マンションの終わりをイメージする

築50年を迎えた分譲マンションは、国交省の資料(築後30,40,50年超の分譲マンション戸数)によれば、2020年では、11.5万戸であったのに対して、2040年には、213万世帯に増えます。

一方、日本の人口は、人口問題研究所の予測によれば2020年1億2,500万人の人口が、2040年には、1億1,000万人まで、約1500万人、12%ほど減少する予測がされており、分譲マンションも空き室が増えることは間違いありません。

現在の法律、マンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律によれば、区分所有者による建替え、または敷地売却、除却が想定されていますが、区分所有者の総議決権数の4/5という敷居の高さもあり、国交省のマンション建替実施状況によれば2020年4月現在で全国のマンションで建て替え完了したマンションは254棟(阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震による被災建替え除く)、そのほか、同法律の敷地売却制度による売却が10件という実績で多くはありません。

とくに多くののマンションが容積率、建蔽率いっぱいに建物を建てています。住民の負担が多く、引っ越し、建替え、引っ越しと手間がかかる条件を通してでも今住んでいるまさにその同じ場所に住む理由もなく、マンションの建て替え等の円滑化に関する法律によるマンション議決権数4/5の総会決議を得るのも困難です。

しっかり修繕を行って延命、長寿命化が大事になってきます。分譲マンションに住んでいる方は、無駄な管理費を抑えて必要な修繕を適正な費用で実施する意識を高めていく必要があります。

2040年での人口統計から分譲マンションの未来を予測したいと思います。

2040年の日本、東京の人口

人口問題研究所の統計と予測によれば、日本の人口は、急速な減少に向かっています。2040年には、約1億1千万人、2050年には、約1億人程度まで減少すると予測しています。

2020年から2040年までの1500万人の人口減少分は、日本のマンションストック数の665万戸ですが、一戸あたり2.3人住んでいると仮定すると1,576万人となるため、2020年にマンションに住んでいる全員分の人口とほぼ同じ人数分がこの20年で減少することになります。

マンションだけが空家になるわけではないですが、築古になっても選ばれるマンションとそうでないマンションで、空室率には差が出るでしょう。

東京都全体と、区部、多摩地区のいくつかの市の人口予測を見ていきます。

図7.青梅市(人口予測)国立社会保障・人口問題研究所>将来推計人口・世帯数>日本の地域別将来推定人口(2018年推計)>男女5歳階級別データ 13.東京都より 2020→2040年で15.3%減少

東京都全体では、2040年の人口予測では、2030年ごろをピークに減少に向かうものの1,375万人と、2020年とさほど変わらない人口という予測です。

東京都と言っても一言でまとめられずに、区部でも山手線の中、区部の山手線の外と、多摩地区の西側の八王子市、青梅市のような都市と、その中間の立川市、小平市のような場所では、傾向は異なります。

代田区や港区などのように2020年から2040年で、18-19%人口が増えるような区部の山手線の中と大田区、世田谷区のように人口減少傾向が始まるものの2040年でも1-2%増加する区、多摩地区の最も西にある八王子市や青梅市など既に人口減少が始まっている市では、2020年から2040年で12%~15%減少、その中間にある立川市や小平市のように間もなく減少が始まる市では、2~3%程度の減少との予測になっています。

新型コロナウイルスの影響で、土地の価値は変わる可能性もありますが、大きな流れとして区部の価値は高まり人が集まり、郊外に行くほど人口が減少していく傾向は大きくは変わらないと予想します。

築50年を超えるマンションの現状

多摩地区ですと築50年のマンションはほとんど見かけませんが、大田区や世田谷区には、築50年を超えるマンションは多いです。区部の築50年のマンションにお住いの方のお話を聞くと、マンションによってだいぶ状態に差が出てきているようです。

1981年5月より以前に建築確認申請した旧耐震のマンションであることに加えて、給排水配管の共用部・専有部の配管のメンテナンス状況によって、差が出ているようです。

耐震工事をしているかどうかと、実施していない場合はどのくらいの費用がかかるのかということ、給排水配管の共用部・専有部の配管の更新工事の把握と、管理組合が何年建物を維持するかという意識を持っているかによって、マンションの寿命が決まります。

築50年マンションは専有部の配管の漏水事故が問題になります。標準管理規約では専有部の配管は、専有部の責任で実施することになっています。現実には床を壊して、配管工事をするのは大変ですから漏水事故が起こるまで放置となり事故がおきてから対応となっているのが現状です。

マンション管理組合が主導で専有部の配管更新をするべきだと私は考えておりますが、すでに配管工事を実施した専有部に対する補償の問題や、専有部の配管についての修繕積立金を使用することや、更新後の責任を管理組合が追うことについてなど、管理規約の改正など課題もあります。こちらのブログに管理規約の改正案を載せています。

