マンション長寿化等モデル事業補助金による配管更新について、動画の解説を補足する形で、説明します。
国交省に電話で確認したところ、以下の通り令和6年度(2024年度)まで継続の予定でスタートしたようです。あくまでも国会次第ではあることをご留意ください。
当事業は制度創設時に令和6年度まで実施することで予定しております。令和5年度予算の成立が前提ですが、本事業は来年度も実施予定です。 募集の締切日程等の最新の情報は、ホームページで今後公開しますので、確認をお願いします。
マンションストック長寿命化等モデル事業
目次
国交省のマンション長寿化等モデル事業の補助金とは
2020年から始まった国交省の補助金で、老朽化マンションの再生検討から長寿命化に資する改修や建替え等にあたって、国が事業の実施に要する費用の一部を補助することにより、優良事例・ノウハウを収集し、マンションの再生に向けた全国への普及展開を図ることを目的としています。
計画支援型と、工事支援型があります。
目的 | 補助金について | 対象 | |
計画支援型 | 長寿化して住み続けるか、建て替えするか、再生手法の比較検討など | 上限500万円 | マンション再生コンサルタント、設計事務所、管理会社 |
工事支援型 | 改修工事:老朽化マンションの長寿命化に向けて、先導性が高く創意工夫を含む改修や修繕 建替工事:区分所有者の合意形成の状況等によっては建替で再生を図ることが合理的であるケース | 工事費用のうち 最大1/3 | 施工業者、買取再販事業者、改修または建て替え事業に参画するもの |
補助金申請から獲得までの流れ
対象は、マンション管理組合ではありません。コンサルタントや工事会社になりますが、全額管理組合に還元するように契約することが求められています。
対象のコンサルタントや工事会社は、全額、発注者である管理組合に還元しますが、補助金があることで管理組合に提案しやすくなるし、実績がつくれるのがメリットです。国交省の採択プロジェクト一覧と総評に採択例が見られます。
採択されるためのポイントについて
以下の6つがポイントにあげられています。
•政策目的に適合
•独自性・創意工夫
•合理性
•合意形成上の工夫
•工程計画の工夫(←工事支援型のみ)
•将来の維持管理に向けた工夫
政策目的については、以下の6つがあげられており、ライフラインで、給排水設備についても上げらえています。
•構造躯体の長寿化
•ライフライン(給排水、電気、ガス)の長寿命化
•省エネルギー性能の向上
•高齢世帯や子育て世帯など多様な居住ニーズへの対応
•防災対策
•新たなニーズへの対応
•地域貢献機能の導入
給排水配管の更新で補助金採用されるためのポイント
2000年前後までのマンションで、給水管が給水用塩ビライニング鋼管、排水管が鋼管の立管、給湯管が銅管が使われており、マンションではこれらの配管更新は、長寿化のための第一歩になります。
なお、募集要項には、「住戸スラブ下の専有部分に配置されている住戸配管をスラブ上の専有部分に移設する改修工事」という文言が含まれています。2022年以降は、提案内容の評価ポイントとして、「共用部と専有部の一体的な修繕による老朽マンションの⾧寿命化(共用部の配管工事に併せて専有部の水廻り工事を実施することで、建物全体としての維持管理につながる取組み)」が追加されています。
住戸スラブ下配管とは、70年代、80年代前半に見られる配管の構造で下の階の天井上を配管が通っている構造です。上の階の横配管の修繕を、下の部屋に立ち入って天井を開口して修繕をすることになります。最高裁の判決でも共用部の配管とみなすとされており、専用でつかう配管を下の階に立ち入らないと更新できないことから、長寿命化するにはスラブ上に変えることがポイントになると国交省が考えている考えるべきでしょう。
この構造をスラブ上配管に変えることが補助金の対象となっています。
さらに、2022年からは、スラブ上配管だとしても、共用部と専有部の一体的な修繕による老朽マンションの⾧寿命化(共用部の配管工事に併せて専有部の水廻り工事を実施することで、建物全体としての維持管理につながる取組み)となっていますので、給水管と排水管の立管の更新に合わせて専有部の配管の一斉更新をすることも対象になりましたので、国交省も、専有部の配管の更新も、管理組合で一斉更新するころで、長寿命化する事例を作りたいと考えていると言えます。
共用部の配管工事に併せて専有部の水廻り工事を実施することを対象とした背景
2021年6月の標準管理規約の改正に以下のような記述が21条の国交省のコメント⑦に追加されました。
標準管理規約21条(敷地及び共用部分等の管理)
第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負 担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区 分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)の うち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責 任と負担においてこれを行わなければならない。 2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。
国交省のコメント <=2021年の6月の改定で追加された
⑦第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。「なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。」
※「」部分が2021年6月に追加された文言です
これまで、専有部の工事分は、各区分所有者が実費負担すべきとしていた部分に、修繕積立金を使用することを明記した文言が追加されました。コメント⑦から読み取れることは以下3点です。
- 専有部の配管更新に修繕積立金を使用することで、長期修繕計画が破綻しないように計画を見直す(必要なら修繕積立金を値上げする、大規模修繕工事を遅らせるなど)
- 管理規約の修繕積立金の使用用途に、専有部の配管更新費用にあてることを明記すること
- 先行して専有部の配管の更新をした区分所有者への補償が必要ならば検討すること
これらに加えて、もう1点、将来もめないために必要なことが以下と考えています。
- 管理組合が工事した専有部についての保証について管理組合が行うのか、区分所有者が行うのか明記すること
これらを細則などでまとめて総会で決議をすると良いでしょう。
コメント⑦に従うなら、管理規約の変更が必要なので、総会で3/4以上の賛成が必要になります。
専有部の立ち入りもあるため、全部屋から工事のための立ち入りや、工事日数、水が使えない日数などを明記して立ち入り許可をとる必要もあるでしょう
配管更新、補助金採択例と、評価のポイント
配管更新の補助金は、工事支援型が5件と多く狙いやすいといえます。採択例を見ると採択のポイントは、特別な工夫をしているというわけでもなく、合意形成ができていることや、長期修繕計画を見直したなども評価されているので、着実にすすめることがポイントと言えるでしょう。
配管更新、補助金で工事を確実に行うために
国交省の狙いが、実績をつくり、全国のマンションの長寿命化の先導例をつくりたいということであれば、工事費・工事工程などがシビアに精査されて、区分所有者の合意形成が進んでいることが重要といえます。
工事費の精度をあげるためには、工事範囲を検討する中で設計費をとって、工事見積の精度をあげることをお勧めします。
まとめ
- 国交省のマンション長寿化等モデル事業の補助金は、2020年から始まった国交省の補助金で、老朽化マンションの再生検討から長寿命化に資する改修や建替え等にあたって、国が事業の実施に要する費用の一部を補助することにより、優良事例・ノウハウを収集し、マンションの再生に向けた全国への普及展開を図ることを目的としています。計画支援型と工事支援型があります。
- 「住戸スラブ下の専有部分に配置されている住戸配管をスラブ上の専有部分に移設する改修工事」や、「共用部と専有部の一体的な修繕による老朽マンションの⾧寿命化(共用部の配管工事に併せて専有部の水廻り工事を実施することで、建物全体としての維持管理につながる取組み)」が、給排水配管更新で採択されるポイントになります。
- 補助金で工事を確実に行うためには、国交省が先導する実績を増やしたいという狙いであることであれば、確実に進めて工事支援型に申請するのが良いでしょう。
以上
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