
専有部の3つの管理人が設置された背景
これまで、マンションにおいては「専有部は個人のもの」という考え方が強すぎる傾向にありました。しかし近年、管理費等の滞納問題や、相続人・継承人の不在問題、ゴミ部屋問題、共用部排水管更新工事での専有部への立ち入りを拒否する、漏水事故での調査立ち入りを拒否するなど、管理組合の運営に支障をきたす深刻なトラブルが発生しています。
背景として、1980年代に大量供給されたマンションが築40年を迎え、当時30〜40代で購入した世代も70〜80代の高齢となっている“二つの老い”の問題があります。
建物の長寿命化により、マンションが居住者本人よりも長生きする時代に突入しました。さらに、外国人が都心部のマンションに住むケースや、外国人投資家による購入も増加しています。
このような状況下では、従来の性善説やマンション管理組合の善意の助け合いだけでは管理が回らなくなったため、国によって管理不全を防ぐ法的な手段が整備されました。 2026年4月施行の改正区分所有法は強制適用となるため、これら3つの管理人制度へのマンション管理規約への対応は必須となります。
2025年標準管理規約改正の影響~3つの専有部管理人~
3つの管理人の意味
区分所有法の改正に伴い、以下の「3つの専有部管理人」が新設されました。
- 国内管理人:国内に住所又は居所を有しない(または有しなくなる)区分所有者が選任して届け出る管理人です。
- 所有者不明専有部分管理人:区分所有者が不明、または所在が不明な専有部分について、理事会の決議を経て理事長が裁判所に選任を請求します。
- 管理不全専有部分管理人:管理不全により他人の権利を侵害する(または侵害される)場合、理事会の決議を経て理事長が裁判所に選任を請求します。
| 種類 | 必要なケースと選任・解任 | 想定される管理人 | 支払(報酬) | 保存行為 | 総会議決権 | 主たる仕事 |
| 国内管理人 | 国内に住所等を有しない場合。区分所有者が選任 | 不動産業者、区分所有者が依頼した人 | 区分所有者 | 可能 | あり | 区分所有者の債務(管理費等)の弁済※弁済義務は区分所有者 |
| 所有者不明専有部分管理人 | 区分所有者や所在が不明な場合。理事長が裁判所へ申請 | 弁護士、司法書士など | 裁判所が決定。 区分所有者負担(予納金は管理組合) | 可能 | あり | 専有部分と動産の管理・処分権 ※保存行為以上は裁判所の許可が必要 |
| 管理不全専有部分管理人 | 管理不全で他人の権利を侵害する場合。理事長が裁判所へ申請 | 弁護士など | 裁判所が決定。 区分所有者負担(予納金は管理組合) | 可能 | なし(区分所有者に議決権) | 専有部分と動産の管理・処分権 ※保存行為以上は区分所有者の同意が必要 |
実務と課題
国内管理人
国内管理人は、規約で設置を義務付けることが重要です。既存の「国内に住所又は居所を有せず、又は有しないこととなる場合」の居住者に対する国内管理人の義務付ける文言にすることで有効になります。標準管理規約のコメントに例があるので、選任を必須とすることをお勧めします。
外国人に限定している訳でなく、日本人でも長期海外出張する可能性のある場合にも適用することが大事です。実際に滞納が発生して初めて、長期海外出張であることが判明するケースもありますので、実態を把握する必要があります。
既存の居住者に義務付けるとともに、重要事項調査報告書にも記載してもらい、新規の区分所有者に対しても入口の段階から管理していくことが求められます。
所有者不明専有部分管理人
滞納管理費等を回収するためにマンションを売却できるなど有効な手段ですが、裁判所への申請手続き費用や、弁護士等が選任された場合の「予納金(数十万円〜100万円程度)」を一時的に管理組合が負担しなければならない問題があります。
滞納問題は、解決しないければその専有部からは、管理費等が回収できなくなるため、必ず対応しなければいけない問題となります。
これを防ぐためには、標準管理規約31条の2(組合員名簿等の作成、保管)に基づいて、組合員名簿を作成することが極めて重要であり、特に緊急連絡先に「親族(相続人)」を含めておくことが大事です。というのは相続発生時の連絡することが出来るため、滞納を未然に防ぐことが出来るからです。
また、身寄りのないお一人様で相続人がいない人については、生前に遺言書や専門家への死後事務委任を託せる状態にしてもらうアプローチが重要になります。
管理不全専有部分管理人
ゴミ屋敷のような部屋は、排水管清掃などの立ち入りによって状況が発覚することがあり、20〜30戸に1つは存在すると言われるどうしようもない問題です。しかし、過度な喫煙部屋による異臭、騒音問題を引き起こすケースや、ゴキブリの巣になるようなひどいゴミ部屋はめったにありません。
また、周囲の住民のとらえ方にも差があるため実際に、管理組合が予納金を払い、法的措置に踏み込む決断をするにいたるケースは、少ないと考えられます。万一使う場合は、対象の居住者との紛争状態になるため、裁判所からは弁護士が選任される可能性が高く、手続きの煩雑さや管理組合が負担する予納金の負担など使い勝手に課題が残ります。
まとめ
- 2026年4月施行の区分所有法改正により、「国内管理人」「所有者不明専有部分管理人」「管理不全専有部分管理人」の3つが新設されました。
- 2025年10月改正の標準管理規約にも追加されました。区分所有法の強制適用される部分であるため、全国の区分マンションの管理規約に適用すべき内容です。
- マンションの高経年化・居住者の高齢化、国際化などに伴う「管理不全」を防ぐための重要な法整備です。
- 「国内管理人」については、国内に住所又は居所を有しない(または有しなくなる)区分所有者が選任を必須とすることで、管理費滞納を防ぐある程度の効果はある。
- 「所有者不明専有部分管理人」「管理不全専有部分管理人」につては、裁判所への予納金負担や手続き面でのハードルといった実務上の課題も存在します。
- 管理組合としては、いざという時のために名簿(緊急連絡先、相続人であることが望ましい)の整備を進め、問題が深刻化する前に対応できる体制を作ることが極めて重要です。
以上
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