マンション建替・除却に関する法整備

マンションの建て替え等の円滑化に関する法律には、敷地売却制度と、建替えの選択肢があります。敷地売却制度は、耐震性不足や、外壁の剥落等により危害を生ずるおそれがあるマンション等を耐震診断では行政が認定した場合のみ適用が可能で、その後、区分所有者の4/5以上の総議決権数の賛成を得て敷地売却組合を設立して、実現できるという法律です。使用するために敷居が高いです。

建替もやはり総議決権数の4/5以上の賛成を得て建替組合を設立して実現できます。容積率の特例という制度もあり容積率を増やして分譲戸数を増やすことで資金を捻出できる可能性もあります。各都市で規制の許可基準があるようですが、建替に直面する古いマンションがない市では準備しているわけではなさそうです。

この法律は、敷地売却制度、建替どちらも反対の区分所有者の持ち分を、組合が時価で買い取る制度になっている点も使い勝手が悪いです。デベロッパーの支援があるか、コンサルタントの支援を受けて組合が借金をしてすすめるかになりますが、管理組合及び、区分所有者の負担は大きいです。

建替の場合、修繕積立金が高めに設定されていても建て替えが出来るわけではあり得ません。一時金が必要になります。

資金計画に目途をつけた上で、区分所有者の総議決権数の4/5以上の賛成が必要となるわけで、簡単には敷地売却組合や建替組合設立は出来ません。100世帯のマンションでは、管理規約の変更や敷地及び共用部の変更のための総議決権数の3/4以上の賛成を集めるのも大変な労力を伴うのに、4/5という100世帯マンションで、80世帯の合意を取り付けることは、さらに敷居が高いです。その同じ場所に住み続けたいという強い意志を持った住民が多くないと不可能と言って良いのではないでしょうか。公的な支援などがない限りは建替という選択にはなりません。

この後は、マンションの終わりの悪いシナリオと良いシナリオについて私の想像を書きます。

マンションの終わり、悪いシナリオ

旧耐震マンション、さらに共用部・専有部の配管の漏水を抑えられないマンションは、応急措置を繰り返しながら住民は区分所有者から賃貸住民に入れ替わっていきます。しかし、立地の悪いマンション、さらには修繕が適正に行われていないマンションなどは、売却したくても売却できずに管理費・修繕積立金が支払えない区分所有者が増えていく悪循環が始まります。管理会社は契約を打ち切り、管理も修繕が出来なくなり、誰も住まない廃マンション化の道に向かいます。

敷地売却制度による、総議決権数の4/5以上の賛成のハードルも今後は下がるかもしれませんが、やはり管理組合員の高齢化問題もあり、管理費・修繕積立金の滞納が始まったマンションでは、難しくなります。

マンション1棟購入して再生させて賃貸に出して地価が上昇するタイミングで売却するプロがいますが、そのようなプロが廃マンションの道をたどる区分所有者一人一人と交渉して4/5以上買い取った段階で、敷地売却組合を設立して建物を壊して土地だけを売却するという「マンション壊し屋」のようなビジネスが成り立つようになると予想します。建物はどんなにひどくなっても、地価が維持されていれば商売は成り立ちます。

建物はしっかりしていても、専有部の給排水配管の漏水が止まらないようなマンションの場合は、買い取ってしまえば、無人の状態で全室フルリノベすることで、再生することも出来ます。古いマンションで一部屋が大きいなど使い勝手が良いマンションは、「マンション一棟再生屋」も現れるかもしれません。

区分所有の最大の問題は、合意が出来ないことですから、大きいマンションほど意思決定が難しくなります。一人が買い取ってしまえば話はまとまります。

100世帯のような大きな規模ですと難しいですが、20-30世帯の小規模マンションだと可能性はあります。とくに、廃マンションに向かう過程では、区分所有者は非在住、賃貸マンション化しているので可能性はあるでしょう。賃貸の借り手がなくなれば、固定資産税だけ払い続けるのであれば、少しでも現金になれば良いと考える区分所有者から買いとれば利益も多く残せるでしょう。

2040年であれば、東京都内であれば、区部は人口減少しておらず、多摩地区も、人口減少も始まっているものの地価が大きく下落しているとは考えづらく、新しいビジネスとしてなりたつでしょう。

悪いマンションの終わりをまとめると、管理組合の話し合いがないまま、廃マンション化に向かって区分所有者が買いたたかれて、除却されるシナリオです。

とあくまでも、私の予想です。

マンションの終わり良いシナリオ

良いシナリオのイメージは、50年定期借地権付きマンションのように明確に、除却の期限を設定をして、マンションを終わらせるシナリオがあります。

マンションの寿命を100年のようなマンションの状態と住民の意向で設定をします。その年数に合わせて修繕計画を立てます。修繕積立金の一部を、あるいは別建てで解体積立金を準備していきます。

解体の20年前から組合員は徐々に非在住組合員化させていくように、管理組合が区分所有者と契約します。相続などの機会に、少しずつ非在住マンションとして行き賃貸マンション化をすすめていきます。期日が来ても引っ越しできる組合員は除却直前まで住んでも問題ないかもしれません。賃貸に出している専有部は最後の数年間は更新のない定期建物賃貸借契約として、最後はすべての住民がいなくなりマンションを使いきって、解体売却するというのが良いシナリオです。

