マンション修繕のお悩みを聞いていますと、マンション管理会社への不満がたまっているケースがあります。しかしそんな場合もまずは関係修復するために、管理委託契約書に戻って、管理組合でやるべきこと、管理会社に依頼すべきことと整理して依頼することで、関係修復をすることについて前回のブログで説明しました。

マンション管理会社も管理組合を選ぶ時代です。まずは関係改善をしましょう。


マンション管理会社変更を考える前に関係改善を

しかし、修復できない、どうしても譲れないとお考えの管理組合はどうすれば良いでしょうか?管理会社を変更をすれば良いのです。

手順や、引継ぎは複雑ですがその前に、引き受けてくれる管理会社から見積もりをもらい、理事の中でのコンセンサスを得ておく必要があります。

古いマンションで小規模のマンションで管理を受けてくれる会社があるのか、どうやって探せばよいのか?という疑問に答えたいと思います。断られない管理会社のリプレース候補先の見つけ方の3つのポイントについて説明します。

労働人口減少時代で、管理人、清掃人を見つけるのも大変です。マンション管理会社も収益性を考えて管理組合を選ぶ時代になっています

マンション管理業市場規模や、管理会社の分類について解説して、マンション管理会社の管理組合当たりの売上規模=利益率に注目した管理会社探しをする方法について説明します。

分譲マンション管理会社市場の現状

国交省の統計によれば、全国に管理戸数が675万戸(2020年末)あります。一般社団法人マンション管理業協会の会員であるマンション管理会社358社が管理している戸数は、2020年4月で約617万戸、組合数は99,588組合ありますから、管理業協会会員以外の管理会社も併せると約100,000組合は存在することになります。さらに、マンション管理業協会の新規の受託棟数が2020年で1,368とあります。

つまり管理組合は約100,000組合ほどあり、新規供給は1.3%程度(1,300組合程度)のペースで微増を続けていることになります。その市場期は、矢野経済研究所の市場規模推定では、分譲マンション管理市場は2018年で7,459億円となっています。

図1. 分譲マンションの管理事務の委託、管理会社への委託の比率

図1に示した通り、2018年の国交省のマンション総合調査結果のアンケート(324ページ)によると、管理会社には、全部委託79%、一部委託12%、自主管理の割合9%となっています。

近年の新規案件で自主管理という話は聞かないので、約100,000の管理組合のうち、約8割の約80,000組合の既存物件と、約1,300/年の新規物件が、マンション管理会社の市場ということになります。

図2. 分譲マンションの管理会社委託先(変更していない73%)

さらに、図2に示す通り、2018年の国交省のマンション総合調査結果のアンケート(324ページ)によれば分譲時の管理会社に委託している管理組合が73%になるので、約80,000のうち、約58,000が一度も管理会社を変更していない管理組合で、約21,600が管理会社を変更した管理会社ということになります。

マンション管理組合にとって、管理会社変更は敷居が高いと考えるべきでしょうか。

分譲マンション管理会社の分類と管理費、修繕積立金

マンション管理会社には、デべロッパー系、独立系、建物管理系の3種類に大別されます。デベロッパー系は、親会社がマンション分譲会社、独立系は文字通り独立系、建物管理系は、商業ビル、オーナーマンションなど分譲以外の建物管理などの建物管理を幅広く行っている会社か、その子会社です。

約1,300/年の新築物件を獲得ができる会社は、デベロッパー系と呼ばれる管理会社のみです。大京グループであれば、「ライオンズ」の名がつくマンションは、管理会社は大京アステージ、野村不動産グループであれば、「PROUD(プラウド)」の名がつくマンションの管理会社は、野村不動産レジデンシャルと、親会社のデベロッパーが分譲したマンションを、子会社の管理会社が管理します。

新規物件は、デベロッパーが販売して、その管理をデベロッパー系が受託して、その後、デベロッパー系から、独立系に管理がリプレースされる場合もあるという流れなります。近年デベロッパー系も既存市場のリプレースをすることもあり、それぞれの特徴を出して市場を奪い合っています。

新規案件では、新築の管理規約や、管理費、修繕積立金の設定はデベロッパーが決めるため、管理費は高め、修繕積立金は低めに設定されています。管理費が高いのは、子会社の管理会社経由でマンションを購入した区分所有者に、しっかり管理委託料を払ってもらい、株主である自社に利益が回ってくる仕組みをつくるためにそのように設定しています。修繕積立金は高く設定すると販売しづらくなるため分譲会社が、 修繕積立金を逆に意図的に低く設定しています。

通常は一度目の大規模修繕工事が終わるころ、築10年から20年目くらいまでには、長期修繕計画を見直す過程で、建物以外の給排水設備、エレベータ、機械式駐車場などの更新をする費用が足りない事があきらかになり、修繕積立金は、通常は専有部面積あたり200円/m2程度に上げる見直しが入ります。

