マンション管理組合の活動は、ほとんどの分譲マンションのオーナーにとって輪番で回ってきてしまった煩わしいものという位置づけになっています。
報酬はゼロか、時給1-2千円程度、宿題はたくさんあって重い。とくに理事長になると、管理会社との管理委託契約書、マンション火災保険など、さまざまな対外的な契約書に管理者としてサインすることになり責任があります。
- 大きな工事があると、管理組合の提案だけではなく相見積もりを取らないと、総会議決が反対されて通らない。
- 専有部の騒音問題、異臭問題、理事長に相談されます。管理会社に頼んでもなかなか動いてくれず住民から文句を言われる。
- 漏水が発生し、共用部か専有部か、保険が適用できるのか?あれこれ動き回る。
- 管理会社からは修繕積立金の値上げを提案されるが、組合員からは反対される。
いろいろ頭が痛い割には、何も自分に返ってこないように見えます。
いやいや、理事長を引き受けて自分に返ってくるものはあります。
但し、組合員の合意形成が難しく、クレーマ組合員にかき乱されて、失敗してトラウマになる人もいるようなのです。組合活動、どう取り組むべきか、自分の経験をまとめてみました。
目次
管理組合活動がんばる気になるにきっかけが必要
私は自分のマンションを中古で購入してから20年間経過しましたが、購入した年の通常総会で役員に指名されて以後、20年の間、理事、理事長、幹事を務め最近、輪番制度になり一時引退しました。間もなく築40年を迎える、20世帯小規模マンションです。
前半10年間は、組合活動はほどほどにやっていました。どちらかというと、義務で活動という感じ。
高齢化で役員を辞める人、新しい区分所有者が入れ替えと、多少の入れ替えはありました。輪番制が引かれておらず、役員は固定化してしまい、理事長を順番に回していました。
後半10年は、クレーマ組合員が、セカンドハウスとしてマンションの一室を購入して以来、組合員になってからは嵐の様相になりました。何かと手ぬるいと叱られて、総会議決を阻まれること3回。総会では、役員は無能呼ばわりされ、こき下ろされて恥をかき嫌な思いをして来ました。ある規模以上の工事は、相見積もりを取ることが原則となり、管理会社の提案通りにすすめることは許されなくなりました。
管理費の5,000円削減、管理会社変更2回、排水竪管更新、直結給水切替、大規模修繕工事2回、保険の切替、立候補優先輪番制への規約改定と、仕様決め、業者選定、契約と、すべての業務を理事長と協議しながら、プロジェクトリーダー的役割を果たしてきました。
前半と後半で、どちらの労働時間が長かったかと言うと後半が2~3倍自分の時間を投入しています。しかし、どちらが返ってくるものが大きかったかと言うと、断然に後半です。
何が良かったか、以下の4点です。
- 大きなお金を動かすため、最善の選択をするためのプロジェクトマネージメント力や、クレーマ対策、とくに冷静に合意形成をすすめるスキルが身に付いた。
- お付き合いは濃すぎず、しかし、いざという時に協力できる管理組合員の絆が生まれた。
- 管理費値下げ、大規模修繕工事でオプション工事、網戸・サッシの調整業者の手配、直結給水切替、何か終わると組合員に感謝される。
- 自分で建物・設備の状況を把握しているので、長期修繕計画、管理費、修繕積立金が検証されているため、一生住める安心感を持てるようになった。
きっかけは、クレーマ組合員でした。クレーマ組合員が現れなければ、自分にスイッチが入ることはなく、様々な改革は進みませんでした。いつもクレーマ組合員のいいなりにやったわけではなく、様々な指摘を受けて最良の検討をし直して議決していきました。嫌な思いをして今も苦手なのですが、マンション最大の功労者と感謝しています。