人口減少が始まり地価が下落する前に行えば、考えられるシナリオで、除却後に土地を売却して、組合員にも持ち分比率に応じて返金することができます。

しかし、20年前に、解体する合意を敷地売却制度による、総議決権数の4/5以上の賛成をとるというのはやはりハードルは高いです。20年後にいくらで土地を売却できるかまで読んで合意をとるのは簡単ではないです。

良いマンションの終わりをまとめると、管理組合が話し合いをして、マンションの終わりの期日に向けて、賃貸マンション化して、良い条件で売却するシナリオです。

とあくまでも、私の予想です。

2040年に良いシナリオで売却するシュミレーション

自分の住む小平市のマンションを2040年に売却する気持ちはありませんが、仮定の話として解体売却した場合の除却利益を計算してみます。固定資産税納税通知書を元に土地は、固定資産税評価額が、実際の不動産取引実勢価格の7割として計算してみました。解体費を延べ床面積7万円/坪、世帯当たりの土地売却益から解体費を差し引いく計算です。2006年より古マンションはアスベストが使用されており、解体のときの飛散防止対策も必要で、延べ床面積7万円/坪という価格が妥当かどうかはわかりません。

図11.自分の住むマンションを2040年に売却した場合の売却益

小平市の2040年の土地の価格は、現在より人口が2.7%減少しているという予測なので、人口減少分だけ土地の価格が下落すると仮定しています。解体費用は、床面積あたり7万円/坪として、土地を売却すると仮定すると、1世帯当たり約600万円ほど売却益が残る計算になります。

このように考えると、敷地の広いマンションほど、解体時の価値は高いということになります。

図12.自分の住むマンションを2040年に同じ延べ床面積で建替した場合の費用

同じ仮定で、同じ床面積の建物を同じ戸数で建てると仮定して、建設費を床面積あたり70万円/坪とすると、1世帯あたりの負担は、15,714千円/世帯となりました。マンションの建て替え等の円滑化に関する法律の容積率の特例という制度などは考慮していません。デベロッパーの利益は入れていないため、実際にはもっと多くの費用負担になりますが、この概算の時点で、持ち出し負担が大きく建替えは無理だということになります。

とくに築50年を超えるマンションは高齢者が増えていますので、先が長くない区分所有者が、15,714千円/世帯以上の一時金を支払うのは難しく、総議決権数の4/5以上の賛成は集まらないということになります。

現実的には、築古分譲マンションの多くは、50-60年で除却や建替と言う選択肢は不要で、80年、100年など解体の時期について、区分所有者が合意できる期限を決めて、長期に計画を立てて、1棟まるごと売却するか、解体して土地を売却するという選択となるでしょう。

これが、良いシナリオのマンションのおわりです。

2040年では、日本全体では人口は約1,500万人、12%ほど減少している予測されています。立地と建物の状態でこのシュミレーション通りに行かないマンションも多くあるでしょう。読んでくだった皆さんの20年後に自分のマンションがどうなっているか?今から管理組合内で話題にして考えるきっかけになればと思います。

まとめ

  • 国交省によれば、2020年では、築50年を超えた分譲マンションは、11.5万戸であったのに対して、2040年には、213万世帯に増えます。
  • 人口問題研究所の統計と予測によれば、2040年には、約1億1千万人、2050年には、約1億人程度まで減少すると予測しています。
  • 人口問題研究所の東京都の人口予測は、2040年の人口予測では、2030年ごろをピークに減少に向かうものの1,375万人と、2020年とさほど変わらない人口という予測です。
  • 東京都でも格差は大きく千代田区や港区などのように、18-19%人口が増えるような区部の中心部と、1-2%増加の大田区、世田谷区などと、東京の最も西にある八王子市や青梅市など既に人口減少が始まっている市では、2020年から2040年で12%~15%減少、区部と最西部の中間にある市の立川市や小平市のように間もなく減少が始まる市では、2~3%程度の減少との予測になっています。
  • 築50年を超えるマンションは、区部にはありますが旧耐震基準の建物です。建物の修繕状態と、共用部・専有部の給水・給湯・排水配管のメンテナンスの差によって状態には差が出てきています。
  • マンションの建て替え等の円滑化に関する法律には、敷地売却制度と、建替えの選択が用意されていますが、どちらも組合員の総議決権数の4/5以上の賛成が必要となるためハードルが高いです。
  • 自分のマンションを2040年に解体売却するシュミレーション、建替えするシュミレーションを行いました。解体売却するシュミレーションは、土地の価格が下落しなければ現実見があります。建替えは高齢者が多く住む築古マンションでは現実的ではありません。計画的に解体売却時期を決める良いシナリオと、廃マンション化がすすみ土地取得目的で買いたたかれて解体される悪いシナリオが考えられます。あくまでも私の予想です。

以上