管理会社の対応に不満をもった管理組合は、通常は、複数の管理会社に提案を依頼して、提案内容と管理委託料を見て管理会社を変更します。その場合、管理費(管理費すべてを管理会社に払うわけではなく、そのうちの管理会社に支払う分が管理委託料)が下がることもあります。

管理会社から見ると、新築時のマンションの修繕もなく管理費設定が高い時代が収益性がよく、経年とともにやることも増えて管理組合も情報が増えて行き、管理費見直しされて収益性は悪くなっていきます。

図3.マンション管理会社の変更と、管理費と修繕積立金の関係

図3に示したように、新築時は、管理費が高めで、極端に安い修繕積立金から、築年数を経て、管理費・修繕積立金が適正価格に見直されていくということになります。

管理組合当たりの年間の売上(主に管理委託料)に注目する

マンション管理新聞社が、年1回、受託戸数別ランキングを発表しています。上位30社のマンション管理業協会のホームページの会員一覧から、得られる最新のマンション管理部門売上と、管理組合数、管理戸数の上位30社を表にします。管理組合あたりの管理会社の売上(主に管理委託料)で大きい順に並べ変えています。

表1. 管理戸数上位30社の管理会社と管理組合あたりの売上(管理委託料)

No管理会社管理組合数管理戸数マンション管理部門売上
(千円/年)
マンション管理部門売上 /管理組合
(千円/年)
1
野村不動産パートナーズ株式会社
2,239166,07638,356,39717,131
2住友不動産建物サービス株式会社1,852173,03130,833,77516,648
3大和ライフネクスト株式会社3,916273,01158,658,97014,979
4三井不動産レジデンシャルサービス株式会社2,428202,60635,498,30114,620
5株式会社日鉄コミュニティ58952,7097,263,02912,331
6株式会社穴吹コミュニティ2,041110,49121,733,912 10,648
7三菱地所コミュニティ株式会社4,330334,07445,572,00410,524
8株式会社東京建物アメニティサポート1,17476,22611,439,5249,744
9近鉄住宅管理株式会社75068,4777,291,9799,722
10大成有楽不動産株式会社75257,0617,245,7819,635
11伊藤忠アーバンコミュニティ株式会社1,292106,24311,016,5218,526
12日本総合住生活749161,1626,322,8688,441
13日本住宅管理株式会社80343,4006,537,7328,141
14株式会社長谷工コミュニティ3,613366,79328,464,5297,878
15株式会社大京アステージ7,635431,65859,465,9557,788
16株式会社東急コミュニティー5,209341,64255,690,0007,519
17ホームライフ管理株式会社59339,4733,909,4086,592
18株式会社浪速管理52752,6293,438,4026,524
19日本管財住宅管理85750,1725,494,9796,411
20関電コミュニティ株式会社50441,2073,180,1836,309
21株式会社レーベンコミュニティ91857,1904,659,5895,075
22日本ハウズイング株式会社8,598469,89842,326,0004,922
23ナイスコミュニティー株式会社1,39964,5636,680,3794,775
24株式会社穴吹ハウジングサービス2,685127,53212,683,8894,723
25明和管理株式会社86741,1264,082,5434,708
26コミュニティワン株式会社3,248160,68315,189,9474,676
27株式会社ライフポート西洋1,23450,8295,414,7024,387
28エムエムエスマンションマネージメントサービス(株)60837,3772,378,2653,911
29株式会社合人社計画研究所4,316223,04316,136,5883,738
30グローバルコミュニティ株式会社2,226101,0287,618,7003,422
上位30社合計67,9524,482,310564,584,851(平均)8,148

管理会社にマンション管理を委託している管理戸数が、80,000程度なので、そのうちの84%が上位30社が握っていることがわかります。

売り上げを管理戸数で割り、月額換算すると以下になります。

  • 上位30社平均 戸当たりの管理委託料 10,497円/月・戸
  • 上位30社平均 組合当たりの管理委託料 692,282円/月・管理組合 (8,308,583円/年) 

となります。

これは上位30社の管理物件の平均であり、マンションの規模によって大きく違う事になります。20世帯なら、21万円/月程度、100世帯なら104万円/月程度支払うことになります。

管理会社から見て、戸数が多い大規模マンションと、戸数が少ない小規模マンションではどちらが管理会社は管理委託契約が欲しいでしょうか?

