マンション標準管理規約のパブリックコメントは、2021年5月20日まで行っており、その後、6月22日、正式版として公開されました。その内容を以下のブログで解説しています。よろしければこちらのブログもご覧ください。
オンライン総会、敷地売却決議ほかマンション標準管理規約(単棟型) (2021年6月22日)の改正
マンション標準管理規約が改正になります。2017年8月の住宅宿泊事業法(民泊新法)への対応以来の大規模な変更となります。改正案が既に公開されており、国交省の意見公募(パブコメ)が始まっています。期間は、2021/4/14~5/20までとなっています。変更時期は未定ですが、今回の規約改正の一部である管理計画認定制度の開始予定が、2022年4月とマンション管理業協会がアナウンスしているため、早くて2022年4月に改正と予想されます。
今回の改正は3点です。
- 新型コロナウイルス感染症対応(オンライン総会についてなど)
- 専有部配管への修繕積立金を使って実施する場合の留意点
- 管理計画認定と要除却認定の申請の総会議決事項への追加
マンション標準管理規約は、国交省が区分所有法に基づいて分譲マンション管理組合向けに作成したものですが、よく出来ています。ほとんどすべての分譲マンションが、改正されてきたあるバージョンの標準管理規約を元にして自身のマンション管理規約を作っています。
標準管理規約コメントまでよく読むと、専有部・共用部の線引きや占有部負担と修繕積立金で負担すべきものなど明確になっています。とくに修繕積立金は、区分所有者全員に平等に使用されるべき時のみ使用できるものとして扱われており公平です。
今回の改正を簡単に解説して、私が国交省に提出した「専有部配管への修繕積立金を使って実施する場合の留意点」についての意見を公開したいと思います。
目次
規約変更案概要
表1 規約変更案
大項目 | 条項 | 改正内容 |
1.新型コロナウイルス感染症対応 | ||
1.1 ITを活用した総会・理事会 | 2条+コメント | WEB会議システム即時性、双方向性のある映像・音声で通信を行うことが出来る会議システムと定義 |
3条、38条コメント | WEB会議システムによる総会が可能と明記 | |
52条コメント | 招集方法としてURLを送る | |
43条コメント | なりすまし対策などのパスワード送付等 | |
46条コメント | WEB会議で議決権が行使できること | |
1.2マンション内感染防止対策 | 18条コメント | 共用施設を使用停止等にできる細則が定められる |
42条コメント | 総会の延期が可能 | |
2.専有部配管 | 21条コメント | 専有部横引きの給水・給湯・排水配管等を修繕積立金で実施する場合の取り扱いについて記載 |
3.管理計画認定と要除却認定の申請 | 48条 | 総会議決事項として管理計画認定と要除却認定の申請を規定 |
新型コロナウイルス感染症対策
昨年2020年は新型コロナウイルス対策で、総会が延期になった、実施したものの議決権行使書が奨励されてまともな議論もなく議決されたと言うマンションも多いでしょう。 実は、現在の管理規約でも「WEB会議システムによるオンライン総会は実施を否定しないつまり可能」という見解が公益財団法人 マンション管理センターから2020年5月20日出ています。ですので規約改定前の本年度も、マンション管理センター指摘の注意点を守り、オンライン総会を実施して問題ありません。
しかし、この本規約改正でより明確にオンライン総会が可能になります。URLを伝える招集方法や、なりすまし防止対策のパスワードなどがコメントで追加されました。現実には、WEB会議システムをだれもが使える、通信障害が全くなしで使える時代と言うのはまだ先なので、当面は理事長・役員・管理会社によるリアル総会+組合員オンライン参加という形で、最終形として理事長、役員、組合員も自宅や外出先から、管理会社も会社から参加する完全オンライン総会が開催されるようになると予想します。なお、理事会も総会に準じて、オンライン化が可能になります。理事会は少人数であるため完全オンライン対応している組合もあると聞いています。
共用部の施設の規制を管理組合の判断で行うことは、個人の権利を縛るものなので踏み込んで記載がされたため運用しやすくなったと思います。緊急事態宣言などと異なりマンションの施設が使用禁止になることは生活の生業にならなければ、受け入れられる内容だと思います。
専有部配管を修繕積立金を使用する場合の対応
専有部配管については、これまでも管理規約変更案をメルマガで書いてきました。給排水管は、動脈、排水管が静脈です。寿命が長い樹脂配管に更新してしまえば錆びないため、50年使用することも可能と言われており、マンション長寿命化のためには、管理組合で一斉に更新を実施すべきものと個人的には考えています。費用負担が莫大で個人負担が原則となっていたため実施できているマンションは少ないようです。この規約改正で管理組合が一斉に更新をしやすくなりました。
専有部配管を修繕積立金を使用して実施する際の公平性を担保するための規約変更私案
床下専有部配管はだれのもの?
