古・小規模・郊外のマンションんで管理会社による第三者管理者方式は、慎重に考えるべきではないだろうか、というのが結論です。

管理会社に管理委託契約を断られて、第三者管理者方式を提案されている管理組合の方、お気軽に私に相談ください。無料で、的確な回答をさせて頂きます。

詳しくは、冒頭で紹介した動画をご覧になってください。

まとめ

2021年は、管理会社による理事会廃止型の第三者管理者方式といって、管理会社が管理者(理事長)を、管理組合に派遣して、管理組合のための管理・修繕をもろもろ提案して、総会で組合員が判断するという方式が採用が広がりを見せました。

理事長なり手不足の問題は解消されますが、管理費・修繕積立金の高騰につながるリスクがあります。

今後人口は減少して、住宅余りが起こることが分かっているなかで、マンションの建替えは簡単ではない中で、空室をどう埋めるかが管理組合の課題になっていきます。

管理費・修繕積立金 が高騰するリスクがあり、郊外の築古小規模マンションが選ばれないマンションになるリスクがありますので、第三者管理者方式を採用するのはリスクがあります。

お困りの管理組合は、マンション管理組合目線に、お気軽のご相談ください。

以上


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