1年に1回通常総会が開催、2か月に1回、理事会が開催されるとして、フロントマンの手間は大規模マンション、小規模マンションで異なりますが、当然ながら大規模マンションの管理組合の方が、1組合から得られる売上も利益も大きいため大規模のマンションの管理が欲しいです。

分譲マンションを親会社のデベロッパーから管理を任された管理会社も、大規模マンションの管理のフロントマンには良い人材を割り当てて、管理組合の満足度をあげて、他の管理会社に奪われないように努力します。表1を見ると、タワマンや大規模分譲マンションを多く供給するデベロッパー系の管理会社は、収益性が高く上位にあります。

断られない管理会社選びは、管理組合あたりの売上(管理委託料)に注目します。

断られないマンション管理会社の探し方、3つのポイント

現在の管理会社より 管理組合あたりの売上(管理委託料) が低い会社

現在委託している会社より、組合あたりの管理委託料が低い会社を選択することで断られない可能性が高まります。管理会社を変更するのに管理委託料が値上がりするのでは、総会で変更を否決される可能性も高くなります。

労働人口が減少し、最低賃金が上昇している現在は、フロントマン、管理員、清掃員を見つけるのも大変です。管理会社も管理組合を選別します。

自社の平均より収益性の低い管理組合に価格競争をして、無理をして提案する利用もないわけです。

このリストに現在委託している管理会社がある場合は、その会社よりリスト下にある管理会社に見積もり依頼してみてください。

このリスト30社にない管理会社と管理委託している場合は、マンション管理組合の通常総会で配布される会計報告をみて年間の管理費と修繕積立金の合計金額が、年間売上/管理組合より低い管理会社に見積もり依頼してみてください。

あるいはすべて断れた場合または、このリスト30社の年間売上/管理組合よりも、年間の管理費と修繕積立金の合計が下回る場合、管理会社サーチをお試しください。もしマンションが、1Kから3LDKまであるような専有部面積が異なる複合型マンションの場合は、年間の管理費と修繕積立金の合計金額を戸数で割った金額を管理費、修繕積立金に入力して検索してみてください。きっと提案してくれる会社がみつかります。

マンションの近くに管理物件があること

2つ目のポイントは、管理物件が近隣にたくさんある管理会社であれば、フロントマンも効率よく業務できるので管理会社も提案しやすくなります。

管理会社の業績が悪化した場合に、周辺に管理物件がないとその地域から撤退するというリスクも高まります。本店、支店の事務所の所在地はホームページを見てもわかりますが、管理会社にヒアリングする際に、近隣に管理しているマンションがあるかどうかをヒアリングするのが良いでしょう。

大規模修繕工事に対するスタンスを確認する

管理委託料が下がっても、高い大規模修繕工事を提案されて発注を迫られる管理会社とお付き合いすると、大規模修繕工事のタイミングで後悔することになります。断られない管理会社探しと言うより、大規模修繕工事のタイミングで後悔しない管理会社選びのためのポイントになります。

管理会社には、大規模修繕工事の元請けをする工事会社の顔を持っている会社と、元請けをしない、設計監理のみを引き受ける会社と2種類あります。

元請けをする工事会社の場合は、適正価格で工事を実施するには、管理組合の中で動ける人がいないと相見積もりを取るのに苦労しますので適正価格で実施するには苦労します。元請けをしない、設計・監理のみを引き受ける会社ですと、管理組合が相見積もりをするのは比較的容易です。

詳しくは、こちらのブログをご覧になっていただき、ご自身の管理組合はどちらの管理会社が合っているか判断して下さい。


マンション管理会社とうまくつき合い大規模修繕工事を適正価格で実施する

この3つの指標で管理会社を探すと断られない可能性が高く、次回の大規模修繕工事のタイミングでも後悔しないでしょう。

実際には、各管理会社の方針でリプレース案件はしないと宣言している会社も表1には、含まれていますので、ホームページを見るか、直接問い合わせて確認してください。

実際の管理会社の変更手順は、簡単ではありませんが、また別の機会でご説明したいと思います。

まとめ

  • 管理組合は約100,000組合ほどあり、新規供給は1.3%程度(1,300程度)のペースで微増を続けていることになります。
  • 約8割の約80,000の組合が管理会社に管理委託契約していて、そのうち73%の約58,000は新築分譲時の分譲会社が選んだ管理会社と契約、27%、約21,600の管理組合は、一度、管理会社を変更した管理組合になります。
  • 管理戸数上位30社の売上(=年間管理委託料の合計)は、5645億円で、組合当たりの管理委託料は、692,282円/月・組合、戸当たりの管理委託料 10,497円/月・戸です。
  • マンション管理会社を変更する場合は、管理組合あたりの売上規模(=年間管理委託料の合計)を指標にして、現在のマンションの管理費と修繕積立金の合計金額と比較して、提案を依頼すると断われる可能性が低いです。
  • さらにマンション近隣にその管理会社の管理物件があり、会社の事務所も近くにある会社であることも断られない管理会社候補になります。さらに、大規模修繕工事に対するスタンスをヒアリングして後で後悔しない管理会社を選択しましょう。

以上

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