管理計画認定制度と要除却認定
管理計画認定制度
以下、2020年7月30日 第1回マンション管理の新制度の施行に関する検討会での資料3 マンション管理適正化法の改正概要の内容をまとめています。
マンション管理適正化法の改正にともない、マンション管理組合が管理計画認定を申請した場合、適正な管理がされているマンションは地方自治体が認定、逆に、適正な管理が出来ていないマンションは、地方自治体が指導・助言できるという制度です。マンション管理業協会のアナウンスによれば、2022年度4月に開始予定とあります。
管理組合が認定を受けるメリットは、はっきりしていませんが、共用部の火災保険が安くなるとか、マンションの中古で売却する際に選ばれる理由になるなどのメリットを出すことにつながる認定制度として、申請を促していくことを狙いとしているようです。
強制力はなく任意のようです。管理計画認定については、管理組合総会で決議事項として申請として規約案に追加されていますが、管理組合のメリットが見えてこないと余計な仕事が増えてしまうだけになるためこの規約改正だけでは普及は難しいと思われます。
すでに、マンション管理業協会から評価シート(仮)を公表しています。
表2 マンション管理管理 適正評価制度のチェック項目
1.客観情報 | -共用部の保険、保険事故の発生状況 -借入金残高 -専有部分使用規制関係(細則などによるペット飼育規制、専有部分工事の制限など) -大規模修繕工事が適切に実施されているか、修繕積立金の積立方式 -アスベスト使用調査 -管理会社との管理形態、専門的知識を有する者の活用 |
2.管理状態 | -管理規約の整備状況、準拠情報 -管理費、修繕積立金の収支情報、滞納情報 -設備点検実施状況 -長期修繕計画、修繕履歴の保管状況 -旧耐震マンションの場合は診断状況 -緊急時の対応、消防訓練の実施状況、防災対策 |
3.配管管理状態 | -配管管理状態 -共用部、専有部の配管の更生、更新状況 -外壁塗装工事 -屋上防水工事 -ベランダ防水工事 -過去2年の漏水事故 |
これらの項目は、マンションのソフト・ハードの管理状態を問う内容が多いです。とくに配管管理状態については、共用部、専有部に材質、漏水事故履歴、更生、更新の時期など詳細な質問があります。このことからも共用部・専有部の配管更新履歴が、マンションの価値を表しており、保険会社から見ても共用部の保険料に与える影響が大きいことを物語っています。
ここからは私の意見です。
この評価シート(仮)は、マンション管理組合が自主性を持った運営が出来ているか自立性を問う質問が必要だと感じました。
仮に管理状態が良いとしても、管理費・修繕積立金が高すぎるマンションは、中古市場で選ばれるでしょうか?管理費・修繕積立金も、管理組合の判断によって辞めるべきサービス、実施すべき工事を厳選しているか、などの判断を管理組合が自ら行っているかなどを問う評価項目があるべきだと感じました。客観的な指標に加えるのは難しいですが、例えば、「500万円以上の工事を発注する際は、管理会社以外の会社から工事見積もりを取得して工事会社選定をしているか?」など、評価項目に加えるのはいかがしょうか?
さらに国交省が放置しているため今も当たり前になっている新築分譲マンションの修繕積立金の段階増額方式について、この評価シート(仮)でも設問になっていますが、積立金総額が、長期修繕計画の必要額を下回っている場合は評価ポイントとして大きく下げるべきでしょう。
国交省は、天下り先にデベロッパーや建設会社が含まれているため、新築販売が中古に対して不利なる段階増額方式を許容するに規制を加えることが出来ないのだと思われますが、規制してしまえば同じ土俵で戦うだけで影響は限定的でしょう。さらに言えば人口減少、空家率増加に合わせて新築物件そのものを規制されてしかるべきです。国交省が規制する方向に舵を切ることを期待しています。
要除却認定について
以下、2020年7月30日 第1回マンション管理の新制度の施行に関する検討会での資料3 マンション管理適正化法の改正概要の内容を中心にまとめています。
マンション建替円滑化法の改正に伴い、旧耐震マンションの耐震性不足のものに加えて、外壁の剥落の危険が生ずるおそれがあるマンションを除却と敷地売却を容易にする、団地型の大型マンションの場合であれば、一部街区のみの決議だけで除却と敷地売却できることに対応しています。総会において、4/5以上の議決権数と敷居は高いのですが、除却決議できる対象のマンションは広がっています。
ここからは私の意見です。
建替えは現実には難しいです。理由は多くのマンションが、建蔽率、容積率いっぱいに使用しているため、建替えで床面積を広げることが難しいことにあります。行政が規制を緩和するエリアも出てくるとは思いますが駅前など一部のエリアに留まります。都市計画法の用途地域の考え方でエリアを分けているので一律の緩和はあり得ません。そうなると多くのマンションが建て替えには組合員の持ち出しとなり、議決権数4/5以上の合意形成のハードルの高さもあり、話はまとまりません。現実には多くのマンションは、配管更新、大規模修繕、サッシ交換などを行って、80年、100年と延命を続けて、どこかのタイミングで除却・敷地売却の道を選ぶのが現実と予想します。
専有部配管についての21条コメントについての私の意見
公開されている標準管理規約改正案、第21条のコメントについては以下となっています。
「専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。」
専有部分の配管の取り換えを修繕積立金からの拠出することについて規約に明記することや、先行して工事を行った区分所有者への補償について記載がありますが、併せて修繕積立金で実施した以後の配管の漏水事故に対しての管理組合の責任範囲について検討すべきである、と意見しました。
第21条コメント私案 アンダーライン部が追加
「専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、修繕積立金で実施した工事についての管理組合の責任の明確化、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。」
皆さんでしたら、どのように考えますか?
まとめ
- 2017年8月以降のマンション標準管理規約が大幅に変更になります。2021年5月20日まで、国交省が意見公募をしています。
- 主な改正点は、新型コロナウイルス感染症対応のためのオンライン(WEB会議)総会・理事会に関する内容、専有部配管を修繕積立金を使用する場合の対応、管理計画認定制度と要除却認定の総会決議です。
- 管理計画認定制度については、評価シート(仮)がマンション管理業協会から公開されています。
- 専有部配管についての21条コメントについての私が出して意見を公開しました。
以上
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