組合活動を真面目に取り組むためには、きっかけが必要です。私のような刺激的なクレーマ組合員に触発されるか、がんばっている別の理事さんから触発されるか、管理会社に値上げを突き付けられる、修繕積立金が足りない事に気づいてショックを受ける、或いは、このブログを読んで刺激を受ける、どんなきっかけでも良いと思いますが、思い立つことがあったら、がんばってみましょう。
以下、4つのメリットを具体的に説明します。
スキルが身につくということ
管理組合の運営で、もっとも困難なことは合意形成です。
無風で総会が終わる管理組合では経験されないことですが、新築から30年経過して、なんの課題もなく無風の管理組合は少ないでしょう。
建物・設備はともかく、修繕積立金の値上げ、管理委託料の値上げ・消費税値上げなど問題に直面します。支払うお金が増えると少なからず、反発があり紛糾するはずです。いろんな世代、考え方の区分所有者がいますので、合意形成が難しいのです。
誰もが賛同してくれるように深く検討して質の高い総会議案にすることが合意形成のためには必須です。仕事で言えば、お客さんに提案するレベル、社内の高額な予算を伴う提案の稟議書を通すレベルの提案をすることです。
管理組合の修繕積立金で、数千万円、ときには1億円を超えるようなプロジェクトの検討して、責任をもって決断するスキルが身につくということがあります。これはプロジェクトを通じて仕事でも役立つスキルです。
とくに若い方は、このようなチャンスはなかなかないと思いますので、自分のお金だと思って、どうやれば、管理組合員に賛同してもらえるかを考えて、仕様決定、業者選定すると実務のスキルが身に付きます。自分の住まいであるマンションをよくする目的だけではなく、スキルアップのためだと思って取り組むとやりがいがあります。
管理会社の提案からスタートで良いと思いますが、金額が大きい場合には、その提案をもとにネット検索することが大事です。経験談を拾い集めて、他の選択がないのかを調べます。いくつかの選択があれば、管理会社にも質問して、その他の業者さんにも電話してヒアリングすることが大事です。納期と概算をヒアリングして管理会社の提案と比較する習慣をつけましょう。
さらにスケジュールを立てることです。管理組合の活動は輪番であれば通常は半数交替2年で終わってしまいます。やる気スイッチが入った役員が担当しなければ、良い結果にはたどり着きません。通常総会に併せて進めていくことが大事ですから、通常総会までのスケジュールを立てて動くことをお勧めします。
もっとも時間がかかる工程を、無理やり短縮すると高いものを買わされるリスクが高まりるので、見積もり依頼など、他社に依存する部分は、業者さんからヒアリングした時間以上に余裕をもって進めましょう。
複数の選択を調査検討、仕様を決めて、複数の業者から見積もりをとり決定するための予算取りであれば、通常は承認してもらえます。後は総会できちんと説明することです。
合意形成、選択が難しい案件では、最終選考に管理組合全員が参加できる形で業者さんのヒアリング会を用意することが大事です。管理組合員が多く参加して意見を言ってくれれば、理事が最終選択する上で、材料になりますし管理組合員も理解が進み合意形成しやすくなります。
これらの過程は、営業・マーケティングであればお客さんにサービスや商品を売るためのクロージングまでのスキル、購買であれば、最適の仕様で品質の高い業者から安くものを調達するスキル、設計など技術職や生産部門・品管部門など、対外的な業者さんとの接点がない部門では、社内の稟議を通すためのスキル、他部門の部長を説得するためのスキル、などに使えます。間違いなく社会人スキルを高めてくれるものです。
スキルアップとして、管理組合の抱える問題に取り組んでみましょう。
必要な時に協力できる管理組合員が増えるということ
管理組合員の、お一人様居住者さんはいませんか?
奇声をあげたり、部屋から異臭がしたり、ちょっと心配になるような挙動のマンションのお一人様。築40年になると、新築購入時の40代の購入者が80代、少しずつお一人様が増えて行きます。そんな彼らもマンション管理組合立ち上げ時は功労者だったかもしれません。
そしてその姿は、私たちの30年後、40年後の姿かもしれません。マンションで一人暮らしの高齢者、増えて行くことは間違いありません。
マンションは、隣に住んでいる人も知らない、近所付き合いをしたくない人が住むとも言われます。しかし、管理組合の活動で顔を合わせて協力すると、適度な協力関係が生まれます。
餅つき大会や、飲み会などのようなイベントをコミュニティ活動として取り入れている管理組合も多いですし、交流して仲良くなるでしょう。
しかし、楽しい活動以上に管理組合の理事会や修繕委員会で真剣に組合員と議論してプロジェクトを進めていくと、本質的な価値観が近い人、信用できる人が見つかり、本当の意味で協力関係できる仲間になります。
深い近所付き合いをする必要は全くありませんが、災害時など本当に必要な時は同じ建物に協力しあえる仲間がいることは、心強いです。
健康に不安を抱える高齢者が増えたら、あるいは自分がそうなるときも想像してみましょう。
話は少し飛躍しますが、日本の社会保障費は、増加の一途をたどっています。
高齢者が増えて、平均寿命が長くなり社会保障費が足りなくなる事は目に見ています。社会保障費が増え続けて、国債の引き受けを確保できないほど、国家予算が膨らむタイミングで、予算規模は拡大できずに、一人当たりの社会保障費を削減せざるを得ない状況になります。
国や自治体が財政的に動けなくなる時代、マンション内での公序の仕組みがあると、安心材料になります。今後、次世代に選ばれるマンションとして、マンション内の公序の仕組みも重要になるでしょう。
管理組合の活動を協力して出来る仲間がいることは心強いです。個人が頑張りすぎると、燃え尽きてしまいます。仲間と協力してすすめられるメリットは大きいです。
区分所有者に感謝されるということ
輪番制で、管理会社の提案を受け入れて、承認するだけの理事、理事長をしていたら区分所有者からお礼を言われることはまずないのではないかと思います。それは、誰でも出来ることだからです。
感謝されるのはあくまでも結果ですが、自分事として自分の住まいを守るかという活動をして、いろんな困難を乗り越えていったら、結果として戻ってきたものが他の区分所有者からの感謝の言葉でした。想像以上の喜びでした。
自分が中心となり実現したことが、他の住民にとっても最善と言える選択だったと認めてもらえたことが嬉しかったです。
管理会社との関係は、つかず離れず、嫌われないように気を遣っています。これも他の組合員の要望でもあります。築古小規模マンションでは引受先は限られているからです。管理会社とうまく付き合い、大きな工事ではコストダウンしながら必要な活動をするというのが、築古マンションでは重要です。
高齢の区分所有者には、負担が重すぎスキルの問題もあるため不平等だとは思いましたが、自分で片づけるべきものは片づけたという感じです。それも一段落したので輪番制で理事を降りて、これまで組合活動に顔をだしたことのない方に、理事、理事長を引き継ぎました。新しく自分の事として、動いてくれる組合員が増えることを、少し期待しています。
一方で、どんなに良い提案をしても否定する組合員もいます。酷いことをいうクレーマ組合員もいます。そういう組合員とは、合意できる妥協点をさぐりつつ、ある段階で諦めて、総会で議案を通すことに集中しましょう。
組合員全員から賛成されることは無理です。それでも、全会一致に向けて合意形成に努めようとする姿勢は他の組合員が見ていて、その努力も評価してくれることもあります。
がんばった結果、かえってくるメリットとして、他の組合員に感謝されることを上げました。
建物の将来が予測できるため安心して暮らせる
私のマンションは管理費収入に対する固定支出は7割程度に収まっております。今後の値上げ懸念があるものでインパクトの大きい費用は管理員・清掃員費です。しかし、あるレベルまで時給が値上がりすると区分所有者の中で、業務を引き受ける人が出てくると見ており、やりくりできると考えています。
修繕積立金は、専有部平米あたり200円ですが、長期修繕計画を精査すると、5年後には、専有部の給水管・給湯管の更新も大部分を修繕積立金で実施できる積立金があります。この工事を実施することで専有部漏水の懸念は、ほぼなくなります。
残る専有部配管は、排水横配管と、汚水横配管だけです。懸念がないわけではないですが、樹脂なので20年は問題ないと予測しています。
予想通り塩ビの排水横管と汚水配管の事故がなければ、4回目か5回目での大規模修繕工事では使用頻度の高いサッシの交換も出来ると見ています。
残りの自分の人生が40年だとして、自分のマンションで暮らす上で、自分が中心にやらないといけない工事の見通しもついているため安心して暮らせます。これは大きなメリットだと私は考えています。
今後やるべきことは、マンションを若い方に購入していただき、自分の後継者として管理組合の活動で動いてもらえる人材に育てて、自分の死後、築100年でもマンションに空室がないように組合活動をバトンタッチしていくこです。
マンションの方が、人より長く生きる時代で、世代を超えてインフラとして残していくという考え方が大事です。
まとめ
管理組合活動に力を入れることで、得られることは4つありました。頑張って活動することで、会社でも使えるスキルが身に付けること、マンションに協力できる仲間が出来ること、他の組合員に感謝されること、建物の将来が予想できるため安心して暮らせること、です。
以上
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